Information
『そこに言葉も浮かんでいた』(新日本出版社)『アゲイン アゲイン』(あかね書房)『わくわくもりのはいくえん はる おともだちできるかな』『みちのく山のゆなな』(国土社)『ファミリーマップ』、エンタメシリーズ『家守神』1~5巻、『おはようの声』幼年童話『ヘビくんブランコくん』『オンチの葉っぱららららら♪』、短編集『友だちの木』・歴史物語『アテルイ 坂上田村麻呂と交えたエミシの勇士』他、好評発売中です。各種ご依頼は、左側のメッセージからお願いいたします。
秋田に何かいいところありますか? と訊かれると、私は「平野政吉美術館」を必ずあげます。
先日久しぶりに訪れました。
藤田嗣治の巨大な「秋田の行事」は、その大きさのため、持ち出しができず他では見ることができません。他にもかなりの枚数の嗣治の絵が所蔵展示されています。藤田嗣治美術館といっても過言ではないものを、そもそも建立の際に、その名称で嗣治と平野政吉氏との間に行き違いがあり、それまでの密接な親交がそこで途絶えてしまったとか。
東京でこれだけの作品を見るためには、チケット売り場で並び、ロープ越し、他人の肩越しにしか見られないのではないかと思うような絵画を10センチにまで近づいて見ることができます。しかも館内には他に数人しか人がいないというゆったりとした空間で。
「眠れる女」の裸婦の輪郭を描いた繊細な筆使いをじっくりと見てきました。下絵のための鉛筆デッサンの完成度の高さにも驚かされます。ピカソやマネ、モネに匹敵する日本人画家だと私は思っているのですが、フランスに帰化したということは、やはり日本人とは言えないのでしょうか。
作品を見る際に、画家がどんな人間かということも一つの要素だという見方もありますが、私はどちらかというと作品そのものが好きかどうかで、見ます。嗣治の場合、戦争を鼓舞するための絵を描いた、いわゆる戦争画家だったと戦後糾弾されたことが、生涯嗣治にはついてまわります。一度公開されたその「戦争画」を見ましたが、戦争の悲惨さが描かれているものの、鼓舞する作品とは思えませんでした。あの芸術的な作品が、ほとんど近代美術館の地下倉庫に眠っているというのは、残念です。
蓮の巻葉(秋田千秋公園前の堀)