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中学年から
仙台在住、椋鳩十賞作家佐々木ひとみさんの新作、仙台七夕をめぐる物語です。
東北三大祭りの仙台七夕を初めて見たのは、たぶん小学生のときだったと思います。正直言って、秋田の竿灯祭りや青森のねぶたのような動きがあるわけではない、商店街いっぱいにつり下げられた七夕飾りを「ふうん」と思いながら通り過ぎたように思います。いや、もちろん圧巻だし、きれいなのですよ。でも、お祭り=だしが出たり、お囃子が聞こえたりというイメージを持っていたからでしょう。
あのころの私に、この物語を読ませたい! 仙台七夕が仙台の人たちにとってどんなに大事なものなのか。そうです。そもそもお祭りというのは、そこに住んでいる人たちのものなのです。祖先を大事に思う気持ちや、現在住んでいる人たちの心のつながりを確かめるもの。観光客は、その姿を見せていただくのですね。
ふき流しの森を分け入って走る和也。震災後の七夕で、真っ白い吹き流しが飾られたシーンには、目頭が熱くなりました。さらさらという和紙のこすれる音が、心をかすめていきました。
まぼろしの七夕飾りにこめられたぴーちゃん(ひいおばあちゃん)の思いに、和也は見事に答えました。
ひとみさん、渾身の作です。平積みのこの本が、今年の七夕まつりを待ちかねていることでしょう。8月には、七夕飾りの真ん中に立って、七夕の月を見上げ、この物語の世界を思ってくれる子がいるのでは?
仙台の人たちの仙台への愛を感じる物語ですが、これが同時に、他の土地に住む人たちにも、郷土愛というものを思い出させてくれるのだとも感じました。