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『そこに言葉も浮かんでいた』(新日本出版社)『アゲイン アゲイン』(あかね書房)『わくわくもりのはいくえん はる おともだちできるかな』『みちのく山のゆなな』(国土社)『ファミリーマップ』、エンタメシリーズ『家守神』1~5巻、『おはようの声』幼年童話『ヘビくんブランコくん』『オンチの葉っぱららららら♪』、短編集『友だちの木』・歴史物語『アテルイ 坂上田村麻呂と交えたエミシの勇士』他、好評発売中です。各種ご依頼は、左側のメッセージからお願いいたします。
児童文学作家濱野京子さんのてがけた一般書です。濱野さんは『トーキョークロスロード』で坪田譲治賞を受賞してらっしゃいますが、この賞は児童書、一般書の両方から選ばれるというもの。つまり大人向け子ども向けという垣根を取り払ったものでした。その賞を受賞されているわけですから、『ことづて屋』も、主人公が大人というだけで、子どもでも本の好きな子だったら、充分に読むことのできる作品です。
山門津多恵は、死者の声を聞くことができ、それを伝えることを仕事としています。作品は短編連作という形をとり、残された人と逝ってしまった人とを結びつけます。声高らかには書かれてはいませんが、背景には3、11があり、私たちはやはりあの日を境に目には見えないけれど、変わったのだということを感じられる作品でもありました。
すらすらと一冊を読み通すことができます。というか本を置きたくなく、読み進めてしまう作品です。主人公と頼りない彼女をささえる恵介という男のキャラが際立ち魅力的に描かれていることも一因だと思います。
私にもいつか死は訪れます。また私のまわりの人たちにもいつか。それは前後がどうなるかはわからないけれど、どういう形かもわからないけれど、必ず。そしてその死に分断されたとき、残るものは、故人の所有物とそれぞれの思い。でも、そこに目に見えない力がこうして投入されたとき、そこにはまたそれぞれの物語が立ち上がるのという、ファンタジーの力を感じました。
この作品から、濱野京子という作家の描く世界が広がりを見せるのでは? という予感もします。