fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

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『サイコーの通知表』工藤純子(講談社)

2021年03月04日 | 本の紹介
           

 四年生の朝陽(あさひ)は、通知表が全部、三段階の「できる」だ。「よくできる」も「もうすこし」もない。真ん中の「できる」の列に、ずらっと丸が並んでいる。
 同級生の大河には、「なんだ、つまんねえ」「ふつうじゃん」と言われる。
 大河は、体育だけが「よくできる」で、あとは「できる」と「もうすこし」ばかり。「もうすこし」が増えたせいで、クリスマスプレゼントのランクを落とされ、お年玉の金額も減らされたという。
 三学期の始業式、そんな通知表をもどすときに、担任のハシケン先生が、朝陽のためいきに気づく。
 そこから、通知表談義(?)が始まる。ハシケン先生は、「あせることない。一人一人個性があるように、早く能力を発揮する子もいれば、遅い子もいる。だから通知表なんて、気にしなくていい」なんて言うけれど、そうはいかない。
 優等生の叶希(とき)ちゃんも加わって、その後「先生の通知表をつけよう」という展開になる。

 さて、どうなるかは、読んでいただきたい。
 私が小学生のとき、通知表は5段階だったからねえ。1、2、3、4,5。で、どうだったかって・・。実はよく覚えていない。1や2はさすがになかったと思うし、家で勉強するようになって、成績があがったのは、5か6年のころだったから、そのころは、5もあったかな。じゃあ、その前は3とかだったかな。そーっと開いていたっていう記憶はあるけど・・。
 娘や息子のときは、どうだったかな。もう、「できる」とか「できない」とか、そんなだったかな。これすらよく覚えていない。
 そう思うと、あまり意味がないってこと?
 じゃあ、通知表はいらないかっていうと、そういうことでもない。

 ハシケン先生は、正直に自分の弱みを子どもに見せて、とてもいい。じゃあ、先生が全部「よくできる」かといえば、そうでもない。そこが、大事なんだと思う。というか、朝陽達が、評価されたことを、そのままにするだけじゃなく「考えた」ってことが大事(という物語にしている工藤さんがすごいってことなんだけど笑)。
 一人の先生が30人以上の子の、いろいろな才能に評価をするって、難しいことだ。
 何十年か後、通知表はどうなっているだろう。

 工藤さんは、こうして学校の中の現実の問題を子どもの気持ちで描いた作品を発表している。かと思うと『リトル☆バレリーナ』や『プティ・パティエール』シリーズ他、きらきら系も、たくさん書いてる人気作家だ。すごいと思う。プロ! なんだな。


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