うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

黒い女と白い男の、悪い癖

2017年03月01日 | おたまの事

私は、いつから、

こんな悪い女になってしまったのだろう。

 

おはようございます。

ある日、私は、以前仕事がらみでお世話になった青年実業家に誘われた。

「友人が、洒落たワインバーをオープンさせてね。

お祝いがてら行きたいんだけど、一緒に行きませんか?」と。

あら、光栄です。喜んでお供いたします。

と、スマートに答えたはいいが、

私は、お洒落スポット恐怖症だ。

そのせいで、当日まで夜も眠れぬ程の緊張状態に陥った。

 

そして、ついに当日、私は閃いた。

とにかく、黒だ。

こういう時は、黒い服を着れば、それらしく見えるはずだ。

この閃きに基づき、

私は、通常より8割増しの化粧を施し、

黒のワンピースに黒のタイツ、靴もカバンも黒に統一し、

そして、さりげなく淡水パールのネックレスを身に付けた。

結果、首から上はおてもやん、

首から下は、お葬式の参列者とあいなった。

 

待ち合わせ場所に現れた青年実業家は、さすがにオシャレだ。

そして、参列するおてもやんに対する、社交辞令も忘れない。

「おかっぱちゃん、久しぶり。キマッてるじゃない。」

その社交辞令を、こわばった笑顔でやり過ごし、

ついに、恐ろしい程オシャレなワインバーへ足を踏み入れた。

 

バーカウンターの奥に立つは、イケメン店長だ。

私は、この時点で、一旦意識が飛んだ。

ちゃんと座って、笑顔は作っていても、意識は完全に飛んでいた。

隣に座る青年実業家は、

「あの頃は、駆け出しでさ。おかっぱちゃんにも〇※△◎≠~」

と、なんか色々言っていたが、聞いちゃいない。

お洒落な店内、前にはイケメン。

この状況に息も絶え絶えな私は、俯いたままワインを飲み続けた。

 

かれこれ、3杯目だろうか。

ついに、恐れていた事が起こった。

(トイレ行きたいトイレ行きたいトイレ行きたいトイレ・・・)

実業家の話が途絶えた時、私は思い切って言った。

「あの、ちょっとお手洗いへ。」と。

しかし、この勇気ある一言が、

私の失態の始まりを知らせるゴングとなるのだった。

 

10分後、実業家は驚いた顔で、

「おかっぱちゃん?お手洗い、もう3回目だよね?大丈夫?」

ごめんなさい。

私はアルコールが入ると、お手洗いが近くなっちゃうの。

でもその分、すぐ出ちゃうから全然酔わないんですよ。うふふ。

 

また数分後、

「おかっぱちゃん?またなの?またお手洗いなの?」

そうれしゅ。トイレいってきまっしゅ!

 

これまた数分後、

「ねぇ、おかっぱちゃん、酔ってるよね?」

酔ってましぇ~ん。ヒヒヒ。

では、拙者、かわやへ参る!ヒヒヒ。

 

この辺りから、数分単位でトイレへ行く合間に、

話した内容は、実業家のサクセスストーリーではなく、

何事においても成功した試しのない私の、

無駄にポジティブな人生論にすり替わっていた。

 

語り出したら、エンジンが掛かるタチの私は、

ワイングラスをリコーダーに例えて、ピロピロしながら一気飲みだ。

語る→ピロピロ→トイレのスパイラルは、とめどない。

 

そうして、実業家からすれば、地獄の1時間が過ぎた頃、

私はついに、発する言葉がトイレコールのみとなった。

 

「便所行く」の数分後は、

「出る」の一言となり、

終いには、「トイレ、連れてけ」と命ずる始末となった。

 

イケメン店長と実業家は、何やら言い合いを始める。

店長「お水を飲ませた方が・・・」

実業家「いやダメだ。水飲んだら、また出ちゃうじゃん!」

店長「でもさ、この悪酔いは、どうすんだよ?」

実業家「タクシー呼んでくれ。早く早く~!」

 

言わずもがな、実業家の地獄は、

タクシーに乗り込んだ後も延々と続くのだった。

通常30分程度の道のりを、2時間かけて。

 

こんな、忘れたい記憶を、

今のお前を見ていたら、思い出しちまったのさ。

おい、おたま!

きくのために買った、マタタビ入りオモチャを、

ほんの数分、おたまにも嗅がせてやったら・・・

 

スンスンしているきくを見て

 

皆で仲良く見ていたのに、

 

おたま「うぇぇぇ~ヒヒヒ」

 

おたま「マタタビ、ピロピロしゃせろーい」

 

おたま「お~い、マタタビ持っれこーい」

 

おたま「がばちょ~ヒッヒッヒ」

 

おたま「おう、婆しゃん、いいケチュしれんなぁ、ヒヒヒ」

 

おたま「ウェッヘッヘッヘッヘ」

 

うんこ「あの酔っ払い、なんとかして!」

 

あの翌日、実業家からのメールには、

「おかっぱちゃん、昨日は大変だったね。あれから大丈夫でしたか?」

と書かれていた。

私は、

「ごめんなさい。全然、覚えていないんです。」

と、嘘をついた。