食べ物の恨みは怖いというが、
昔、私の姉が、
都会で買ってきたケーキを父さんに食べられて、
本気で泣いて怒り狂った事を思い出す。
おはようございます。
当時、姉はとっくに成人していた。
私も、小学生の頃、
ソフトボール部でキャッチャーを務めていたのだが、
そのチームの要とも言える、
もっとも冷静でいなければならない私が、
試合の前に、日陰に置いていたお弁当のおにぎりを無数の蟻にたかられて、
今世で、もっとも強い絶望と怒りを知った。
試合が始まっても、声も出さず、
憮然とした顔でキャッチャースボックスに座り続けた。
ピッチャーの送球が少しでも逸れれば、手を伸ばしてまで取らない。
構えたミットに来ない球は、一切取らない。
後ろへ見送った球は、ピッチャーが走って取りに行く始末だ。
一応、言っておくが、
おにぎりを蟻に食べられたのは、ピッチャーのせいではない。
バッターボックスに向かってくる相手チームの選手に対しても、
私は、キャッチャーマスク越しに鬼の形相で睨み続けた。
そして、聞こえるか聞こえないかの音量で、ずっと
「ちっ!やってられない」と呟き続けていた。
バッターといってもほんの12歳程度の子供だ。
後ろから感じるただならぬ圧に、身動きもできず、
バッタバッタと三振に討ち取られる。
あの時の私は、ジェイソンより怖かっただろう。
ここでも言っておくが、
おにぎりを蟻に奪われたのは、相手チームのせいではない。
守備につくチームメイトも、ピリピリだ。
少しでもエラーをすれば、「おいこらーーー」と巻き舌で罵られる。
先生にではない、私にだ。
その時でさえ、座ったままの私にだ。
誰しもお分かりだろうが、
おにぎりを蟻にやられたのは、誰のせいでもないのだ。
これを、俗にいう、八つ当たりというのだろう。
今思い返せば、あの試合、勝てたことが、せめてもの救いだったな。
そして、あんな傍若無人な私に、みんな、優しかったな。
今更だけど、ごめん。
うんこさん?
これ見て!
ドライフードに凄く大きい粒が混ざってたの。
食べてみるか?
うんこ「おにぎりみたいに大きいわね」
コロコロ
ちょいちょい
ちょちょちょちょい
コロコロ、コロコロコロ~
うんこさん?
どこに転がしてくの~?
うんこさ~~~ん?
これは、さりげなく蹴とばしながら、おたまに奪われまいとしている様だが、
結局大きすぎて、食べる事は叶わなかったようだ。
残念だったな。
うんこさん、大丈夫か?
うんこ「ここ、すっごい、抜け毛・・・」
あっ、ごめん。