うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

道の上は、怖い?

2021年06月27日 | 日記

二度あることは三度あると申しますが、

三度あることは、

大概、四度五度とある訳なんです。

 

おはようございます。

私は、昔から、道路であらゆる野生動物と遭遇する。

死にゆく野鳥を、偶然看取ったのは三度あった。

美しい姿をした生き物が、コンクリートの上で苦しむ様は、

表しようがないくらい、切ないものだ。

人間のくせに、人間社会を憎らしく思えるくらい、切ない。

しかし、鳥はそんな感情を持ち得てないだろうと思うと、

さらに、やるせない気持ちになり、私は泣くことを憚った。

 

しかし、これは泣けてきたって経験もある。

母さんを待ちわびる幼いイタチ兄弟に出くわした時は、

「こんな所に出て来ちゃだめだ。隠れていなくちゃ危ない」と思い、

幼いイタチ達を敢えて怖がらせるよう、鬼の形相で睨んでやった。

心は泣いていた。号泣だ。

4匹のおチビちゃん達の中で一番大きな子に、

うんと小さな子がおんぶしてもらっていろという、あり得ない設定だったんだ。

え?なに?やらせ?ってくらいの破壊力だ。

そんな神様の悪戯レベルの可愛らしいイタチ達が、何の恐れも知らない目で

私を見ているんだもの。おんぶで。

そんなイタチ達を、怖がらせる役目をするなんて、泣けてきた。

 

しかし、ザリガニに、道の真ん中で、威嚇された時は驚いた。

その気迫には、すっかり負けて、やっぱり泣けた。

「めちゃくちゃ、怒ってますやん?」

掴めない・・・

この、ややこしい形の野生動物を素手で掴めるスペックが、私にはない。

私にとって、毛が生えているかいないかが、触れ合えるかの境界線だ。

しかし、あの怒りを無視することは、できなかった。

車内の傘を持ちだして、そろ~っと、そろ~っと、脇の田んぼへ追いやった。

 

とはいえ、玄関前の道に倒れていたジョージは別だ。

あいつも毛が生えていなかったが、あいつとは触れ合った。

私は、死にかけていたあいつに、死に水を飲ませてやったんだ。

その死に水がキッカケとなって、皮肉にも元気を取り戻して去って行った。

それなのに、次の日もまた次の日も、玄関前で行き倒れていたんだ。

「ジョージ?今日もかい?」

意味が分からないまま、私は毎日ジョージに水を飲ませた。

だったら、餌もやりたいと願った日、ジョージは息絶えていた。

一週間の出来事だった。

ちなみに、ジョージとは、トカゲだ。

 

ジョージが触れるんなら、亀なんて余裕じゃん?っと思いきや、

道の真ん中で出くわす亀は、恐ろしかった。

過去四度、掴んで運んだ経験をもってしても、五度目も震えた。

 

あの日は、月のない夜だった。

真っ暗な道には、すれ違う車も全くない。

「まるで異次元に迷い込んだみたい」

私は静かすぎる夜に恐れを感じ、

家路を急ぐため、さらにアクセルを深く踏もうとした時、

慌てて、ブレーキを踏んだ。

 

ヘッドライトに浮かび上がったのは、仁王立ちの亀だった。

四本の足と首を、甲羅から限界まで伸ばし、

「やんのか?」という佇まいで、私の車に喧嘩を売っている。

「や・・・やってやろうじゃねーか!」

私は、鉄砲玉のように、反射的に、車から飛び出した。

「あんた、何してんの?轢かれちゃうよ!」と。

すると、亀は私に背を向け、道の真ん中をまっすぐ走り出した。

「おい、ちょっまてよ」

私は、木村拓哉状態になっていた。

そういう時、木村拓哉は追いかけないままCMに入るが、

私は追い掛けた。

 

道路脇へ逸れる気配を見せない爆走を、

放っておくわけにはいかない。

これで轢かれたら、私のせいになってしまう。

 

亀は走る。

私は追いかける。

 

「早い!」

亀がのろまだなんて、だれが決めた?

少なくとも、夜中のミシシッピアカミミガメは、覚醒している。

もはや、ゾーンに入っている。

とはいえ、私の股下は75センチだ。

正確に測れば、71センチかもしれないが、亀に追いつけないはずはなく、

私は亀を追い越し、立ちはだかった。

真正面から向き合うと、「デカい!」

真夜中の亀は、まるで怪獣みたいだ。

ド迫力だ。

 

しかし、私は売られた喧嘩を買った者として、

対決しなければならない。

「男には、そういう時が、ある。」

昔、飲み屋で酔っぱらって、他の客と喧嘩して帰ってきた父さんが、

よくそう言っていた。

喧嘩の原因は、いつも死ぬほど下らなかった。

カラオケの順番を飛ばされたとか、そういう理由で、

男達は殴り合う。そういう時が、あるんだ。

 

女にだって、ある。

それが、今だ!

私は、

「よし!よし!よし!」と肩を上げ下げしながら気合を入れた。

考えるな、何も考えるなっと自分に言い聞かせながら、

イキっている亀の両脇を掴んて一気に持ち上げた。

けれど、さすが野生だ。

亀は、まだ諦めずバタバタと暴れる。

 

私は、思わず悲鳴をあげたくなったが、もし悲鳴をあげたら、

きっと、掴んだ亀を放り出してしまう。

そう思いとどまった時、悲鳴の代わりに口から飛び出した言葉は、

「そいや、そいや」だった。

『前略、道の上より』(一世風靡セピア)

咲き誇る花は、散るからこそ美しいのです。

しかし、散ってたまるか、田んぼまでは!

私は、そいやそいやと叫びながら田んぼまで、中腰で走った。

そこへ亀を置き、これで決着が付いたという訳だ。

 

「やれやれ」と上体を起こし、おてんとうさんではなく、

漆黒の空に浮かぶ星を仰いでみようとした時、

どこかから、

ピシャンっという窓の閉まる事が聞こえた。

 

「誰かに、見られていた・・・」

 

道の真ん中に車を捨て置いて、俯いてブツブツ言ってる女が、

急にしゃがんで、そいやそいやと叫びながら、そのまま走る様子は、

さぞや、恐ろしい光景だっただろう。

ある夏に体験した怪談だ。

 

ごめんなさい、地域住民の皆様へ。

敬具。

 

我が家にも、ちょっと恐ろしい光景だ。

おじさんのまぐろ丼に向けられた、矢のように突き刺さる視線!

 

視線!

 

視線!

ちょっと、当たりそうやな・・・