はっと目覚めて時計を見たら、
時刻は午前3時だった。
おはようございます。
「はぁ、夢か。」
目覚めても、夢の記憶は鮮明だった。
仰向けのまま見ていた夢を回想して、私は思わず「ふっ」と吹き出した。
その瞬間、玄関でガチャっと音がした。
「えっ?なに?」
続いて、玄関のドアが開いた音がした。
「いやっいやだ!」
私はがばっと起き上がり玄関へ向かった。
すると、我が家のおじさんが
「ごめんなさいね~、起こしちゃって~」
と、呑気な風に言うものだから、私は思わずムカッとした。
恐怖に慄いた分、余計にムカッとしたのだ。
我が家のおじさんは、度々、深夜に自分の車へ何かを取りに行くことがある。
ようは、車に忘れ物をしているのだ。
それを深夜に思い出し、取りに行く。
明朝でもいいじゃないかと思うが、本人は気になって眠れなくなるのだろう。
しかし、私のほうこそ、眠れなくなった。
私が見ていた夢は、
実家に入り込んだ、マムシと戦う夢だった。
かなり、鮮明な夢だった。
決して、笑えるような夢じゃないはずだ。
共に戦う父さんは、カカトを3度咬まれ、私の右手もマムシの牙がかすめた。
「まずい、父さんが、咬まれた。救急車呼ばんと。」
と叫ぶ私に、父さんは
「いや、こんらもん(こんなもん)、らいじょうぶら(大丈夫や)。」
と、大丈夫だと言っている言葉が、全然大丈夫じゃない。
「おまえこそ、咬まれたらろ?」
父さんは、私の右手を気遣ったが、私も
「咬まれてらいし(咬まれてないし)。れんれんらいろーぶ(全然大丈夫)。」
と、父さんに負けず劣らず、ヤバイ状態だった。
それでも私は、プラスチックの棒で大きなマムシを連打に次ぐ連打だ。
こんなに連打します?ってくらいの連打だ。
マムシもたまらず、窓の隙間から外へ逃げた。
「母さん、今だ!窓を閉めてー!!」
私は母さんに向かって叫んだが、母さんの動きは遅い。
本人は急いで窓を閉めようとしているが、83歳の行動は遅い。
「母さん、遅い~!」
マムシは再び、窓の隙間から侵入しソファーの下に滑り込んだ。
私は相変わらず、当たり構わず棒で連打している。
まるで、バッティングセンターの壊れた投手ロボみたいに、ソファーを連打している。
すると、母さんがしゃがみ込んで、ソファーの下へ手を伸ばし、
「ほれ、これ。ほれほれ。」
とマムシの尻尾を掴み、引きずり出した。
そのマムシの頭を、私は相変わらず連打、連打、連打。
目覚めたのは、その時だった。
まるで、連打しながら目覚めたような感覚だった。
午前3時、私はすっかり眠れなくなり、整理してみた。
大きなマムシ。
カカトを3度咬まれた父。
壊れたロボットみたいな私。
平気な顔でマムシを鷲掴む母。
目覚めた瞬間、なぜか笑いがこみ上げた。
しかし、その直後、玄関の音に慄き、その張本人にムカついた。
こうなると、何が何だか分からなくなった。
結局、何が面白くて、何が怖くて、何がムカついたのか、
分からなくなったのだ。
まったく変な朝だった。
さて、我が家の白族は、無駄に美しく微睡んでいる。
のん太が、床で香箱座りしてると・・・
その横に、おたまがやって来た。
なんだか君達、無駄に絵になるな!
まるで、夢の中みたいに、無駄に美しい白族に割って入る、現実
おじさん「遊ぼうね~。」
おじさん「ほら、これ見て!ほらほら」
白族は、音も立てずに散っていった・・・
これは、何の時間だ?!