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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

ミュージカル「ヘアスプレー」

2007-07-26 04:32:21 | Musical
7月24日、Bunkamuraのオーチャードホールにて、ブロードウェイミュージカル、「ヘアスプレー」を観て参りました。


舞台は1962年のボルチモア。
ケネディ大統領暗殺前夜、公民権運動が盛り上がっていた時代、アメリカがイノセントだった最後の年、と言われています。
主人公のトレイシーはダンスに夢中の高校生。
ジャッキー・ケネディ顔負けの、ヘアスプレーで膨らませた最新のヘアスタイルがご自慢のCUTEな娘ですが、ちょっと、いや、かなり太め。
そんな彼女が視聴者参加の大人気ダンス番組「コ二ー・コリンズ・ショウ」のレギュラーの座を勝ち取り、イケメンのボーイフレンドをGETし、黒人の同級生とその仲間ともども、ダンスを通じて、差別のない社会を訴えます。



全編を通じて、明るいダンスナンバー、スピーディな舞台展開、サーキュラースカート、タンクドレスなどのカラフルな60’sファッション、黒人少年の母によるソウルフルな聴かせる歌などで飽きさせません。
さすが、2003年ト二ー賞8部門受賞作品。良く出来た作品です。
原作はジョン・ウォーターズ監督の1988年の同タイトルのカルト映画。
トレイシーの母親役エドナは、ウォーターズ監督作品では伝説のドラッグ・クィーン、ディバインの役どころ。
Musicalでトニー賞に輝いたのはハーヴェイ・ファイアスティン。
そして、この7月に全米で公開されたリメイクの映画版ではなんとジョン・トラボルタが演じているとか・・・。
今回来日公演ではジェリー・オーボイルが繊細に演じていますが、ちょっと見、ウディ・アレンの父親役が、何があっても妻を愛し、娘を信じ、常に母娘をハートでサポートしてる様がなんとも微笑ましい。
前向きでひたむきで明るくてHappy・・・そんなアメリカの良き時代への郷愁と、対立する人種間の問題があれから半世紀近くたとうとするのに、果たして解決したといえるのだろうか、などと、舞台のHappyEndingにちょっとほろ苦い感想を抱いたりして・・・。



出演俳優にBigNameはいませんが、踊り・歌ともにレベルが高く、ハラハラしたり退屈したりすることなく安心して舞台に身をゆだねることが出来るのは嬉しいこと。
2幕の始まりの直前に、観客に対する簡単なダンスレッスンが行われ、エンディングで振りが単純になってきたな~と思ったら、そこで合図。
観客は全員、StandUpで、舞台上のうねりに巻き込まれるように踊ることになります。



これからご覧になるかたはお覚悟を!
8月5日まで。チケットはまだあるみたいでした。


予告・・・です☆

2007-07-24 05:40:41 | 伝統芸能
先週19日の木曜日は国立劇場で歌舞伎鑑賞教室の「野崎村」、福助の初役、お光で観ました。
良かったですよ!
日曜日22日には歌舞伎座でNINAGAWA「十二夜」。
菊之助が絶品で、脇も芝居巧者揃い。おすすめです。
機会があるかたは是非お見逃しなきよう・・・。

レビューは近いうちにUP致します。
今夜はオーチャードでMusical「ヘアスプレー」です。


AustralianBallet「眠れる森の美女」③

2007-07-20 04:29:56 | BALLET
ウェルチ版「眠れる森の美女」第3幕。

あれから100年たちました。カラボスが勝ったので、世界は一年中冬のまま、です。

兄弟王子とそのおつきの一行が森で狩を楽しんでいます。
家来を先に行かせて休憩中の兄弟に、リラの精が、オーロラの幻影を見せると兄王子が恋に落ち、森の奥深く王女を救いに分け入ります。
察知して妨害に来たのは勿論カラボス。
兄フロリムント王子はカラボスの魅力に負けて眠らされてしまいますが弟フロレスタン王子の活躍で兄が目覚め、窓を割ると日の光が差し込み、カラボスは退散。

フロリムント王子がオーロラを見つけて口づけをすると春が訪れ、人々は目覚め、2人の愛と世界が調和を取り戻したことを寿ぐ大祝宴が開催される・・・。



この場面は、2幕の黒と金の宮廷に緑の蔦が這って、生命の息吹を感じさせ、宮廷人の衣装も赤と黄色を基調とした明るいものに変わり、華やかに生命の復活を告げる舞台となります。

ここで踊られるのは、フロレスタン弟王子が相手役を務める4元素の精の踊り、カナリヤと青い鳥のヴァリ。
ちょっと変わっているのが、2人のイワン、と名づけられた「くるみわり人形」に出てくる中国の踊りのような人形振り。ダニエル・ゴーディエロとツウ・チャオ・チョウが、身体能力の高さを見せてくれ、人形としてのパントマイムも完璧。
仲間の女の子人形のリーダー格に日本公演だからでしょう、日本人コールドダンサーの、小柄で愛らしい本坊怜子さんが抜擢されていましたが、人形らしさは今ひとつで残念。

大活躍はケヴィン・ジャクソンのフロレスタン王子。いたずら小僧のような顔にツンとした鼻がCuteで、4元素の精それぞれと組んでPDDを踊る様が元気いっぱいで祝祭感を盛り立てていました。

対する兄王子、マシュー・ローレンスは落ち着いて一つ一つの技を危なげなくキッチリ決めていくタイプ。主役が突出せず、カンパニー全体で楽しく明るく盛り立てていく舞台づくりがOZバレエの特色だとしたら、非常にこのカンパニーにアダプトした王子と言えましょう。
オーロラは・・・。
王子のキスで目覚めたら早速、女の子友達のところに駆け寄って目覚めを喜び合っていました。
変わりませんでした(笑)これもまたOZ流なのでしょう。



音楽も踊りも全てテンポが速め、それが決して悪いことではなく、ある種のリズム感があって爽快ですらあります。指揮はスタイリッシュな金髪ショートの痩身の女性指揮者二コレット・フレイヨン。

最後、通常ですと舞台中央にグラン・パ・ド・ドゥを終えた主役2人が決めポーズを取って王国の中心に収まったことを象徴的に表して幕、なのですが、この版では、登場人物が舞台下手手前から上手奥に向かって舞台奥に行進して消えていきます。
ラスト、リラとカラボスがその端と端で目を交わして一瞬対立の構図を取りますが、姉妹の対立の収束=物語の終わりを告げるように、カラボスも行列の最後に加わるように、その舞台を横切って姿を消します。
このとき舞台全体を覆うほどの長い長い、黒スパンコールのマントを引きずって去り行くカラボスが印象的・・・。ちなみにこのマントには400m、2kgのスパンコールが使われたとか・・・。

世界中の神話・伝説で見られる冬と春の対立を、美しい王女の誕生と死と再生の物語に託して物語ったウェルチ版が、2005年に惜しくも亡くなった稀有な舞台美術家クリスティアン・フレドリクソンと出会ったことで生まれた珍しい果実のような舞台でした。。。


Australian Ballet 「眠れる森の美女」②

2007-07-19 05:10:37 | BALLET
2幕目は、オーロラ姫の16歳の誕生日。

宮廷はまるで仏壇のような(?)黒と金の装飾。そこに、目にも彩なアジア~中東の極彩色、グリーン、紫、フューシャ、オレンジ、赤、ロイヤルブルーなどの衣装に、タイ舞踊風のヘッドドレス姿の宮廷人の群舞が重なると・・・いつまでも見ていたいような、豪華でエキゾチックなシーンです。
オーロラに求婚する4人の王子も深みのある金の重厚な衣装でちょっぴり踊りにくそう?
4人が順に空中で回転して着地でひざまずくポーズをとるシークエンスで、着地が乱れて大きくぐらついた(その後しばらく脚をかばって踊っている風で心配しましたが、程なく回復されていたようで安心しましたが)王子一名。


オーロラ役のルシンダ・ダンは小柄でちょっとオデコさん。美女かというと微妙ですが、かえって、細面の美人揃いのOZバレエの中にあって異質な感じが個性的で、その他に埋没しない個性となっています。
この日の王子、マシュー・ローレンスとこの人は、前回の世界バレフェスにも出演しており、その安定したテクニックを披露してくれていましたが、バレフェス時には強烈な個性と魅力を放つ世界のTOPにオーラの点で見劣りがしてしまっていたように思いました・・・。
ただ、こうして本拠地のバレエ団の掌中に収めたプロダクションで踊ると、とりわけ得意なバランスの危なげなさといい、はずむようなほど良いバネ感のある動きと言い、安心して見ていられる主役。

このオーロラ、通常ですと糸紡ぎの針で指を刺して倒れる・・・となっているのですが、ウェルチ版では、カラボスの差し出す黒薔薇の棘で気を失う、とされています。
その場面が・・・。
ローズアダージョでは普通に捧げられた花を一輪ずつ受け取った上に、様々な色の花束を持つ女性たちも登場。
その中に黒いスパンコールのチャドルのような全身を覆う衣装を身に付け、顔を隠したカラボスが。
珍しい黒い薔薇に興味を惹かれたオーロラがねだっても、カラボスは勿体ぶって渡しません。
無理やり花束を奪う(ひッ!)オーロラ、早速薔薇の棘が痛いっと顔をしかめるや即、カラボスの両頬をビンタ(キャァアア!!)
お姫様、ですよねぇ、いやしくも。無理やりおねだりしておいて、勝手に乱暴にさわって棘が刺さったからと言って女性の頬を張りますか、普通?
わたくしの驚きをよそに、フラフラと眩暈を起こして倒れ、荊の精が膝まづく人間ベッドに横たえられるオーロラ。頬を張られても静かにほくそ笑むカラボス、で幕。



もう一つ??っと思ったのは、オーロラの誕生日に招かれた4人の婚約者候補の王子がそろい踏みしたところを見たオーロラがキャとばかりに、4人の女友達のところに飛んでいってイヤーンどうしましょうvという感じで楽しげに語らうシーン。
通常は一人でオーラを発しながらその場に登場したオーロラは孤高。一人で煌き、人々を魅了する存在のはず、ですが、オージー感覚の王女はもっとフレンドリーでお友達を大切にするみたい(笑)
まぁ、16歳の幼い王女が、100年の眠りから覚めた後、女性として大きく成長を遂げて婚礼に臨む、という解釈もありますから、これはその布石と言うことで・・・。

創作段階から、ウェルチのもとで深く関わったオーロラ役の一人、レイチェル・ローリンズによると、”自分に自信を持った、勝気な16歳の女の子が眠りから覚めた後は、人生に対する自覚を持ったひとりの女性に成長”しているという設定なのだそう。



AustralianBallet 「眠れる森の美女」①

2007-07-17 04:39:44 | BALLET
16日月曜日。祝日午後3時開演。
スペクタクルな「白鳥の湖」に魅せられた今、期待を持ってイソイソと上野の文化会館へ。



今度の演目は「眠れる森の美女」スタントン・ウェルチ版です。バレエ団生え抜きで、ヒューストンバレエのための振付作品などでも評価されている振付家だとか。
白鳥、で王子を踊ったダミアンは弟。ご両親はともに60年代から70年代にかけてOZバレエで活躍した主役ペアだったというのですから、本当にオーストラリアン・バレエ一家、ですね!

美術は「白鳥」同様、クリスティアン・フレドリクソン・・・というところで高まる期待。
この、大カンパニーでなくては上演しえないスペクタクルな古典バレエの新版の為に「80メートルものインド・サリーのシルク、膨大なスワロフスキーのクリスタル、200以上のオーストリッチの羽、50以上のインド製の金のネックレス、壮大な氷の森林や黄金の宮殿など、総計300アイテム、重さ20トンを超える豪華絢爛な装置と衣裳が日本に上陸」というのですから・・・。
何やら、この衣装製作の為にインドとアメリカに専属バイヤーを派遣したとか。
さすが、大らかな南半球、やることが半端ではありません。

舞台にかかる紗幕はペルシャ絨毯に見られる「生命の木」のモチーフ?深い赤と青を基調にしたオリエンタルな柄で、とても趣味がいい。
あぁ、東バの公演でかかる、あのちょっとデッサンが狂った(?失礼!)天使のロココ泰西名画調の幕と交換して欲しい・・・などとうつらに思っているとその幕の向こう側がきれいに透けて、マイムによるオーロラの誕生シーンが展開。。。

この国で世界を動かしているのは、春の精リラと、対立する冬の精カラボスの美人姉妹。



リラは守護精、青い鳥とカナリアの精のカップルと、地・空気・水・火の4元素の精を伴って、オーロラのゆりかごの傍らに・・・。それぞれの精から踊りによって贈り物が捧げられる美しいシーン。
舞台はペーズリー柄の青と赤をベースにした美しいファブリックで彩られ、タイの民族舞踊手の被り物のようなシルエットのヘッドドレスと極淡いパステルカラーのパールの輝きを持つ全身ユニタードの上に腰周りだけを覆う薄物を身に着けた妖精たちは、小さな姿と言う設定で、ゆりかごが海賊船のように大きく表現されています。
自分の持つエネルギーを使い果たして贈り物を捧げた春の妖精たちを急襲するのが、虎視眈々と冬の勢力拡大を狙っていたカラボス率いる一団。歌舞伎調の赤と黒を強調した白塗りメイクの白とシルバーの衣装に身を包んだカラボスは美しい女性。2人の騎士と、ネズミ顔の白い獅子舞のような部下と銀の甲冑を身に着けた白ネズミたち・・・。うーんちょっとくるみ割り人形が入っています?
カラフルな春対白銀の冬、というヴィジュアルは悪の化身として黒でおどろおどろしく表されることの多いカラボス組よりも華麗で舞台効果バツグン!
妖精たちの衣装のせいか、白猫・ジンジャーキャットがまんまCATSの世界のような衣装・メークだからか、バレエというよりもブロードウェイミュージカルな趣もありますが、インドやタイなどのゴールドと深いスパイスカラーを上手に盛り込んだ仕様が国籍不明ながらも豪華で重厚でエキゾチックな魅惑的な世界を作り上げていることには間違いありません。

カラボスがオーロラの16歳での死とそれから永遠に続く冬を予言します。
自分の持つ力をオーロラへの誕生の贈り物として捧げきったばかりの、リラ側の妖精たちは消耗しており、対抗できません。
カラボスの思い通りに運命が決められたかと思われたその瞬間、リラが残された力を振り絞って、死の予言を王子のキスによって解かれるであろう100年の眠りに変えてしまいます。

写真はリラと、カナリヤの精、4元素の精。

通常版では結婚式のゲスト扱いの青い鳥とフロリナ王女がここでは春を告げる鳥のカップルとして、その役割を拡大、更に主要な役として位置づけられています。
この日のカナリアは、「白鳥の湖」で土曜のマチネーの主役を踊ったプリンシパル、マドレーヌ・イーストー。リラのダニエル・ロウも良かったですが、一際伸びやかなダンスで存在感がありました。
4元素の精は、通常、「元気の精」「勇気の精」「暢気の精」などとされる妖精の踊りの音楽で踊ったのですが、それぞれの衣装の色と薄物の後スカートにかすかに書かれたシンボリックな柄が抽象的であるせいか、踊りにさほど変化がないせいか、どの精が何を表しているか今ひとつ明確でなかったように思われたのが少し残念。



カラボスのオリヴィア・ベルは「白鳥の湖」では妖艶なロットバルト男爵夫人を踊った人。
ここでも、冬の象徴カラボスを、赤と黒の切れ長の目張りで艶やかに踊っています。
ちょっと面白かったのが、リラと、カラボスそれぞれに2人の騎士がついていて、2人がかりで様々なリフトを見せること。男性一人で女性一人を支えるときの体力的な限界を超えて様々なバリエが可能になると同時にシンメトリカルな舞台効果も期待できて、これは良かったと思います。
日本人シニア・アーティスト藤野暢央さんはカラボスの騎士の一人。ソリスト久保田美和子さんはリラ側の土の精で活躍されていました