新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカと関税とTPP

2013-10-04 10:11:14 | コラム
アメリカは大胆だ:

これは別途に何度か採り上げたことである。アメリカでは数年前に商務省が業界の申し出でを受けて中国、インドネシア、韓国等から輸入される印刷用紙に(国によって料率が異なるが)100%以上の関税をかけて締めだしている。また、ドイツと中国からの感熱紙(キャッシュレジスターから出てくるレシートの薄い紙)にも高率の関税で締め出しにかかっている。事態を現在形で書いているのは「かかる関税を全面的に撤廃した」とは寡聞にして未だ知らないからである。

私には、そういう保護主義の姿勢を明確に打ち出している国が、太平洋沿岸の国がTPPを組んで関税撤廃を大きな柱とした条約を結んだと知って、後から加盟して盟主然として我が国にも加盟を促すかの如き姿勢を示していたのが、何となく違和感を覚えさせてくれた。そこには余り同調者が出てこない私の長年の主張である「アメリカは基本的に輸出国ではなく、内需に依存して経済で、輸出は国内の価格よりも有利な場合に打って出ること」という考え方が基本であり、尚且つ「あの労働力の質では世界市場での競争能力には期待できない」という問題点があるのだ。

この辺りが私には「何故TPPなのか」と「何で関税撤廃を主張するのか」という矛盾を感じさせ、アメリカがTPPを推進する理由が理解できなかった根拠である。しかし、参加するの交渉がどうのと報じられている間に安倍政権に変わって以後は、事態が順調に進展し、報道では今や話し合いが煮詰まりつつあるかのような事態にまで至っている。

此処まで来て漸く鈍感な私にも見えてきたことは、アメリカが紙類で関税を賦課していた諸国はTPPの域外にあったという点である。中国などは彼らを閉め出すための策がTPPであるかの如き報道もあれば、韓国とはすでにFTAを結んだ間柄である。そして、交渉は「混合医療」だの「非関税障壁」と言ったような関税を離れた事柄に至っているようだ。「なるほど、これではアメリカは中国や韓国やドイツを締めだしていても何ら気にする事案と思っていないのだ」と理解できるようになった。

私の経験上は嘗て「我が国の市場で受け入れられ、信頼されるような品質を達成すれば、世界中何処の国に行っても通用する」と最大の得意先の常務さんに言われたことが、今でも当てはまると思っている。私は輸出入の取引では「関税があるとかないとか、非関税障壁があるとかということも重要だろうが、労力の質が高く製品の質が安定していて、製品が現場と需要家に受け入れられ、価格が安定し、得意先との信頼関係が確立されていれば、TPPとかFTAの問題ではない」と信じているのだ。