新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカの野球も面白い

2013-10-19 13:43:36 | コラム
上原は「要らんこと言うな」と怒鳴った:
昨18日の昼頃は午後2時半からの約束があったのを忘れたいほどMLBのリーグ優勝決定戦、ボストンレッドソックス対デトロイトタイガースの第5戦に見入っていた。先ず凄いなと感じた点はミシガン湖の南側にあるデトロイトでさぞかし寒いだろう10月半ばの夜に外で野球をやっているのに、半袖のユニフォームを着ている選手がいる一方で、満員の観衆もさして厚着とは見えないことだった。

この辺りが以前にも述べたが、アメリカ人と我々との暑さと寒さに対する感受性の違いとでも言いたい差があるのだ。何しろこれから本格的なシーズンになるフットボールのリーグ優勝決定戦辺りなになると、屡々0度以下という想像も出来ない条件の下で凍ったフィールドで選手は何事もないようにプレーするし、観客も全く寒さを厭う様子が見えないのだから、凄いという以外ない。時には雪が降っている中でも平然としてやっている。

さて、野球である。解説者の武田一浩が「アメリカの野球もここまで来れば面白い」といみじくも張本勲も真っ青とでも言いたいような批評をしたほど、微妙な駆け引きある緊張感溢れる試合だった。何度も言ってきたことが南米系のプレーヤーが増えて以来MLBの野球は粗雑になり身体能力ショー的な要素が濃厚になってしまった。だが、昨日(アメリカ時間は金曜日のはず)の試合ではレッドソックスの日本人2人を含めてけ比較的に南米系が少なかっただけに、それなりに内容が精密で良かったと思っている。

また、武田の選手、特に投手の心理面に触れる解説も良い方だし、レッドソックスのクローザーとして試合を締めた上原が終了後のNHKのインタビューに答えて、東京での解説のゲストで参加していたブルー・ジェイズ所属の川崎宗則の労いの言葉に対して「また要らんこと言ったん違うが。昨日もメール言うなと言うといやないか」といきなり言ってのけたのが大変興味深かった。実は、ネット上では川崎のコメントは意外に好評のようなので、当方も関心があった。

なるほど、実際にMLBでプレーして彼我の違いを痛いほど体験させられていなければとても言えるものではないとでも言いたいようなコメントが出たし、「なるほど、MLBではそういう考え方で野球をやっているのか」と解らせてくれたことを言っているのだ。しかし、その我々が聞いていて興味あるコメントが、実は上原なり田澤なりの手の内を暴露しているのでは言いたいほど微妙なことに触れている場合があった。だからこそ、上原が開口一番「要らんこと言うな」と厳しい表情で怒鳴ったのだと思う。

試合の結果は皆様ご承知のように上原が田澤がリリーフが不成功で2点を献上して1点差になった場面を切り抜けたのだが、上原はNHKのインタビューに「もう休ませて欲しい」と7試合だったかの連続出場の疲れを訴えて「今でも膝がガクガクしている」と緊張感を語っていた。それほどの緊張感がある試合運びでは両ティームとも思うようにチャンスを活かせず、解説者が振ってはいけないと指摘してあった球を振っては凡退を繰り返したのが、その「勝ちたい」との願いと狙いが空回りする様が画面を通じても良く解った。同時にそこにスリルがあったのだ。

あそこまで来ると、野球の上手い下手もさることながら基本的に体力と身体能力が何処まで鍛えられてあったかが勝敗を左右するだろうと思わせるほど、シーズン終了後も試合が続くのだ。その先にアメリカン・リーグの場合には優勝決定までもう2試合も残っている計算で、ワールド・シリーズに出ればそこでは最大7試合もあることになる。

上原が「休みたい」と言った気持ちは解るが、私があれを聞いて気になったのは「もしもあのまま何も考えずにただ単に『もう休ませて欲しい』という英語にした場合に、それが『監督さん、私を酷使しないで下さい』と願っている」となりかねないのだ。アメリカ人はそういうコメントの裏を見ずにそのまま取るので、監督批判になるかなと余計な心配をした次第。

事実、MLBには投手酷使率というのがあり、Darvishは2年連続でその第3位に入っているそうだ。上原は今年だけで70試合に出ているとか。だからこそ、体力勝負になると指摘したいのだ。会社で勤務でも同じことだが。

川崎は言っていた。「MLBは両リーグのティーム数が多く、地区間とりーぐ間の交流試合があるので、同じリーグでも相手のティームの同じ投手に1年に1~2度くらいしか当たる機会がなく、その癖とか持ち球などを覚えきれない。言うなれば初対面同様で苦労させられる。だからこそ、デトロイトとボストンでは近いのだが、日頃馴染みのない投手と打者の駆け引きと勝負を見る点に興味がある」と。中々新鮮なコメントだった。