新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

日米間の球種の見極め方の違い

2013-10-21 12:10:14 | コラム
上原浩治が活躍できる理由(わけ):

このところ、NHKのBSで日米の野球の解説を聞いているようになって、誰が信頼するに足るプロ野球のOBかが解るようになって来た。換言すれば、好みの解説者が出てきたということかも知れない。監督ないしは指導者として野球を見ているという点で確かなのが元日ハム監督だった梨田だと思う。次に信頼するに足るのが、元は日ハムの投手だった武田だ。

偶々3日連続で聞いたレッドソックス対タイガースの解説は、この武田に川崎宗則(トロント・ブルージェイズ所属)が加わっていた。私は野球選手としての川崎をそれほど評価していなかったし、MLBで内野手のポジションを確保するのは至難の業だと思っていた。野村克也もそんな風に見ていた。しかし、補助の解説者としては暴露的発言が多い点をマイナスしても、かなり聞かせどころが多く、面白いと思って聞いていた。

その川崎が(先だったと記憶するが)先ず「アメリカではピッチャーの球の出所(リリース・ポイントで良いと思うが)の見極めは、ワインドアップないしはモーションで球がグローブから離れた瞬間にせよと教えられた」と語った。更に「上原さんはその後のテークバックが短くて、アッと言う間に球が来てしまうので、バッターにはあの球速のストレート(誤ったカタカナ語で「ファストボール」である)でも150キロ以上に感じて振り遅れるか当て損なうのだ」と指摘した。

これには武田も同調して「確かにリリースポイントというか球離れの見極めをそう教えている。そこが問題で、上原は謂わばキャッチャーのような投げ方で腕を後ろに引く距離が極端に短くて、しかも上が下に下がらず、グローブから離れたと思った瞬間に来てしまうので、精々143キロ前後でも打つ方は150キロ以上に感じてしまって、タイミングが取れないのだろう」と補足した。

そう聞いてみていると、上原以外の投手は田澤も含めて一旦ボールを持った手が下まで下がってから、あらためて上から投げる形になっていることに気が付いた。こう書けばリリースまで如何にも長い時間がかかっている動作のようだが、恐らく1秒の何分の1かの違いだろうが、その違いが決して速くはない上原の直球を威力があるものにしているのだろう。

しかし、上原が川崎に「また要らんこと言うたやろ」と怒鳴ったのは、この暴露的解説の前日の発言を指しているので、このリリース・ポイントの日米間の見極め方の相違点は未だアメリカのメディアが採り上げる機会がなかったはずだろう。上原が気に入らなかったのは第4戦で何か川崎が触れた別は話題だだっただろうと思って聞いていた。言うなれば、「矢張りプロは見ているところが違う」なのだが、それは当たり前ではないか。

この手の解説はある程度以上野球を経験したか、沢山の試合を観戦してきたファンには興味があることかも知れない。だが、1970年代だったかに元早稲田大学・野球部の一軍に在籍されたY氏と共に、会社を抜け出して日本シリーズをテレビ観戦したことがあった。Y氏の言われることは謂わば全てそこまでの次元の野球を経験されていなければ到底出来る訳がない解説だった。「なるほど、彼らはそう考えて野球をやっているのか」と非常に勉強になった。

そこでY氏に「何故テレビにで来る解説は貴方のように本当のことを言わないで、おざなりで解りきったような表面的なことしか言わないのですか」と尋ねてみた。答えは「本当のことを言って、ファンの人たちが野球の裏表までを知ってしまったら、解説者が要らなくなってしまうではないか。だから、彼らは自分たちの職の確保のためにあの程度のことしか言えないし、また言わないものなの」だった。何かマスコミ全体に対する批判のようにも聞こえたのだが、如何。