新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

運を持ってるヤツを使う

2015-08-29 08:19:25 | コラム
勝負師は「運を持っているヤツを使う」と言う:

週刊文春の9月3日号で、大和ハウス工業会長・樋口武男氏の連載対談で、ラグビーの平尾誠二が私には大いに興味がある発言をしていたので、ご紹介しておきたい。ご存じでない方の為に触れておけば「平尾誠二とは同志社大出身のラグビーの名選手で、同志社の他にも全日本代表の監督を務めた大立て者」である。

その発言とは「如何なる選手(企業社会では「人材」とでもするか)を選んで使うべきか」という話題で、平尾は元の全日本サッカー代表監督・岡田武史の言葉を引用して、大事な試合のメンバーをどう決めるかについて、

>引用開始
「運を持っているヤツを使う」と言われました。サッカーは運良く一点を取れたら逃げ切れることもある。その「運」はグラウンドにたくさんあって、それを掴めるか掴めないかなんだ。では運を掴める選手を見極める秘訣は、と訊くと「ショートダッシュのインターバルトレーニングなどで、決められたラインまで全力で走りきるヤツは運を掴める。ラインの手前で手を抜くヤツは駄目。「最後の十センチまで拘るヤツが運を掴める選手だというのです」
<引用終わる

と言っていた。

私は岡田元監督のテレビでの対談を何度か見たので承知していたが、彼は体育会系にしては極めて落ち着いた理論家であるので、勝負師と言うよりもにこのような醒めたというか理屈と言いたいまでの思考力で選手選びをしていたと知らされたのが興味ある点だった。また「運」という表現にも興味を感じた。

話をフットボール界に変えて、ここでは愚息を育てて頂いた日本大学高校の監督を長年勤められた清水之男氏(故人)は私がこれまで接してきた多くの監督さんの中で最も「勝負師」の名に相応しい勝負カンと同時に、優れた理論の持ち主だった。即ち、ここぞという勝負の際に上記の「運」を持った選手を選ぶ独特の勝負カンを持っておられたということ。

清水氏の表現は「『星』を持っている子供を使うこと」だった。「星があるか否かは日頃の練習を見ていれば解ることで、大きな勝負である試合の場合などは敢えてその星を持つ子供を温存しておくことも辞さない」だった。同時に清水氏は「その試合の最も重大な勝負の分かれ目となる時を見極める目も必要である」とも言われていた。

身贔屓というか親BAKAを笑われるのを覚悟で言えば、日大高が東日本代表決定戦に進出できるかを決める慶応高校との試合でタッチダウン2本の差をつけられた劣勢で残り時間も僅かとなってところで、それまで使わずに置いておかれたランニングバックの愚息を起用され、しかも2本連続でパスのレシーバーに使うフォーメーションで見事に同点に持ち込み、抽選勝ちで出場権を獲得された。

監督は「あの場であのプレーが出来る星を持っている子なので、敢えてあそこまで使わないでいた。そして見事に読み通りの結果となった」と述懐されたが、恐らく相手側も「まさか」のプレーをされて慌てたのではないかと思わせられた見事な逆転だった。実は、観戦に来てくれていたW社本社からの駐在員は「今日はもう駄目だ」と帰り支度をしていたほど劣勢だった。

ここで言いたいことは「ティームは言うに及ばず、一国の指導者たる者は配下で誰が「運」乃至は「星」を持っているか、誰が最後まで気を抜かずに手を緩めないで任務を達成するかを、常日頃十分に見極めておく必要がある」なのである。岡田監督が指摘したような理論が入った見極め方もあるが、私は「カン」というか「閃き」の重要性も忘れてはならないと思っている。

その点から考えれば、安保法制案の審議における状態から見れば中谷防衛相には手は抜いていなくとも「星」が全く感じられず、国立競技場建設問題で不手際を繰り返す下村文科相とニコニコ顔の遠藤担当大臣には「星」は愚か「運」が無いとしか見えない迫力不足を感じざるを得ないのは残念だ。敢えて言うが安倍総理の任命責任があるだろう。いや、その他にも「星」がない長老がおられるのも好ましくない。

全く話の方向は変わるが、プロ野球で目下打ちまくっているスワローズの山田哲人が初めて出てきた時に、私の目には何となく「変わった星を持つ新人だな。もしかすると化けるかも?」と思わせられた何かがあった。だが、確信などなかった。しかし、短期間であそこまで伸びてしまった。マスコミは素質もあるか質の良い猛練習をしたと報じている。果たして今の若手議員に質の良い勉強をさせれば次代を担う星か運を背負った者がいるのだろうか。