新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

狩猟民族対農耕民族の野球

2015-11-16 07:46:54 | コラム
農耕民族が全勝で予選リーグを突破:

昨15日夜の対ヴェネゼラの予選リーグ最終戦も小久保監督が「止せば良いのに」と思わせてくれたNPB年目の松井投手を締めくくりに出した為に「手に握らないでも良かった冷や汗を握る」試合にしてしまったので、それなりに興奮させられそうな試合になってしまった。あの9回裏に2点を取ってひっくり返したのが実力なのだろうが、あのような形で実力を見せてくれる必要はなかったと思う。お陰様で11時近くまで起きている結果になったのは一寸迷惑だった。

今回のPremier 12だかを見ていると、出場しているのは圧倒的に北米から南米にかけての野球国にヨーロッパからもイタリヤやオランダも加わっていて、私には明らかに農耕民族対狩猟民族の争いのように思えてならなかった。即ち、アジアからは我が国、台湾、韓国なのだから。しかし、大谷翔平に捻られて負けた韓国の野球は明らかに狩猟民族的で、我が国のように細かい点を疎かにせず「打って一丸」方式ではなく、力任せで大雑把だと見えるアメリカ式だったのは興味深い現象だった。

狩猟民族的とは何を指すかと言えば、常々アメリカの野球、特にMLBを批判する時に言ってきたことで「ティーム一丸となって」となるのではなく、選手たちが皆「我が力量のほどを見よ」とばかりにその個性を活かす野球なのだ。打者は試合の局面の状況などとは余り関係を重視することなく「来た球を打って見せよう」か「この一球を打つ」と決めれば全力で振り回して勝負してくるのだ。我が国の野球の用語に言う「ティームバッティング」などはまるで眼中に無きが如き「個人の尊厳」を優先する野球だ。

投手だった同じことで、極端で解りやすい表現を用いれば「この我が最善の投球を打てるものなら打って見よ」という直球でも変化球でも常に全力で打者に勝負を挑んで行くのだ。これを打者から見れば「この投手と此処で勝負をする」ということになるだろう。これも極端な表現だが、予めスカウティングで得ていた情報を無視するわけではないだろうが、常に有利なカウントに追い込んで勝負を挑んでいく個人の力量を見せたがる方式だと私は考えている。

このような野球は、私の年来の主張である「論争と対立」を怖れず「これを言うことで失うものはない」との思考体系に発するもので、兎に角相手と一発勝負することが狙いであって、ティーム全体のことは二義的としか思えない。それが彼らの野球の特徴であると思っている。

一方の我が国の方式である農耕民族型は「ティームワーク」、「全員野球」、「一丸となって」の精神を貫いているから、打者が相手の投手との勝負を焦ることなく自分の狙い球が来るまでジッと待っている仕掛けである。故に一球目に「何故あれを打たないのか」と苛立たせるような投球が来ても「狙い球」でなければ見送って短兵急な勝負を避け、あわよくば四球とばかりに投手に際どい投球をファウルボールにして長期戦を挑んで行くことすらある。

投手も勝負を急がないと思って見てきた。それはNPBのような長期リーグ戦であれば相手打者の欠陥と長所を知り抜いているのが普通なので、「いざ、勝負」という自己最高の投球で挑んで行くのではなく、打者、就中外人選手が嫌うと言われている「相手打者の欠陥であるところ」に「これでもか」と投げ込んで打ち取っていくのだと思っている。しかも、我が国の投手は所謂「投げ込み」練習の成果で外国人にはない精密な制球力があるのだ。私はこの辺りにも農耕民族的な精神を見出すのだ。

昨15日までの結果では農耕民族野球が何とか追いすがる狩猟民族のアメリカ、メキシコ、ヴェネゼラ、ドミニカ、それに韓国を退けで全勝だったのは大変結構だった。だが、一言くさしておけば韓国は兎も角、我が国と当たってきたアメリカ大陸勢はほとんどがMinor leagueの選手たちで構成されており、到底世界最高水準にある選手たちの集団とは思えないものばかりだった。アメリカではWBCでもMLBの選手たちはボイコットしていたように、今回も元MLBか、そこまで上がった経験もある者たちばかりだった。

それはそれとして、小久保監督率いる我がNPB代表ティームは皆が一丸となって苦しい試合を勝ち抜き、3A級のマイナーリーグ勢何するものぞという立派な強さを見てくれた。即ち、我が国の野球は最早その連中を相手にするのではなく、それこそワールド・シリーズの勝者と日本シリーズの勝者と世界一を争う試合でもして決着を付けようという水準に限りなく近いのかとも思わせてくれている。

そこで、農耕民族代表が本日のプエルトリコとの準々決勝戦は絶対に勝ってくれないと、私のMLBの王者である狩猟民族代表との対決論がその根拠を失ってしまう。一所懸命にやってくれ、小久保君!