新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

11月2日 その2 マスコミが過剰に持て囃すと

2015-11-02 13:41:18 | コラム
スポーツ選手の場合に良い結果が出ない例が:

私は我が国の優れた選手たちが意識しようとすまいと、マスコミの寵児となり持て囃された場合にろくな結果が出ないと言い続けてきた。選手たちがそれと知って物理的にも精神的にも影響されるか否かまで調べたことなどないが、先週カナダで開催されたグランプリ(”grand prix”はフランス語で、英語ならば”the grand prize”だ)のフィギュアースケートで羽生結弦君が転んでばかりいて、1年休んでいた地元のPatrick Chan(陳偉群)に負けて2位に終わったのが悪い例だ。

私は何もそれがマスコミのせいだと言っているわけではないが、何となく持て囃される過ぎることは悪いお知らせの前兆であるとのジンクス(”jinx”)になるとしか思えないから言うのだ。 羽生君の場合は若くしてオリンピックチャンピオンになったことを当然のようにマスコミが褒め称え且つ持て囃した。私はマスコミの過剰な特集の仕方に不吉なものを感じていた。

彼自身も積極的により高い境地を追求して伴奏音楽に映画「陰陽師」の曲を使うこととし、野村萬斎に狂言の教えを乞うた辺りから目つきが尋常ではなくなり、私は「何かなければ良いが」とすら危惧していた。果たせるかな、あのショートプログラムの6位という不出来でフリーでの奮闘虚しく帰り新参の香港系のカナダ人に敗れ去ってしまった。

私には錦織圭にも同じような傾向が見えるのだ。確かに彼は努力を重ねて世界でもトップ10の上位を占めるところまでの実力者になってくれた。立派なものだが、一方では松岡修造を筆頭にマスコミが彼を褒め称え過ぎた。彼はそれにも負けずに(?)世界で好成績を維持してきたが、ここ二回ほど大きな大会で不成績が続いている。私はそこにも、何らの理論の裏付けもないが、マスコミの持ち上げ方過剰の影を見る気がしてならないのだ。

一寸古くなった例には女子のスキーのジャンプの分野での高梨沙羅が挙げられないか。彼女はW杯だかグランプリだったか定かに記憶していないが、当にマスコミ好みの「世界」の競技会で連戦連勝の輝かしき成績を残した。だが、勝って当然の如くに予想された冬季オリンピックでは不運も手伝ってかメダル圏内にも入れなかった。「矢張りそうなったか」と私は受け止めていた。

サッカーに目を転じてみよう。本田圭佑も香川真司もそれぞれセリエAとプレミアリーグにマスコミのファンファーレとともに登場した。そこにあったのは世界一流のプレーヤーになったかの如き褒めそやし方だった。香川についてはあのザケローニ監督だけが毅然として「マンチェスターユナイテッドに3年経っても在籍していられれば、その時にお目出度うと言おう」と冷めた見方をしていたのが忘れられない。香川はドイツに戻ったし、本田は毀誉褒貶相半ばしている成績ではないか。

新しいところでは先頃のラグビーのW杯で世界を瞠目させた輝かしき成績を残したラグビー代表と、ベスト15に選ばれる名誉を得た五郎丸歩君の今後が不安だ。特に五郎丸君の場合はあのフリーキックを蹴る前の、サッカー経験者の私には妙なお呪いにしか見えない、あの時間をかける動作が大変な人気となってマスコミの好餌になってしまった。敢えて「好餌」とした理由は言うまでもないだろうが「悪いお知らせの前兆」とならないこと祈っているからだ。

表現を変えれば「マスコミは自国の選手たちの輝かしき成績を称えて特集したい気持ちは解らないでもないが、ある程度の節度を持って過剰にならないように気配りをして貰いたい」と言っておきたいのだ。「もし、彼らが日本を代表する選手たちの一層の活躍と飛躍を望んでいるのだったら」なのだ。古き言い慣わしに「贔屓の引き倒し」がある。何卒、自国の選手たちを引き倒さないように万全の心遣いをして欲しいのだ。

中国の経済に何があったのか

2015-11-02 07:31:03 | コラム
世界最大のインターナショナルペーパーが中国の合弁事業から撤退

アメリカのインターナショナルペーパー(IP)は2005年辺りから「成長性が期待できないアメリカ市場での新規投資をせず、今後は成長が見込める海外に新工場を設けていく」という「経営体質転換」(=Transformation plan)と呼称した大方針転換を実施した。その一環として中国山東省に太陽紙業(現山東太陽ホールディングス)と白板紙の合弁事業を2006年から開始していた。その後事業を拡張して現在の年産能力は140万tonという大規模である。

白板紙とは食品・薬品・化粧品等用の紙器(綺麗な印刷が施され通常裏面が白色である)と牛乳やジュース等のパックに使用される厚紙のことと思って頂きたい。中国は簡単に言えばかかる分野では後進国だったので、IPならずともその巨大な人口を思う時に成長性を期待したのも何ら不思議ではないだろう。現に当初の年産能力はマシン1基で40万tonだったものが、私などが知らぬ間に4基で140万にまで拡張されていたのだった。

しかし、紙パルプ業界人ならずとも中国市場に進出して輝かしき実績を挙げていくことがどれほど難事業かは承知しているはずだ。私は中国とアメリカの力関係や「世界最大」との看板が何処まで効果を発揮するのか知らないが、秘かに「IPは危ない橋を渡り始めてしまったのではないか」と考えていたことすらあった。

そこに紙業タイムス社の週刊誌”FUTURE”第1799号に掲題の記事が出ていたのだった。撤退の具体的根拠は述べられていなかったが「2015年4~6月期にIPは太陽との合弁事業で2億2,200万ドルの売上高と△900万ドルの損失を計上。売上高は前年同期比で12%減少した。一方、アジア産業包装部門の売上高は同△3%の1億4,900万ドル、損益は△200万ドルの赤字となった」と記載されていた。IPにとっては撤退の十分の理由だろう。

IPの対処法としては「IPは10月8日、1億4,900万元または2,300万米ドルの現金をアイボリーボードの合弁事業株式55%と引き換えに受領した。次いで4億ドルの未払い金を貸借対照表から除却する。この取引は向こう6ヶ月間に完了の見込みだが、中国政府の承認を含めた合弁事業解消条件の合意が課題として残っている。」と記載されていた。私はこの最後の中国政府の承認云々が大きな案件になった例が多いと聞いているが。

私にはこれ以上のことを述べる知識も経験の持ち合わせはない。だが、世界最大の看板を以てしても中国から撤退というところまでに行った辺りに、中国に生産現場を移すこと如何に難事業かが明らかになっていると思うのだ。

IPはこれまでに南米やロシア等に進出して行き、アメリカ本土ではほとんど製紙事業を残さずに2005年以前に売上高も利益の維持してきた立派な会社だが、此処では撤退となった辺りの教訓を我が国に巣くう媚中派に聞かせてやりたくて、この話題を採り上げた次第だ。