7日(土)の昼12時30分からは、築地市場で開かれた『美味しい駿河湾in築地』というイベントに参加しました。
新聞記事等で紹介されたとおり、静岡県水産加工業協同組合連合会が、世界一のフィッシュマーケット築地市場に乗り込んで、駿河湾の海の幸を集中アピールするトークセッション&試食会。パネリストは、築地市場の仲卸代表5名と、静岡から水産加工業者代表4名に磯自慢酒造の寺岡洋司社長の総勢10名。参加者は築地市場関係者をはじめ首都圏の流通業者、飲食店関係、料理学校生徒、フードジャーナリスト等で100名定員の会場が倍近い人数でごったがえしました。
気がつくと、いつも静岡県地酒まつりin東京に来てくれるマスコミ関係の方など顔見知りもチラホラ。『吟醸王国しずおか』パイロット版東京試写にも来てくださった共同通信の二宮盛さん、dancyu編集部の里見美香さん、フードジャーナリストの山同敦子さんなど「磯自慢目当て に来ました~(笑)」と公言するお歴々に再会できて、心強かったです!
私ごときのブログのために、寺岡社長の両手の花になってくださった里見さん、山同さん、ありがとうございました~!!
トークセッションでは、大手量販店グループが市場を通さず漁港で船まるごと買い!を始めたことが話題になり、改めて魚市場のあり方、仲買人の役割などについて興味深い意見が交わされました。静岡の業者さんたちは「市場は情報の宝庫。いくらネットが発達したといっても、仲買人から直接聞く生きた情報が貴重なんです」と仲買人への支持を熱く訴えていました。トークの中には、素人には貴重な情報だ、と思えるネタもたくさんありました。
●しらすは太平洋側の暖流域21県で獲れるが、春ものでは静岡県産が品質日本一。これほど海岸線が長く、多くの一級河川が湾へ流れ込み、豊富な栄養(プランクトン)ももたらす海はない。
●しらすの品質をみるときは、見た目の白さ、大きさ(中くらいがベスト)のほか、くの字に曲がっているものほど鮮度がいい。
●釜揚げしらすは水分75%、塩分2~2.5%の状態。東京では水分65%、塩分3%ぐらいが好まれる。関西では水分40%ぐらいの常乾干タイプ(ちりめん)が好まれる。関東でちりめんといえば、水分30%ぐらいのかちかちタイプ(かちりぼし)が好まれる。
●関西、とくに京都で消費されるしめさばの8割は焼津産の塩サバ。とくに10~2月に焼津で揚がる塩サバは脂のノリがよく、ばってらにすると旨みが引き立つ。
●黒はんぺんは東京ではまだ通常の食材として認知イマイチだが、いわしやさばは最近特に人気が高まっているので、有望な加工食。
続いて第2部では静岡市出身のミシュラン三ツ星料理人の奥田透さんが、魚市場や仲買人の存在意義について、ヨーロッパ各国の魚市場を訪ね歩いた経験をふまえ、「築地が世界一のフィッシュマーケットだといえるのは、規模や取扱量もさることながら、仲買人の目利きのレベル、加工業者の処理技術、どれをとってもこれほど高いスキルを持った市場は世界にないから」とエールを送りました。
「まかないでいただくが、上質の干物は炭火でじっくり焼くと最高にうまい」「静岡出身の弟子には帰郷のたびに黒はんぺんを買ってこさせる」「懇意のお客さんに、忘年会で静岡おでんをお出しし、大喜びされた」などなど三ツ星店の裏ネタも披露してくれました。銀座の小十で静岡おでんを食べられるなんて、すんごい贅沢ですね!
最後にコーディネーターの濱永さんが、「農水省で現在、フードアクションジャパンと称して食糧自給率を40%から41%に上げようと呼びかけているが、1%上げるのは至難の業。東京ではシングル世帯の60%にまな板と包丁がない」「望みがあるとしたら水産加工品。コンビニの人気おにぎりランキングで上位3つ(おかか・塩しゃけ・明太子)を見ても、水産物への希望の兆しを感じる」とデータを示し、力強いメッセージで締めくくりました。
第3部はお待ちかねの試飲試食タイム。寺岡さんが紹介したJALファーストクラス搭載の磯自慢純米大吟醸50は、気がついたら空瓶ばかり。この日ばかりは静岡人たる自分が出しゃばって呑むわけにもいかず、試飲をあきらめ、試食コーナーを回遊し、静岡うなぎ漁業協同組合が出品した新商品・うなかまぼこや、焼津水産加工業協同組合のなまり節の味に舌鼓。
冬にさっぱり売れないうなぎを正月料理にしようと鰻屋さんのノウハウを生かして開発したといううなぎのかまぼこは、築地の仲買人からも「ヒットするかも」と太鼓判を押されていました。
静岡県地酒まつりin東京では、いつも寺岡さんの配慮で黒はんぺんがおつまみに出されますが、基本的に料理は会場の宴会料理を使わないと会場が借りられないため、キラ星のような静岡吟醸のつまみが、どこにでもある宴会バイキングで、しかもすぐになくなってお客さんからクレーム殺到。つまみ、もっとなんとかならんかな~と思っていました。
今回の水産加工品と磯自慢のコラボは、ともに消費人口が減っているといわれる魚と日本酒の魅力再発見に、ひとつの道筋をつけたのではないでしょうか。
帰り際、静岡県水産加工業協同組合のスタッフに「ぜひ一緒に大消費地での広報活動をやりませんか」と、酒造業者代表でもないのに生意気に声をかけてしまいました。さしあたり、今年のin東京に、静岡の水産加工業者さんも招待し、「俺らのつまみを出してやろうじゃないか」という気にさせてみたら、なんて思います。