昨日(24日)はJR静岡駅南口の東海軒会館で、静岡県商工会連合会しずおか・うまいもの創生事業「ふじやまさんちのいつかちゃん」の県内発表会が行われ、県内の百貨店やスーパーなどの流通業者やメディア関係者約100人に試食してもらいました。
会の段取りがイマイチで、主役である参加5店のちゃんとした紹介がされず、私もネーミングやリーフレットの説明をさせてもらえず、参加者から正面切って意見を聞くタイミングもなく、せっかくの発表会なのにこちらのコンセプトを十分に伝えられずじまい。
会の前に開いた委員会で、アドバイザーのショコラティエ土屋公二さんが、味や風味や色に関して「よくここまで」と及第点をつけ、「5店が足並みをそろえるのは同業者から見ても大変で、正直、完成できるかどうか懐疑的だったが、みなさんよくやりました」と慰労してくださったのはよかったのですが、肝心の発表会で、参加店の名前や産地を正確に言えないような関係者がお決まり挨拶をするだけで終わったのは、つくづく残念でした。
このブログでも再三お伝えしたとおり、地元産の生フルーツを加工するのは本当に大変だったと思いますが、そんな裏方の苦労も、出来上がってしまった商品評価には関係なく、参加者は感じたままにあれこれ意見を言います。
的を射たものもあれば、「甘いなぁ」「値段が高い」「わざわざ探してまで買わないよ」なんてキツイ声も。それが夕方のテレビ静岡のニュースにコメントとして出ちゃって、観た人には「甘すぎて高い」という印象しか残らない映像になっていました…。取材にきた記者も、もうちょっと配慮してくれてもいいのにね。
もちろん試作品の試食会ですから批判は真摯に受け止めますが、テイスティングに来たプロなら、どうしたらよくなるのか、もうちょっと建設的な意見を言ってくださいよ~と言いたくなります。…それもこれも、こちらのコンセプトをきちんと伝えられなかったからだと思います。
せめて、東京のグルメ&ダイニングスタイルショー最終日の終わり際に、いつかちゃん似の2歳の男の子がお母さんもびっくりするほど威勢よく美味しそうに食べてくれた話だけでもしたかったなぁ…。
このところ映画制作やこの創生事業など無から有を生み出すクリエイティブな仕事が増えたことで、お客さんに初めて“お試し”してもらうときの緊張感や期待感が手に取るようにわかるので、自分がテイスティングをしたりアンケートを求められる場にいたら、真摯にお返事するよう心がけています。欠点があったとしても「もっとこうしてくれたら自分はすぐに買います!」という言い方をするとかね。自分がそうしてほしいと思うことを、他者にするという当たり前のコミュニケーションマナーです。
フロアには、5店の代表的な銘菓の試食コーナーも設けられ、日本茶インストラクターの土屋裕子さんと吉積恵子さんがお茶の接待を担当してくれました。過去プログで紹介したツル屋製菓店のモザイクロール、扇子家のみそまんじゅうde秀クリーム、入河屋のみかん最中など、お気に入りのスイーツに久しぶりに再会し、参加者にも勧めたら、みなさん大喜び。この事業の真の目的は、参加5店の販路開拓支援なので、5店の新しいファンが増えるきっかけになったのなら、いつかちゃんの役目もひとつ果たせたわけです。
会が終わり、スタッフで残りものを試食していたら、料理研究家でもある吉積さんが「みなさん甘い甘いと言っていたようだけど、自然の甘みで口に優しい。いい原料を使っているって伝わってきますよ」と専門家らしい感想を声をよせてくれました。
「今日はゼリーが主役だから」と日本茶の一煎目と二煎目をブレンドさせて味をおとなしめに整えてくれた土屋さんも、「日本茶とフルーツゼリーって意外に合いますね。いつかちゃんのパッケージに日本茶のティーバッグを付けたら静岡らしさがふくらむかも」なんて斬新な提案をしてくれました。
・・・やっぱり、味にかかわる仕事をしているプロには、新しい視点に気づかせてくれるこういう声を期待しちゃうし、実際、ありがたいですよね。無から有を生み出す苦労を経験した人や、新しいことに挑戦する人ほど、同じような挑戦者への理解や共感があって、アドバイスにも厚みと温かみがあります。私はそれを、『吟醸王国しずおか』パイロット版試写の時につくづく実感しました。映像制作のプロでも、酒の専門家や愛好者でも、まっとうな仕事をしている人ほどアドバイスが的確で、こちらのやる気と負けん気を掘り起こしてくれます。
さまざまな意見や反応に一喜一憂した試食会でしたが、ショコラティエ土屋さんの総括コメントと、日本茶インストラクター土屋さんと吉積さんの茶のもてなしは、クリエーターの創作苦労に敬意を払った実にプロらしい態度で、5店の菓子職人さんたちの励みになったと思います。