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終わらざる夏(下)-浅田次郎

2018年02月02日 | 読書

評価2
日本がポツダム宣言を受諾した後の昭和20年8月18日未明、千島列島の先端の島・占守島に日ソ中立条約を一方的に破棄したソ連軍が攻め込んできた。これは連合国との間で正式な降伏文書の調印が行われる前に領土的野心から既成事実を作っておこうとしたとしか考えられない軍事行動である。最新の装備と2万3千の精鋭将兵で迎え撃った日本軍は優位に戦いを進めるも、敗戦国であるため勝利を上げることは許されず8月21日に降伏したのだった。
こうした中、主人公の片岡直哉、富永熊男を始めとする面々が戦闘の中で死んで行く。片岡たちの死はソ連兵の語りの中でたんたんと描かれているだけである。正直言って、片岡、鬼熊の言葉で人生の最期を語って欲しかった。ソ連兵を登場させる必要があったのだろうか?そして、巻末の片岡直哉訳なるヘンリー・ミラー「セクサス」は必要だったんだろうか?私はこの5頁は読み飛ばした。
私が知らなかった千島の終わらざる夏の出来事を知ったことは収穫だったが、作品としては尻切れトンボという感想。この史実を掘り下げるために池上司の「八月十五日の開戦」も読んでみたい。