昭和30年代の終わりころ、兄たちが自作したゲルマラジオで、はじめてNHKラジオの相撲放送を聞き、驚きと共に、興味津々となった。
その頃には、ご近所の裕福なお宅には、昔々の真空管ラジオがあったり、14型くらいの最新の白黒テレビも入っていたのだけれど、わが家の情報源は、役場と繋がっている有線放送(電話器)から流れる朝、昼、夕の一時の放送だけだった。
NHKラジオの毎朝5時からの『早起きどり』(現在の『マイ朝』の前身)、今も同名で続いている長寿番組『昼の憩い』などが有線放送から流れていたような記憶がある。
だから、ゲルマ受信機での無線、電波での放送聴取体験は、かなり衝撃的に少年だった頃の自分の心に刺さった。
そして、半生記以上もたって、老いぼれた今、また、今度は自作のゲルマラジオをつくり、それに助けられている。
かれこれ十年来、老いと共に、どうも、ぐっすり朝まで眠れない。
おしっこを漏らすほどではないのに、ほぼ2時間間隔で目が覚めてしまう。
草木も眠る丑三つ時に、ほぼ毎日1回。
ぞれから、また、また、ということもある。
日中に体を使った仕事なり、長い距離のウォーキングなりしたときは、そのまま、また眠りにつくこともあるけれど、そうでないことの方が多い。
今の日出が6時30分前後、これからもう一段遅くなるから、朝を迎えるまでの未明の暗闇で過ごす時間は長い。
毎日だと、これが案外辛い。
この季節でも、丑三つ時から布団から起き出して、本を読むとか、読経をし天下泰平を祈るとか、心静かに写経や写仏をするとか、暗闇の中早朝歩きをするとか、いろいろある。
でも、日出前のこの時間が一番冷えるときなわけで、起きだせば光熱費は跳ね上がるし、寒さの中で運動すれば、血管リスクの高い年齢。
心臓もバクバクだ。
物価高、収入固定生活の中で、どれもあまり現実的ではないと思うので、毎日、ラジオ深夜便のエンディングを聴くまでは、布団をかぶって耐えることにしている。
これが一番エコだし、リスクも少ない。(笑@貧乏性)
自作のゲルマラジオで、国内放送では、唯一鮮明に聞こえるのが、NHK R1 ラジオ。
ロングワイヤーのアンテナを張って使っているのだけれど、日中でも十分実用に耐える。(@昼寝)
眠れない夜は、無電源、ノイズなしのNHK R1 『ラジオ深夜便』一択だけれど、布団をかぶってイヤフォンで聴くラジオとしては、これが一番いい。音が柔らかい。
毎日、23時5分からスタートするこの番組には、本当に助けられてる。
少青年期の昭和の頃の深夜放送と違い、特に強い意思があって聞こうとしているわけじゃない。
聞かなくて済めば、眠れたということで、それはそれでむしろいい。
2回めの目覚めが、4時頃なら起き出さないまでも、覚醒。
『明日へのことば』などのコーナーは、耳をすまして聴いてしまう。
とても、有り難い&時空をさか戻れる&けっこうためになる話も多い。
1回起きで、4時過ぎまで眠れた日は、体調も、血圧も順調。
そうでないときは、丑三つ時からの長い暗闇。
この時間帯の深夜便は、ほぼクラシックや昭和のころの音楽の時間だけれど、アンカーの皆さんの個性あるトーク、心地よい声の音質は、風のささやきのよう。
心地よい。
風のささやきの中に、自分と同世代のアンカーのみなさん個々の人生が感じられる。
だから自然に受け入れられるんだろうと思う。
年をとるってことが、悪くないと感じさせてくれるアンカーのみなさんである。
そんな時間の中で、ラジオを聞き流しながらも、記憶のない部分もたくさんある。
うとうとと断続的に休めているのだろう。
だから、最近は、眠れない、辛いと悩まなくなってきた。
くよくよ悩むから、心が病んでますます辛くなる。
眠れなかったらどうしても眠ろうとしなくて、深夜便でも聞いて、起きていればいい。
連続して眠れなくても、昼寝でもなんでも、眠いときにちょっと眠ればいい。
そんな生活習慣が身について、体がラクになり、シルバーバイトも元気に続けられている。
毎日、徹夜で、番組を作ってくれているラジオスタッフさん、本当に有難う。
アンカーの皆さんが5時ちょっと前に語る、ラジオ深夜便のエンディング。
これが、いい。
お気に入りである。
毎日の活力になっている。
毎日欠かさず聴いているけれど、コンテンツを別にすれば、ここがこの深夜ラジオ放送の一番好きな、心に残る部分である。
聞けなかったときほど、体調良し。
聞けたら、聞けたで、これも良し。
けっこう、ためになる。
昭和の時代の『オールナイトニッポン!』などの深夜放送は一世風靡したけれど、平成、令和の『ラジオ深夜便』、これ、変わった深夜ラジオ放送である。
聞けなくっても、「ああ、良かった」って気持ちになれるのだから。
助けられている。
本当に有り難い。
字田舎は、この季節、外は真っ暗、虫もなかんし、車も走らん。
2時ごろに牛乳配達が来て、4時頃に新聞配達がくる。
それ以外、なんも音はしない。
近所の、じい、ばあが救急搬送されるピーポーは時々あるけれど。
そんな暗闇の中でゲルマラジオのイヤフォンから聴こえてくる深夜便の音は、社会と自分が繋がっている、唯一の音、声のような気もしてくる。
年取ったなァ。(笑)
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