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政治に揺れた9月

2010-10-01 23:36:13 | 編集手帳
  9月30日、読売新聞 編集手帳


  『源氏物語』で光源氏が言う。
  〈さかさまに行かぬ年月よ〉。
  時間は逆向きに流れてくれぬ、と。
  老いを語った言葉だが、過去に戻ることができないのは万物の宿命でもある。

  潮位が10メートル上がり、のちに10メートル下がれば海面の高さは元の通りだが、
  水が引いた陸地の光景は一変していることだろう。
  さかさまに行かぬ年月よ、である。

  省エネ家電などの部品に欠かせないレアアース(希土類)の対日輸出を停止していた中国が、
  規制の手綱を緩めたという。
  「尖閣」で悪化した日中関係の修復を模索している、との観測もある。

  仮にそうだとしても、日本の大使を休日の真夜中に呼び出したり、
  報復さながらに日本人の身柄を拘束したり、
  品のない振る舞いに、多くの日本人の中国を見る目が一変したあとである。
  「戦略的互恵関係」を無邪気に語れた過去に戻ることはできまい。
  この図体(ずうたい)の大きな傲(おご)れる隣人と、どう付き合っていくか。

  民主党の代表選挙、内閣改造、尖閣と、政治に揺れた9月もきょうで終わる。
  〈かんがふる一机(いっき)の光九月尽(くがつじん)森澄雄〉。
  菅首相にも秋の夜長、国の行く末をじっくり考えてもらおう。

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