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芯の強さを秘めた女優 池内淳子さん

2010-10-04 20:09:07 | 編集手帳
  10月1日 読売新聞編集手帳より抜粋




  橋田寿賀子さんが書いたテレビドラマの脚本に、妻が夫に残酷な言葉を吐く場面があった。
  「私には言えません」。
  妻役の池内淳子さんは、そのセリフを泣いて拒んだ。

  橋田さんがスタジオに駆けつけ、
  「池内淳子ではなく、役の人物が言っているのだから…」、
  そう説得したという。
  橋田さんがある座談会で披露したこぼれ話にある。(岩波書店『向田邦子シナリオ集あ・うん』所収)

   -略ー
  
  しばしば演じてきた、
  表面は穏やかで内側に芯の強さを秘めた母親役を瞼(まぶた)に浮かべるとき、
  いかにもその人らしい挿話に思われる。
  ドラマ『女と味噌汁』や舞台『三婆』などで親しまれた池内さんが76歳で亡くなった。
  
  電話を切ったあと、心配ごとが胸をよぎって、受話器を見つめる。
  そんな演技の似合う人だった。お会いしたことはないが、
  母親をもう一度、見送ったような気分のなかにいる。
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