10月1日 読売新聞編集手帳より抜粋
橋田寿賀子さんが書いたテレビドラマの脚本に、妻が夫に残酷な言葉を吐く場面があった。
「私には言えません」。
妻役の池内淳子さんは、そのセリフを泣いて拒んだ。
橋田さんがスタジオに駆けつけ、
「池内淳子ではなく、役の人物が言っているのだから…」、
そう説得したという。
橋田さんがある座談会で披露したこぼれ話にある。(岩波書店『向田邦子シナリオ集あ・うん』所収)
-略ー
しばしば演じてきた、
表面は穏やかで内側に芯の強さを秘めた母親役を瞼(まぶた)に浮かべるとき、
いかにもその人らしい挿話に思われる。
ドラマ『女と味噌汁』や舞台『三婆』などで親しまれた池内さんが76歳で亡くなった。
電話を切ったあと、心配ごとが胸をよぎって、受話器を見つめる。
そんな演技の似合う人だった。お会いしたことはないが、
母親をもう一度、見送ったような気分のなかにいる。
橋田寿賀子さんが書いたテレビドラマの脚本に、妻が夫に残酷な言葉を吐く場面があった。
「私には言えません」。
妻役の池内淳子さんは、そのセリフを泣いて拒んだ。
橋田さんがスタジオに駆けつけ、
「池内淳子ではなく、役の人物が言っているのだから…」、
そう説得したという。
橋田さんがある座談会で披露したこぼれ話にある。(岩波書店『向田邦子シナリオ集あ・うん』所収)
-略ー
しばしば演じてきた、
表面は穏やかで内側に芯の強さを秘めた母親役を瞼(まぶた)に浮かべるとき、
いかにもその人らしい挿話に思われる。
ドラマ『女と味噌汁』や舞台『三婆』などで親しまれた池内さんが76歳で亡くなった。
電話を切ったあと、心配ごとが胸をよぎって、受話器を見つめる。
そんな演技の似合う人だった。お会いしたことはないが、
母親をもう一度、見送ったような気分のなかにいる。