12月7日付 読売新聞編集手帳
愉快な辞書、『英和笑辞典』(研究社出版)【flattery】
(=お世辞)の項に以下の注釈が載っている。
〈香水同様、嗅ぐべく、飲むべからず〉
お世辞や社交辞令は真(ま)に受けたいのが人情で、
嗅ぐだけでは足りず、
ごくごく飲んでしまう人がいる。
みずからの幾つかの失言に部下の失言も重なって進退問題の渦中にある一川保夫防衛相も、
そうらしい。
記者会見で、
「(防衛相として)致命的なものはないと思う」
と語った。
民主党内から激励を受けた、
とも述べている。
「致命傷ではないから頑張って」ぐらいの社交辞令は言われたのだろう。
その香水を飲んで、どうします?
柔道では技あり2本で合わせ一本になる。
自身の口から発した「禍(わざわい)あり」だけですでに3本を数える人の、
その口から聞きたい言葉では、
少なくともない。
問責決議案がちらつくなかで、
一川氏には忍耐の日々がつづく。
【perseverance】(=忍耐)〈惚(ほ)れていないものに固執する能力〉。
“安全保障の素人”を自任する人がいまの仕事にどこまで惚れ込み、
熱情をもっているのか、
そこが知りたいところである。