12月16日付 読売新聞編集手帳
中国人と日本人が喧嘩(けんか)をした。
警官が来ると、
中国人が言った。
「喧嘩の発端は日本人が殴り返してきたことです」。
早坂隆さん『続・世界の日本人ジョーク集』(中公ラクレ)の一編である。
日本人に設定することもない。
どこの国の人が喧嘩の相手を務めても、
ジョークは成り立つだろう。
中国という国にはどうも、
自分のほうから最初に繰り出した一撃は棚に上げ、
被害者のふりをしたがるところがある。
韓国の排他的経済水域で違法に操業していた中国漁船の船長が
韓国の海洋警察官を殺傷した。
中国政府は謝罪もしていない。
「(中国漁民への)人道的な待遇を希望する」――
中国外務省の参事官が韓国政府に注文を付けた記者会見の言葉を聞いて、
中国漁船のほうが被害者かしら…と錯覚した人もいたはずである。
近所で悪さをした子供は、
親が頭を下げて回る姿を見て自分の行いを反省し、
素行を改める。
範を示すべき「親」たる政府がこのていたらくでは、
「子」たる漁民は武装をさらに調えて、
凶悪化するばかりだろう。
漁民が海賊兼業では文明国の名が泣く。
泣くのは勝手だが、
近所迷惑である。