12月10日 NHK海外ネットワーク
贅を尽くした中国料理の影でつきまとう食の安全への不安。
おいしそうな肉の色を出そうと禁止薬物を投与された豚肉。
農薬の使いすぎで膨張して破裂したスイカ。
中国では農作物を育てるのに大量の農薬が使われるのが一般的である。
スーパーには農薬を洗い落とせる台所洗剤が並ぶ。
中国では経済成長の一方で、
食の安全をおびやかすニュースが後を絶たない。
食の安全を自ら守ろうと市民が立ち上がり始めている。
中国では市販の野菜に不安を感じて家庭菜園をする人が増えている。
上海の高層マンションのベランダでは
主婦がピーマン、サラダ菜などの野菜が栽培している。
栽培方法にもこだわっていて自家製の肥料(米のとぎ汁や魚のアラ)を使っている。
ピーマンの炒め物や青菜のスープは新鮮で家族にも好評だ。
食の安全へのこだわりが高じて有機野菜の宅配サービスを始めた主婦もいる。
社長の女性は5年前に長女を妊娠したのをきっかけに有機野菜に興味を持つようになった。
実家に帰省するたびに近くの菜園に足を運んで直接野菜を買い込み、
上海の自宅に戻っていた。
その野菜を近所に配っているうちに口コミで評判が広がって行った。
今年3月、ともだちと4人で会社を設立。
扱う有機野菜の値段は通常の3倍ほどするが、
顧客は約100人にまで増えた。
有機野菜を購入している夫婦は、
1歳になる娘の食事は有機野菜を混ぜたおかゆ。
料理に使う水も浄水器でろ過したもの。
共働きの夫婦の月収は日本円で約72万円。
有機野菜が割高でもこどもには安全なものを食べさせたいというのが夫婦の考えである。
中国政府は有機野菜の定義について、
“農薬・化学肥料などを使わず育てたもの”と定めている。
政府が定めた認証マークがあるが早くもニセモノが出回っている。
政府の担当官が各地で立ち入り調査を続けても
取締りが後手に回っているのが実情。
国の認証マークも信用できない、
野菜の栽培現場を自らの目で確認したいという消費者も増えている。
農場見学するツアーには約80人の家族連れが参加した。
経済効率優先で見過ごされてきた食の安全。
生活に余裕が生まれた消費者の間で、
今、食の安全に対する意識が大きく変わろうとしている。
日本の食品は値段が高くても中国では非常に人気があり、
日本の農業にとって有望な市場だった。
しかし原発事故の後、
日本の食品を控える動きが続いているが、
農林水産省は上海で水産物の展示会、試食会で国を挙げて安全性のアピールをする。