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嘘鳴きを強要するむごい国

2011-12-23 11:16:38 | 編集手帳
  


  12月21日付 読売新聞編集手帳


  遠国の大名が帰郷することになり、
  愛人のもとに別れを告げにいく。
  女は涙を流して悲しむ…と見せてじつは嘘(うそ)泣きで、
  水をこっそり目につけている。

  太郎冠者(たろうかじゃ)が見破り、
  水を墨汁にすり替えたからさあ大変、
  女は顔を真っ黒にしながら泣きつづける…。
  狂言『墨塗(すみぬり)』である。

  芝居であれば愉快だが、
  笑うどころか命がけの演技に違いない。
  金正日総書記が死去した後の北朝鮮内部の様子が、
  少しずつ明らかになってきた。
  「泣くふりをしないと連行されるから、
   皆、泣いている」
  「国営テレビで悲しむ住民の大半は演技だ」。
  韓国の脱北者団体に、
  北朝鮮の住民が電話で伝えてきたという。
  飢えて、
  しいたげられて、
  胸をなで下ろす代わりに嘘泣きをして、
  気の毒な人々である。

  〈拉致の「拉」が
   怒り、
   哀(かな)しむ瞳の中で
   「泣」とかすんだ日を忘れない〉
   (橋本利光=中央経済社刊『日本一短い手紙・喜怒哀楽』より)。
  小泉訪朝で国家犯罪が白日のもとにさらされた「あの日」のことだろう。

  自分と家族の人生をめちゃくちゃにした張本人の死に、
  拉致被害者も嘘泣きを強要されているのか。
  むごい国である。
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