6月30日 NHK海外ネットワーク
世界有数の産油国イラン。
そのイランの核開発を阻止するためアメリカとEUがあいついで制裁を強化。
深まるイラン包囲網。
緊張が高まっている。
クリントン国務長官
「イランは認識するべきです。
我々を真剣だと。」
ハメネイ師
「誤った行動を起こせば何千倍もの報いを受けるだろう。」
アメリカの制裁法は
イラン中央銀行と取り引きのある各国の金融機関に対して
アメリカの金融機関との取り引きを制限
つまり市場から締め出そうというものである。
核開発の資金源を断つために
原油の決済を行なっているイランの中央銀行にターゲットをしぼった。
ただアメリカ自体はイランの原油を買っていないため
イランと取り引きをする外国が対象となった。
日本やヨーロッパの国々はイランからの輸入をすでに大幅に削減したとして
次の見直しまで半年間
制裁の適用除外となった。
EUは7月1日からイラン産原油をを全面的に禁止する。
EUはイランの原油輸出の2割近くを占めていたが
すでに多くの国がイランからの輸入を停止している。
イランへの依存度が高く最後まで抵抗していたギリシャも輸入停止へ踏み切る。
またEUは原油を運ぶタンカーへも保険の引き受けを禁止した。
このため韓国がイラン産原油の輸入を全面的に停止することになった。
IEA国際エネルギー機関によると
イランの原油の輸出は2011年末の時点より
40%も少ない1日当たり150万バレル前後に落ち込んでおり
今後さらに減少するものとみられる。
こうした制裁の強化にイランは強く反発している。
最高指導者のハメネイ師は
イスラム態勢と国民とを分断しようとしている
陰謀は失敗する
と強気の姿勢である。
長年にわたり欧米と対立を続けてきたイランは
肉や野菜など食料品の値段が高騰し市民の財布を直撃している。
政府が発表したインフレ率は20%。
しかし値上がりの激しさはそれをはるかに上回ると市民は感じている。
制裁は市民の健康にも影響を及ぼしている。
医薬品の急激な値上がりで
外国製の一部の薬の入手が困難になり
心臓病や高血圧の症状がある市民の命が脅かされる事態に陥っている。
「母の治療のために外国製の薬が必要なのですが
高くてもう買えません。」
欧米の文化に親近感を抱く首都テヘランの市民たちのあいだですら
制裁への反発が広がっている。
「核開発は平和目的なのに
アメリカが敵対的な行動をとるなら
我々も対抗せざるを得ない。」
今回貴重な収入源である原油を押さえ込まれただけにイランには痛手である。
ただアメリカはイラン原油の最大の輸入国の中国に対して
制裁の適用除外にすると発表した。
中国は制裁に反対していて
どこまで制裁の効果があがるのか
制裁が市民生活に打撃を与えるのではなく
本来の目的である核開発の阻止につながるのか検証が必要である。
ヨーロッパ経済の落ち込みで原油の需要が減っている。
イランの分を補うためにサウジアラビアが原油を増産している。
原油価格は下がっていて
ニューヨークの原油市場では
国際的な原油取り引きの指標であるWTIの先物価格が
今年3月に1バレル110ドルを超えていたが
今は1バレル80ドルを割り込んでいるが
今後の状況次第では原油価格は一気に上昇しかねない。
アメリカ議会やイスラエルはより厳しい制裁をのぞみ
これに対するイランは体制維持のためにも核開発を断念するとは思えない。
国民の不安の矛先を国外に向けさせるため
より強行な姿勢をとる可能性もある。
イランはホルムズ海峡の封鎖を警告してきたが
追い詰められて過激な行動に出るのではないかと警戒もある。
武力衝突を避けるためには双方の外交努力を最後まであきらめてはならない。