7月21日 NHK海外ネットワーク
ロンドン東部のメインスタジアムでは
開会式に出演する市民たちが連日 深夜まで練習を繰り返している。
開会式は天候に恵まれ晴れたほうがいいというのが一般的だが
雨がよく降ることで知られるイギリスでは
雨を想定した演出が用意されていて
仮に晴れた場合には人工的に雨を降らせることまで検討されている。
今回のオリンピックは
歴史の街ロンドンにたくさんの競技会場をぎゅっと集中させたコンパクトな大会。
上手く工夫している部分と
大都市の真ん中で開催する大会ならではの悩みがある。
イギリスが最もコンパクトなオリンピックと胸を張る今回のオリンのピック。
ロンドンのシンボルのひとつタワーブリッジから
半径10km圏内に全体の半数以上の会場を集めた。
特にメインスタジアムなどの主要会場は
オリンピックパークと呼ばれる一角に集中。
これまでにない“都市型オリンピック”のモデルを目指している。
競技会場はそれぞれユニークな工夫が施されている。
マラソンは観光名所のビッグベンやバッキンガム宮殿のすぐ脇の
商店街や狭い石畳の道をも駆け抜ける。
市街地の同じルートを3周するというオリンピック史上初めてのコースである。
観客はレースと観光名所を同時に楽しむことが出来る。
ロンドン市民の憩いの場 ハイドパークの池は
トライアスロンのスイムの会場になった。
選手が安心して泳げるようたまった藻やゴミは徹底的に取り除かれた。
騎兵隊の交代式が行なわれる広場の一角には
5,000tの砂が運び込まれてビーチバレーのコートに。
市街地に既にある施設を活用した。
しかし都市型オリンピックならではの課題もある。
ただでさえ混み合う都心部に
大会期間中は観光客や各国の選手団など600万人超の人たちが訪れる見込みで
交通機関は大混雑が予想されている。
市内の道路に設けられる選手や大会関係者専用のレーンの総延長は48km。
一般の車両ははじき出され
悪名高い渋滞はいっそうひどくなりそうである。
世界一古い歴史を持つ地下鉄も心配である。
新しい路線の開通や運転本数の増加など
輸送力の強化に8,000億円近い費用をかけている。
それでも混雑を避けるよう市民に協力を呼びかけている。
期間中はルート変更のご検討を
渋滞のない空中を移動してもらおうとケーブカーが登場した。
市内の中心を流れるテムズ川を飛び越えて
競技会場の間をわずか5分で結ぶ。
観光客や市民の強い見方になりそうなのが自転車。
駐輪場の工事を手がける企業は大忙しである。
競技会場の周辺を中心に400箇所
会わせて4,000台分の駐輪スペースを作った。
コンパクトな都市型オリンピックは
テロ対策でも独特の光景を生み出した。
テムズ川をさかのぼりロンドンの市街地に入ってきた軍艦には
市街地の警戒に当たるヘリコプターを搭載する。
地対空ミサイルは視界がよい場所を選んだ結果
集合住宅の屋上に配備した。
ロンドン市民の間からは第2次世界大戦以来のことだと驚きの声も上がった。
兵士も1万7,000人を投入し
テロを徹底的に押さえ込む姿勢である。
厳しい警戒態勢は市民生活に思わぬ影響をもたらしている。
オリンピックパークのすぐ近くで食品の運送会社は
会社の周囲にある主な道路が3週間にわたる大会期間中
通行禁止とされたのである。
しかも警備当局から知らされたのはつい先週のことだった。
会社に出入りするトラックは1日平均60台。
道路が使えなければ運送がストップする。
大会のために我慢を強いられている人は大変である。
ただロンドンでは7年前
オリンピック開催が決まった翌日に同時多発テロが発生し
50人以上が死亡した。
大会中のテロは絶対に防ぐ。
テムズ川の軍艦はイギリス政府の決意の表れでもある。
警備や交通の混雑がもたらす不自由さを出来るだけ小さくして
4年に1度の楽しんでもらおうと最後の詰めが行なわれている。
歴史ある町並みの中に上手くオリンピックをはめ込もうとするその試みを
期待を持って見つめたい。