7月7日 NHK海外ネットワーク
怪盗アルセーヌ・ルパン。
1905年にフランスで1作目が発表されシリーズは50作を超える。
作品は60カ国以上で翻訳されている。
発表から100年を記念して映画もつくられた。
映画「ルパン」
「厨房で密航者が働いている。
2人はジャガイモをむいている。」
「泥棒がいるの?
ワクワクするわ。
どんな泥棒?」
「宝石泥棒ですよ。」
「奪われないようにそばにいてね。」
「ご心配なく。
目を離しません。」
作者のモーリス・ルブランは
40歳のときに書き始めたルパンシリーズで一躍有名になった。
76歳でなくなるまで執筆を続けた。
そして去年
生涯最後に手がけた作品が見つかったのである。
その作品は「ルパン 最後の恋」。
フランスで今年5月に出版され
すでに発行部数は4万部に達している。
かつてルパンに熱中した人たちが再び本を手にしている、
「ルパン 最後の恋」の編集者
「ルパンはフランスのヒーローなんです。
未発表の作品を出版することが出来てうれしいです。」
モーリス・ルブランの孫のフロランスさん。
4歳のときにルブランはなくなったが父親から祖父の人柄をよく聞かされていた。
モーリス・ルブランの孫 フロランスさん
「祖父は紳士で見た目も洗練されていた。」
原稿の発見はまったくの偶然だった。
パリの自宅で両親の遺品を整理していたところ
父親の書類の中から原稿が見つかった。
「これが未発表の原稿。
タイトルはルブラン本人の直筆。
手書きの直しも入っている。」
ルブランは毎回
出版の直前まで推敲を重ね作品の完成度を高めていた。
登場人物を孫から子孫に代えるなどあちらこちらに手が加えられている。
「このあたりは余り手直しされていない。
晩年で思うように作業が進まなかったようです。」
ルブランの死後 70年間眠り続けてきたシリーズ最後の作品。
フロランスさんは出版を決断した。
「祖父の作品が完結しないのは残念なことだと思いました。
みんなに気に入ってもらえるとうれしいです。」
作品には
貴族や資産家から財宝を盗みだすこれまでの姿とはまったく別のルパン像が
描かれている。
舞台は1920年代のパリ郊外。
ルパンは先祖から受け継いだ1冊の本をめぐって
イギリスの諜報機関に命を狙われる。
教師になりすまし小さな町に身を隠す。
ルパンが底で目にしたのは貧困に苦しむ子どもたち。
ルパンは町で出会った男にある決意を話す。
ルパン「この街にガスを通し
電気を通し
公園を整備し
家を建ててみせる」
男「そんな金がどこにあるんだ。」
ルパン「これから盗んでくるのさ。」
「モーリス・ルブラン」の研究者
「金持ちばかりと接してきたルパンが今回は貧しい人たちのために
彼独特の方法でよいことをしようとする。
全く新しい世界が描かれていてとても興味深い。」
さらに作品にはパリ社交界きっての美女との恋も描かれている。
女性「私はあなたが好きなの。」
ルパン「もし私が普通の人間ではなかったらどうするんだい?」
女性「その運命をあなたとともに分かち合うわ。」
ルパン「君を犠牲には出来ない。」
最後の作品で新たな一面を見せた怪盗ルパン。
フランス エトルタのルブランの自宅は今はルパンの記念館に改装され
訪れるファンは後を絶たない。
新作の出版をきっかけに来場者が増えている。
ルブランは最後の作品にどんな思いをこめたのか。
遺品やルパンにまつわる品々を見ながら想像をめぐらせている。
「本の世界観を見ることが出来て楽しかった。」
「正体を隠して陰謀を見抜く姿は魅力的。」
作者の死後70年がたって見つかった「怪盗ルパン」の最後の作品。
新たなファンをとりこんで人気が再燃している。