8月30日 おはよう日本
独自のコーヒー文化をはぐくんできたトルコ最大の都市イスタンブール。
街のカフェはいつも人であふれている。
トルコでは飲み終わっらカップに残ったコーヒー豆を見て
想像力をかき立て
未来を占うという伝統的な風習もある。
「いいのが出た?」
「悪くないわ。
もうすぐ決断する時が来るわ。
人生の分かれ道みたい。」
しかしトルココーヒーを取り巻く状況は大きく変わりつつある。
街のいたる所に外資系の新しいカフェが次々とオープン。
今ではイスタンブールのカフェのかなりの部分を占めるようになった。
人気のメニューは欧米風のドリップコーヒーである。
また最近ではトルココーヒーを提供するカフェでも
手間を省き簡単にいれられる機械が普及。
昔ながらの手作りのトルココーヒーを出すカフェはほとんど無くなった。
(カフェの客)
「朝はカフェラテ
夜はアメリカンを飲むわ。
トルココーヒー以外の味も大好きよ。」
昔ながらの味を守っていこうと
トルコ政府はトルココーヒーをユネスコの無形文化遺産に申請。
2年前 トルココーヒーの技術や文化を次世代に引き継いできたことなどが評価され
認定された。
オフィス街の大通りから1本入った路地裏。
老舗のカフェで伝統の味を守り続けてきた職人がいる。
カフェ店主のジェミル・フィリクさんである。
ジェミルさんが職人になったのは15歳のとき。
貧しく職がなかった当時 兄がいたこの店で働くようになった。
その後 店を継ぎ
50年近くコーヒーを淹れ続けてきた。
こだわりはコーヒーの泡である。
専用のなべでじっくりと火にかけ沸騰する直前に火から離す。
表面の白っぽい泡をコーヒーに混ぜ込むようにそそぐ。
時間をかけて生まれたこのきめ細かな泡が味をまろやかにし
おいしさの決め手になると言う。
(カフェ店主 ジェミル・フィリクさん)
「手をかけなければおいしいコーヒーはできないよ。」
ジェミルさんは味を左右するコーヒー豆にもこだわっている。
世界的なコーヒー豆不足や通貨リラの値下がりの影響で
コーヒー豆の値段はこの4年で50%上昇。
そのため多くの店が安いコーヒー豆に切り替えてきた。
しかしジェミルさんは最高品質のブラジル産の豆を使い続けている。
(カフェ店主 ジェミル・フィリクさん)
「いろいろな豆が出回るようになったが
質の悪い豆を使っては店も長続きしない。
伝統の味を壊すことになってしまうよ。
豆こそが命なんだ。」
ジェミルさんのコーヒーを求めて
店には1日500人以上の客が訪れる。
(カフェの客)
「36年前からコーヒーはこの店と決めている。
まさに職人技が生み出す味だ。」
「ここに来ればゆったりとコーヒーを飲んで友達とおしゃべりができる。
特別な場所よ。」
息子のジュネイト・フィリクさん(35)。
は10年前から父の仕事を手伝っている。
店を継ごうとコーヒーの入れ方を学んでいるが
まだまだ父の味には及ばない。
長年人々から愛されてきたこの店のコーヒー。
ジュネイトさんは父の味を受け継ぐことに生きがいを感じていると言う。
(ジュネイト・フィリクさん)
「父に追いつくにはまだまだ時間が必要です。
この店で初めてトルココーヒーを知る人もいるので
もっと多くの人にこの文化を知ってもらいたい。」
(カフェ店主 ジェミル・フィリクさん)
「トルココーヒーは命の限り守っていきます。
次の世代もきっと頑張って守ってくれるでしょう。」
親子の思いが詰まった1杯のコーヒー。
今日も路地裏で人々の憩いの場を作り出している。