9月19日 おはよう日本
ヒョゴが学生街のライブハウスで活動を始めてからわずか1年。
デビュー曲の「ウィーンウィーン」が韓国のヒットチャートで2か月連続1位を記録。
一気にスターの座に登りつめた異色のグループである。
特徴は個性的な歌詞。
タイトルのウィーンウィーンとは小さな虫の羽音。
ウィーンウィーン 羽ばたくカゲロウも
哀れな僕をあざ笑うように 遠くへ飛び行く
ビーンビーン 回る世の中も
ぼくをあざ笑うように 揺れ動く
社会から孤立し希望を失った若者の心を歌っている。
ヒョゴのメンバーは全員が20代前半。
歌詞はボーカルのオ・ヒョクさんが書いている。
オさんは自らの経験から感じたことや悩みを率直に歌詞にしている。
(ヒョゴ ボーカル オ・ヒョクさん)
「私はとても内向的で人間関係がうまくいかなかった。
自分も苦しんでいる若い世代の1人なんです。」
ヒョゴの歌を毎日聴いていると言う大学4年生のユ・ジェホさん。
これまでのKpopとは違う魅力を感じている。
(ユ・ジェホさん)
「薄っぺらな恋愛物語ではなく
20代の悩みや就職活動中の大学生の気持ちを慰めてくれる歌詞で共感できるんです。」
ユさんたち韓国の学生はいま就職活動の真っただ中。
しかし韓国では経済の低迷で若年層の失業率が年々上昇し
今年は10%を超えた。
大手と中小との賃金格差も大きく学生たちは不安を抱えながら活動している。
(就職活動中の学生)
「全体的に採用数が減っているので
就職はますます厳しくなっています。」
「就職先が少ないので不安です。
夜も眠れません。」
母子家庭に育ち親に楽をさせてあげたいと猛勉強の末名門大学に入ったユさんも
いま再び競争の激しさに直面している。
そんなユさんの心の支えになっているのがヒョゴの歌。
隠れている僕を見つけても 見るな!
人々の視線を楽しんだりしないから
1人追いつけなくても 気にするな!
僕は静かに考えているだけだから
自分の姿と重なり
焦らなくていいんだという気持ちになれたと言う。
(ユ・ジェホさん)
「自分だけ就職が遅れたらどうしようという不安も大きいですが
ヒョゴの歌を聴くと力が出て頑張れる。」
いま韓国では5放(5つのことを諦める)という意味の言葉がよく語られている。
その5つとは 恋愛・結婚・出産・マイホーム・対人関係。
働いても十分な収入が得られない若者たちは将来への希望を持てないでいる。
(ヒョゴ ボーカル オ・ヒョクさん)
「私たちの歌は特別なものではありません。
少しでも力になれるなら私たちの歌を聴いて元気を出してほしい。」
ヒョゴの歌は若者が置かれている状況を幅広い世代に伝える役割も果たしている。
インターネットに投稿された「5放時代とヒョゴ」と題された文を書いたのは63歳の女性。
「最近ヒョゴというバンドが人気ですね
カゲロウにまで笑われ恋愛もできない人生だなんて
格差社会のいま
彼らの歌が私の心に突き刺さります」
このブログを書いたイ・スヒャンさん。
イさんには貿易会社で営業マンをしている34歳で独身の息子がいる。
その息子が「今の会社に居ても将来がない」と言い出し
先月 突然会社に辞表を提出した。
イさんは反対したが聞き入れてもらえなかった。
息子の気持ちを量りかねていた時ラジオからヒョゴの歌が聞こえてきた。
家で何もせずごろごろしている
自分の姿がとてもみじめで 本当にごめんな
息子の心を垣間見たようだった。
(イ・スヒャンさん)
「うちの子だけでなくほかの子たちも胸を痛めていると気づき
若者たちの心の中を理解したいと思いました。
彼らが息苦しさを感じるのは大人の責任かもしれません。」
若者の心の叫びを歌い韓国社会の今を打ち仕出すヒョゴ。
世代を超えて多くの人が自らを見つめなおすきっかけとなっている。