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音で脅かすぐらいで、 矛を収めて

2015-09-13 07:15:00 | 編集手帳

9月10日 編集手帳

 

 河竹黙阿弥が書いた芝居『村井長庵』に、
登場人物がカミナリ談議を交 わす場面がある。
「雨が降らねえのに光るのは豊年のしるしだ」
「稲光がござりますと、よう実が入ると申します」

冒険の旅に出た少年たちを一瞬、
稲光が照 らす。
主人公がつぶやいた。
〈神がわたしの写真をお撮りになった…〉と。
こちらはスティーヴン・キング『スタンド・バイ・ミー』(山田順子訳、新潮文庫) の一節である。

豊年満作の前触れであれ、
神様の“激写”であれ、
洋の東西を問わず、
そばに落ちない限りは好意をもって迎えられるのが雷というものであるら しい。

このところ、
列島の広い地域で大気の不安定な状態がつづく。
人いちばい苦手な身はきのうも午後、
埼玉県内で高校生のそばに雷が落ちたと聞いて心配し た。
好意を寄せかねる稲妻に、
台風が抜けても油断がならない。

雅号「変哲」、
小沢昭一さんに雷の句があった。
〈稲妻よ百鬼夜行の世を叱れ〉。
凶悪な殺人者 がいるわ、
無分別の愚か者がいるわ、
稲妻だって地上を叱りたいときもあるだろう。
遠くから音で脅かすぐらいで、
矛を収めてほしいものである。

 

 

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