9月7日 おはよう日本
福島県郡山市にある東邦銀行で働く鈴木常子さん(60)は職場に欠かせないベテラン。
住宅の資金援助を担当している。
今年 鈴木さんは新たな会社の休暇制度を利用し9日間の休みを取った。
休暇を過ごしたのは長女夫婦が暮らす家。
孫の面倒を見るための休暇
孫の育休 イク孫休暇を取得した。
娘の宏美さんは今年5月に3人目の子どもを出産。
生まれたばかりの赤ちゃんとともに4歳と2歳の子どもの世話をしなければならない。
なんとか娘の助けになりたいと鈴木さんはイク孫休暇をとった。
食事の用意や幼稚園の送り迎えなど3人の孫と過ごすうれしい時間である。
(鈴木常子さん)
「楽しいですよ。
自分の時間は取られますけどそれに代えられないものがある。
子どもは。」
イク孫休暇の導入のきっかけは働く世代の大きな変化である。
この銀行では2年前から70歳まで雇用期間を延長。
60歳以上の働き手は3倍近くに増え
震災で増えた業務や人材育成に活躍している。
しかし孫が気になる世代。
「孫と過ごす時間をもっと持ちたい」
「休めないなら会社を辞める」という切実な声が寄せられるようになった。
(東邦銀行 職員活躍推進室長 戸田満紀子さん)
「『お母さん手伝いに来てよ』と言われて
1か月はなかなか銀行員で長期休暇をとる機会がないので
かなり悩まれて辞職されてしまったら銀行としても大きな損失なので。」
そこでイク孫休暇。
思う存分孫と過ごし仕事に精を出してほしい。
これまで鈴木さんを含む4人がこの休暇を取得している。
(東邦銀行 職員活躍推進室長 戸田満紀子さん)
「スムーズに休めるような体制をきちんと職場の体制として作る。
組織として作っていけばもっともっと休める人が増えていくと思う。
制度を使ったらますます生き生きと働いてくださいね
というのがこちらの思い。」
社員の家族の思いに耳を傾けることで手当てや休暇を大きく見直した会社もある。
従業員1000人余のインターネット広告会社。
この日 オフィスで行われていたのは創立15周年を祝うイベント。
社員の家族も参加した。
従業員の平均年齢は29歳。
子どもを持つ社員が増えている中
この会社では去年から子育てを支援する手当や休暇の導入に力を入れている。
(株式会社アドウェイズ 人事戦略室長 西久保剛さん)
「いろんなライフイベントを迎える社員が増えてきた。
ケアしないと人材流出を防げない。」
しかしそれぞれ家庭の事情も異なるなか
制度の見直しには苦労もあった。
まずは家族を持つ社員120人にシートを配布し労働などの聞き取り調査を実施。
しかし社員からは具体的な意見があまり出てこなかった。
(株式会社アドウェイズ 人事戦略室長 西久保剛さん)
「女性社員に聞くといろいろ要望とか困っているとか出てくるが
男性社員は『ウチは大丈夫です』と問題視をしていないことがあって。」
そこで考えたのは社員の家族や子どもから直接話を聞くことだった。
年に2回家族を会社に招き“子ども役員会”という場を設けた。
“授業参観にパパに来てほしい”
“夕飯時の一番忙しいときに帰宅しお風呂に入れるなど面倒をみてほしい”
こうした声を受け出来たのが
家庭の事情に合わせて職場を離れることができる一時帰宅OK制度。
そして子供の誕生日や運動会などに気軽に休みがとれる子ども特別休暇やベビーシッター補助など
様々な休暇や手当を導入した。
4月に産休から職場に戻った橋爪早苗さんは復帰に大きな不安を抱えていたが
こうした制度が導入されたことで前向きに仕事に打ち込めるようになったという。
(橋爪早苗さん)
「復帰をしたいという願望はすごくありました。
制度が整っているのは働く側としては安心感につながっている。」
ベビーシッター補助など福利厚生にかかる費用は年間200万ほど増えた。
しかしそのコスト以上に離職率の改善や社員のやる気を高める効果があったと分析している。
(株式会社アドウェイズ代表取締役社長 岡村陽久さん)
「社員が入って辞めて入って辞めてだと会社自体が進歩せずにずっと繰り返してしまう。
家庭もあって子どももいて経験豊富な社員がどんどん残ってくれる会社にしていかないと
今後競争に勝っていけないのかなという思いはある。」