9月2日 キャッチ!
ヨーロッパからの移民によって伝えられたチーズはブラジルで盛んに食べられていて
生産量も EU、アメリカに次ぐ量となっている。
しかしイタリアのモッツァレラやフランスのカマンベールのような代表的なチーズがないため
世界的な知名度はあまり高くない。
サンパウロ市内のチーズ専門店。
(客)
「カナストラチーズが大好きです。」
「カナストラチーズを探しに来ました。
このチーズが1番好きなんです。」
(チーズ専門店店員)
「予約待ちのリストです。
カナストラ、カナストラ、カナストラ・・・。
ブラジルで最高のチーズですから。」
いま国内でブームとなっている「カナストラチーズ」。
ブラジル連邦政府の文化省は
2008年 古くから独特の製法が守られてきたこのチーズを文化的価値の高い商品に認定した。
カナストラチーズの特徴は
きめが細かく
牛乳の甘みと柔らかな酸味の絶妙なバランスにある。
カナストラチーズ唯一の産地 南東部カナストラ地域。
カナストラ山脈に面するなだらかな丘が続くこの地域は
1日の気温の変動が少なく
チーズ作りに向いているとされ
古くから多くの小規模農家がチーズの生産に携わっている。
この地域のチーズ生産者 マシャード・ルシアーノさん。
チーズ作りひと筋30年のルシアーノさんは
カナストラチーズに魅せられ約15年前に家族でこの土地に移ってきた。
カナストラチーズが持つ風味の秘密。
それはすべての工程が手作りであること。
そしてこの地域で受け継がれるあるものを使うことにある。
しぼりたての牛乳に注ぎ込まれた液体は地元で「ピンゴ」と呼ばれる酵母である。
チーズを型に入れて水気を抜いた後に出てくる滴の中に凝縮されていて
集めたピンゴは次の日のチーズの酵母として使う。
ただこのピンゴはとても繊細である。
牛乳を搾りだす時に雑菌が付いたり
何らかの原因で工房の中に雑菌が入ると
チーズを熟成させるピンゴの中の菌がいなくなる。
ピンゴに異変が起きると
酸味や苦みが強いチーズになってしまったり
熟成がなかなか進まなかったりすると言う。
そのため経験のある生産者でも味のレベルを保つことが難しい。
この日も納得できるチーズができなかったルシアーノさん。
知り合いのチーズ生産者のところに別のピンゴをもらいに行った。
カナストラ地域のチーズ生産者たちは
質の高いピンゴを200年もの間たがいに融通し合いながらその味を守り続けてきたのである。
これまでなかなか日の目を見なかった伝統のチーズ。
そこには連邦政府が厳しい規制を課してきた事情があった。
食品の衛生管理を担当する省庁が
生の牛乳を使った乳製品に対して厳格な衛生基準を強いていたため
州外にチーズを販売することを禁じていたのである。
販売を州内に限られていたチーズ生産者に対して地元の政府は強力な支援を続けてきた。
伝統のチーズの生産を続けてほしいと
工房を持てない生産者に対して共同の施設も建設して生産者に提供して来た。
(州政府関係者)
「私たちの役割は地元の農家が質の高い牛乳を生産し
その結果 質の高いチーズを作れるよう手助けすることです。」
そして2年前 州政府は連邦政府に掛け合い
定期的に牛乳やチーズを研究機関などに検査に出すことを条件に
カナストラチーズを州外で販売できる許可を取り付けた。
ルシアーノさんも広くカナストラチーズを知ってもらおうと
現在 州外での販売手続きを進めている。
(チーズ生産者 ルシアーノさん)
「将来カナストラチーズを世界中の人たちに紹介することができればと思っています。」
ブラジルのオリジナルチーズとして注目が集まりつつあるカナストラチーズ。
ルシアーノさんたち生産者がはぐくんだ伝統の味が世界に広がろうとしている。