10月19日 国際報道2017
10月6日 今年のノーベル平和賞に選ばれたのは
国際NGO「I CAN」核廃絶国際キャンペーン。
10年前に I CANが結成されたのはオーストラリアだった。
オーストラリアでは1950年代に核実験が繰り返し行われてきた。
実験は先住民のアボリジニが多く住む地域で行われ
いまもその影響を訴える人たちがいる。
オーストラリアの先住民アボリジニの1人 スー・コールマン・ヘーゼルダインさん(66)。
(アボリジニ ヘーゼルダインさん)
「私たちは皆 核実験の被害について何も知りませんでした。」
オーストラリアでは1950年代に旧宗主国のイギリスによる核実験が12回行われ
さらに60年代にかけて放射性物質を伴う爆破実験が約200回にわたって実施された。
実験がもっとも多く行われたのは
アボリジニの人たちが住んでいた南部の砂漠地帯マラリンガやエミューフィールドである。
ヘーゼルダインさんは2歳のとき
核実験が行われた場所から数百キロ離れた村に住んでいた。
(アボリジニ ヘーゼルダインさん)
「砂嵐だろうと皆思っていましたが
実際は核実験による放射性のチリでした。」
実験後 周囲ではがんを患う人が相次いだ。
ヘーゼルダインさんも甲状腺のがんになり摘出せざるを得なかった。
核実験から約60年が過ぎ
オーストラリア政府は
核実験が行われた区域にいた人に対して無料の医療提供を行うことを発表した。
しかし対象地域はごく限られていて
ヘーゼルダインさんは含まれていない。
20年にわたって核廃絶を訴えてきたヘーゼルダインさん。
国際社会にも自らの経験を語っている。
今年3月 国連での会議
国際NGO I CAN 核兵器廃絶国際キャンペーンの養成を受け
各国に対して核兵器禁止条約の必要性を訴えた。
(アボリジニ ヘーゼルダインさん)
「がんと慢性疾患が私の家族や地域社会を苦しめています。
キノコ雲の下でまた犠牲者が生まれないよう
条約のために協力する必要があります。」
アボリジニの人たちの窮状を語り救済も求めた。
その後 条約は賛成多数で採択され
9月には50以上の国や地域が署名した。
条約にはヘーゼルダインさんの声も反映されている。
この日はないようについてI CANの担当者から説明があった。
(I CANの担当者)
「あなたのおかげで盛り込まれた点です。
核開発による先住民への影響の認定や被害者の救済などです。」
しかし核保有国をはじめ母国のオーストラリアは条約に反対している。
(I CANの担当者)
「オーストラリア政府は署名しないでしょう。」
すべての国に条約に参加してほしい。
ヘーゼルダインさんはオーストラリア南部で行われた核廃絶を訴える集会に参加した。
(アボリジニ ヘーゼルダインさん)
「政治家に対して草の根運動で条約に署名するよう働きかけましょう。
未来は次世代のためのものであり
私たちが守っていかなければなりません。」
ひとりひとりに呼びかけたヘーゼルダインさん。
力を合わせることで大きなうねりを生み出せると期待している。
(参加者)
「未来の子どもたちに重荷を背負わせないために
核の無い世界を実現したいです。」
「皆で立ち上がり
より良い世界にできることを政府に証明していきたいです。」
(アボリジニ ヘーゼルダインさん)
「未来を守るには過去を忘れてはいけません。
忘れてしまえば再び同じことが起こります。」
つらい体験を力に変えながら追い求めてきた核の無い世界。
その実現に向けた決意はこれまでになく強まっている。