11月8日 おはよう日本
響き渡るアメリカ国歌と星条旗。
その前で片膝をついているのはアメリカンフットボールのプロリーグ NFLの選手たちである。
警察官による黒人の射殺事件や人種差別に抗議するため
黒人を中心とした選手たちが始めた。
しかし
(NFLのファン ツイッターより)
「この国を侮辱するな
国旗を侮辱するな。」
これに怒ったのが一部のNFLのファンの人たちである。
ユニフォームや帽子を燃やす。
なかには40万円以上するシーズンチケットまで燃やす人も。
選手たちの行為は国を侮辱することに等しいと考えるファンの間で
選手を非難する過激な行動が広がっている。
この問題で火に油を注いでいるのがこのひと。
(アメリカ トランプ大統領)
「NFLのオーナーはこう言えばいい。
“国旗を侮辱するならフィールドから出て行け
クビだ
クビだ!”」
一方で抗議の動きは野球やチアリーディングにまで広がっている。
国旗や国歌に対する行動をめぐり対立が深まるアメリカ。
選手たちの行動を許せないという退役軍人のジョン・ウェルズさん(67)。
ベトナム戦争のとき海軍の士官となり
世界中の海でアメリカ軍の作戦に従事してきた。
選手たちの行動は
国旗や国歌のもとで戦い死んでいった戦友への侮辱だととらえている。
(ジョン・ウェルズさん)
「仲間たちは国旗のために戦い
死んでいった。
国旗に無礼な態度をとるのはアメリカ人全員への無礼だ。」
愛犬にまでユニフォームを着せるほどのフットボールファンだったウェルズさん。
選手たちの抗議行動以来
試合を観る気がしなくなり
お気に入りだったユニフォームも処分を検討している。
(ジョン・ウェルズさん)
「自分も燃やすかもしれないよ。
トランプ大統領は国旗を守ろうとし正しい。
社会の分断は選手たちのせいだ。」
選手たちの抗議行動を別の形で受け止めている人もいる。
学生のケリー・スチュアートさん(26)。
(ケリー・スチュアートさん)
「これが父と私です。
いつもスポーツを教えてくれました。
父の夢は退役後にサッカーを教えることでした。」
7年前に陸軍の大佐だった父親をアフガニスタンで亡くした。
過激派の自爆テロに巻き込まれたのである。
棺を包んでいた国旗をケリーさんは大切にしている。
(ケリー・スチュアートさん)
「国旗は私にとって特別なものです。
いろんな感情が押し寄せてきます。
これは自由のために戦った父の犠牲のシンボルなんです。」
そんなケリーさんは選手たちの抗議を見たとき
やはり怒りを感じたという。
しかしケリーさんは考え方を変える。
きっかけは人種差別や排他的な考え方を原因とする事件が
最近ひんぱんに起きていると感じたことだった。
(ケリー・スチュアートさん)
「白人至上主義の事件
ネットの差別的投稿は
いまやアメリカのサブカルチャーです。
そんなアメリカのために父は命をかけたのではありません。」
ケリーさんは自分の思いを新聞に投稿。
“父は人種や宗教に関係なくすべてのアメリカ人の権利を守るために死んだのだ”と訴えた。
(ケリー・スチュアートさん)
「トランプ大統領の対応は社会に明白な分断を引き起こしました。
大統領は選手たちにも敬意を払い
人種差別の現実に目を向けるべきです。」
国旗と国歌のもと
まとまってきたアメリカ社会。
いま“国を愛するということは何なのか”という問いに直面している。