2021年2月25日 NHKBS1「国際報道2021」
エジプトのロボット工学者 マフムード・コミーさん(27)。
エジプトでも新型コロナの影響が続くなか
コミ―さんは医療現場を支援する人型ロボットの開発に取り組んでいる。
ロボット作りを志すきっかけは日本のアニメだった。
自在に動くアーム。
肩に搭載されたサーモカメラで体温を測定し
胸のモニターで表示。
そしてPCR検査用の綿棒まで備え付けているのが
人型ロボットのキラ3号である。
まだ試作段階だが医療支援用に開発されたれっきとしたロボットである。
エジプト北部の町 タンタ。
開発者のマフムード・コミーさん(27)。
ロボット工学の博士課程を学ぶ大学院生である。
コミ―さんは去年3月
新型コロナウィルスの感染が世界的に拡大するなか
ひっ迫する医療現場の助けになればとロボットの開発を始めた。
(ロボットを開発したコミ―さん)
「ロボットを作って医療関係者を救いたいと思ったのです。」
コミ―さんがロボット工学を志すきっかけとなったのは
昭和を代表するロボットアニメ「マジンガーZ」。
人が操るロボットが悪を退治するこのアニメシリーズは
エジプトをはじめ中東各国でも放送され多くの子どもたちの心をつかんだ。
(ロボットを開発したコミ―さん)
「マジンガーZや日本のアニメが大好きでした。
人の役に立つものを作るのが私の夢でした。」
しかし実際にロボットを作るとなると一筋縄ではいかない。
最初の壁は製作費である。
これまでにかかった費用約100万円は全て自腹。
コンピューター教室の講師をするなどして資金を工面した。
調達が難しい部品はおもちゃの部品で代用。
白いガムテープを使って胴体のあちらこちら補強するなど
苦心の末 作り上げた。
医療支援を目的とするため
性能の追求に妥協は許されない。
独自にソフトウェアを開発し
スマートフォンを使ってどこからでも遠隔操作できるようにし
綿棒の取り替えが可能なアームを使ってPCR検査までできるようにした。
マジンガーZほどのカッコよさはないが
医師たちの役に立ちたいというコミ―さんの思いがこもった作品である。
この日コミ―さんは実用化に向けた次のテストを行なった。
地元の病院の協力を得て
実際の医療現場で動きを確認する。
肺の超音波診断を行なう作業や
人工呼吸器を患者の口にあてる作業も試した。
しかしスムーズにマスクを口に運ぶことが出来ない。
視察をした医師は
(医師)
「アームが動く速さが問題です。
マスクをつけるまで時間がかかり過ぎます。」
(コミ―さん)
「自動で動かせるようになればもっと速くできます。」
少しほろ苦いテストになった。
(医師)
「世界的に医師が不足しているなかでロボットによる補助は不可欠です。
もっと性能を上げてくれれば。」
コミ―さんは次のキラ4号ではより性能を高めて本格的な医療現場での稼働を目指している。
(ロボットを開発した コミ―さん)
「コロナウィルスは巨大なモンスターです。
このロボットは強靭な兵士のように私たちを見守ってくれます」
日本のアニメへのあこがれから生まれた医療支援用の人型ロボットキラ。
新型コロナに打ち勝つため
出動する日はいつになるのか。
2021年2月24日 NHKBS1「国際報道2021」
広大ならラベンダー畑で知られる北海道の富良野地域。
いまコロナ禍で国際的な人の往来が厳しく制限されているにもかかわらず
アジアを中心とするアジアの投資家たちが
富良野に熱い視線を送っている。
2020年に富良野市に完成したコンドミニアム。
入り口を出るとすぐ目の前に富良野スキー場のゲレンデが広がっている。
香港の企業が開発を手掛けたこの物件。
最高級100㎡の部屋は2億円余。
33個すべてが中国やベトナムなどの投資家に購入された。
(香港の開発業者)
「富良野は海外の投資家の間で関心が高まっている。
投資することが出来てとても満足している。」
海外の投資家たちは原則
購入した物件をホテルとして貸し出して利益を得ようとしている。
タイの投資家が購入した物件。
どうすれば客を呼び込めるのか
不動産会社と投資家がたびたび打ち合わせを行なっている。
(不動産仲介会社)
「海外の宿泊客が冷蔵庫を使いやすよう
野菜室と冷蔵庫に英語のシールを貼ります。」
(タイの投資家)
「いいですね。」
この物件がある地区では4年連続地価が上昇。
投資家たちは物件の価値が高まることを期待している。
(タイの投資家)
「富良野の雰囲気のすばらしさが購入の決め手になりました。
価格があがったら売却して利益を得たいです。」
富良野市で最も開発が進むエリア。
住民の高齢化が進み家を手放す人が増えるなか
ここ数年で70余の土地や建物が海外の投資家に売却された。
なぜいま富良野なのか。
最大の理由は物件価格の安さである。
北海道でも高級リゾートとして知られるニセコ地区では10億円を超える物件もある一方
富良野はその5分の1程度で購入できる。
さらに
良質なパウダースノーのスキー場があるだけでなく
夏のラベンダー畑など
1年中観光を楽しめることから
海外の投資家の間で人気が高まっているのである。
(不動産仲介会社 池野社長)
「これからも順調に不動産開発の計画があるので
それも投資家の背中を押しているのでは。
これからまた伸びていくと思われる。」
このため海外の投資家が動きを活発化させている。
1月下旬 中国の投資家がオンラインで一軒家の物件を視察した。
(不動産業者)
「茶の間を開けたらすぐキッチンがあって。」
(中国の投資家)
「庭はどれくらいの広さ?」(不動産業者)
「庭は100㎡くらいかな。
夏はここは景色がいいから
外に出ると400mでスキー場。」
物件の価格がまだ安いとされる今だからこそコロナ禍であっても確保しておきたいという。
(中国の投資家)
「どのくらいの値段しますか?」
(不動産業者)
「だいたい今で3,500万円くらい。」
(中国の投資家)
「日本円で?
安い 安い。」
「富良野は中国人に超人気なところです。
安い時期に手に入れて
そのままおいたままにしてもかまわないし
だんだん時間が経つと北海道の土地が買われてなくなる。」
未開拓の投資先として急速に視線が集まる富良野。
コロナ禍を見据えて海外の投資家の動きが一層熱を帯びそうである。
2021年2月24日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
新型コロナウィルスの感染拡大に伴う厳しい外出制限が今も続くフィリピン。
巣ごもり需要で空前のブームとなっているのが観葉植物である。
家々の庭先やベランダに鉢植えがどんどん増えていく様子から
植物の「プラント」と「パンデミック」をかけたプラントデミックという言葉も生まれている。
多くの人々にとって観葉植物が心の癒しとなる一方
価格が高騰するなどブームが過熱気味に。
野生植物の違法採取も相次ぎ問題になっている。
首都マニラの中心部で開かれた観葉植物の展示販売会。
今こうしたイベントがフィリピン各地で開かれ大勢の人でにぎわっている。
マニラ近郊に暮らすメンディーナさん(25)。
半年ほど前から栽培を始め
いまでは100鉢以上の世話をしている。
きっかけは感染拡大に伴う外出制限だった。
設計事務所に勤めていたメンディーナさんはこの影響で失業。
不安や孤独感にさいなまれるなか
心の癒しとなったのが観葉植物だった。
(メンディーナさん)
「植物栽培を始めたことで本当に救われました。
世話をしているとストレスから解放されます。」
空前のブームを背景に観葉植物の価格も急上昇している。
マニラにある園芸店。
売れ筋は葉の模様や形が珍しい植物。
アンスリウム 1万7,000円
フィカスティネケ 9,000円。
(店員)
「価格は急上昇しています!」
フィリピンでは感染拡大前と比べて価格が10倍以上
ものによっては70倍に跳ね上がったという。
2万円の鉢植えを購入した女性。
フィリピンの平均月給とほぼ同じ値段である。
(女性客)
「こんな高価なものを買うなんてどうかと思っているけど
家にずっといるなかで唯一の癒しが植物なんです。」
ライブ動画配信での販売も好調である。
この日は5分に1鉢のペースで売れていた。
(園芸店CEO )
「利益はこの1年間で2倍に上昇しました。
20~30代の若者も興味を持っていて
ブームは当面続くでしょう。」
一方で深刻な問題も引き起こしている。
フィリピン北部バギオ市で撮影された映像。
大きな袋を持った人物が歩道脇の植物を持ち去っている。
バギオ市は植物の窃盗が相次いでいるとしてパトロールを強化している。
さらに動画投稿サイトには山で植物を採取する映像がいくつも投稿されている。
「やぁ みんな!
きょうは仲間と一緒だ。」
「おい!それは何だ?」
「アロカシアだ!」
投稿者の男性が掲げるのは
独特な葉の形で人気が高いサトイモ科の植物である。
根っこごと掘り出した。
フィリピンの環境天然資源省は
違法な採取が増えているとして
こうした映像を公開し本人を特定するなど厳しく取り締まる姿勢である。
しかし広大な山林での対策には限界あり
今後生態系にも影響が出るのではないかと懸念されている。
(フィリピン環境天然資源省 レオネス次官)
「違法採取グループは組織化しており
コントロールが難しい状況です。
こうした違法採取が生態系全体に深刻な影響を与えるでしょう。」
2021年2月20日 読売新聞「編集手帳」
夏目漱石が、
「アイ・ラブ・ユー」を「月がきれいですね」と訳したという真偽不明の伝説は若い方ほどごぞんじだろう。
『鬼滅の刃』でも人気キャラがつぶやく。
ずばりと思いを口にするのではなく、
文学的な表現として小学生にもおなじみであるらしい。
将来は所変わって月面から、
「地球がきれいですね」と愛を伝える若者が現れないだろうか。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が宇宙飛行士の募集で、
文系にも門戸を開くという。
将来の月面活動を見込んでの方針転換とされ、
聞いた瞬間、
やや極端にも月面基地で小説や詩を書く活動を想像してしまった。
JAXAは米国主導の月探査計画に参加し、
早ければ10年内にも日本人が初めて月に降り立つ可能性がある。
どんな任務を負うのか定かではないものの、
理数に強い人に限らないという宇宙飛行士募集の多様化は、
宇宙少年の夢を広げることだろう。
かつて本紙歌壇に掲載された短歌を思い出す。
<月月月月月月とつらねれば梯子を登って月へ行けそう>(井上鈴野)。
梯子を登るのは算数の宿題をほっぽって、
漫画に興じるそこのきみかもしれない。
宇宙少年の夢
2021年2月18日 NHKBS1「国際報道2021」
新型コロナウィルスの感染者が1千万人を超えて世界で2番目に多いインド。
公衆衛生に対する意識が高まったことで
日本ではなじみ深い“爪切り”に熱い視線が向けられている。
インドの一般的な雑貨店。
店頭に並んでいるのは爪切りである。
日本の大手刃物メーカーが4年前から現地生産を行なっている。
爪の間の汚れを取る機能も備わっている。
食べ物を直接手に取る習慣があるため
現地に合った工夫が施された。
ニューデリー近郊にあるメーカー。
現地法人の責任者 パンディアさん。
30年間日本でビジネスマンとして働いた経験を生かし
爪切りの販売に力を入れてきた。
しかし当初は売り上げを伸ばすのに苦労したという。
インドでは伸びた爪はハサミやかみそりを使って切る人が多く
パンディアさんの会社が作った爪切りは見向きもされなかったのである。
(刃物メーカー現地法人責任者 パンディアさん)
「インド人の場合は爪切りをあまり使わずに歯でちぎったり
爪切りの重要性は日本ほど認識されていないのが現状。」
転機となったのは新型コロナウィルスの感染拡大だった。
健康や公衆衛生への意識が高まり
清潔さを保つ道具として爪切りに注目が集まるようになったのである。
外出制限の影響で特にネット販売が売り上げを伸ばし
6月から12月までの販売は前の年の同じ時期に比べて2倍に増加した。
(刃物メーカー現地法人責任者 パンディアさん)
「“インド人もびっくり”ということ。
人間っていうのは怖くなると健康に気遣い始める。」
感染拡大のさなかに高まった健康に対する意識をさらに定着させたい。
パンディアさんはいま各地を精力的に回り
爪を切ることの大切さを広めようとしている。
この日訪れたのはインド北部。
手を清潔に保つ方法を学ぶ子ども向けのイベントに参加するためである。
JICA(国際協力機構)が開いた。
「爪の角はばい菌がたまりやすいのでしっかり切ってください。」
都市部から離れた地域とあって爪切りは普及しておらず
初めて目にする子どもたちも多くいた。
パンディアさんの会社は5万個の爪切りを無償で提供することを決めた。
家族で爪切りを使ってもらい清潔さを保ってもらいたいと考えている。
「以前は爪をカミソリで切ったり歯でかじったりしていました。
これからは爪切りを使い
親にも教えます。」
(JICA インド事務所 大地田さん)
「反響はすごく良かった。
日本らしさを生かしながら
インドのコロナ対策に貢献したい。」
いつか爪切りをインド全土に広めたい。
パンディアさんの活動はまだ始まったばかりである。
(刃物メーカー 現地法人責任者 パンディアさん)
「きれいな爪が健康につながると教えていく。
その1歩をやろうとしている。
それが1つの流れになっていく。
国全体が変わっていくと思う。」
2021年2月16日 NHKBS1「国際報道2021」
日本の伝統文化 俳句。
La cloche a sonnne
quand je mangeais un kaki
Temple Horyu-ji
フランス語で読む
柿食へば 鐘が鳴るなり 法隆寺
音節の数が五七五になっている。
La clo che a son ne
qsuand je man geais un Ka ki
Tem ple Ho ryu-ji
フランスで文化交流を進めているパリ日本文化会館が去年開いた俳句コンクールには
現地の小学生たちも応募した。
俳句が両国を結ぶ新たな架け橋になろうとしている。
パリ市内の小学校。
5年生が俳句の授業を受けている。
(先生)
「五七五のルール
それだけではないですよね。」
(児童)
「季語をひとつ入れる必要があります。」
(先生)
「季節を示す言葉ですね。
例えばなんだっけ。」
(児童)
「雪。」
姉妹校となっている日本の学校との文化交流を続けてきた。
去年クラスで俳句コンクールに応募した結果
そのうちの1句が優秀作品に選ばれた。
(パリ日本文化会館 諸橋さん)
「リナさんの俳句が優秀賞に選ばれました。
おめでとうございます。」
受賞作には新型コロナの影響で学校が休校となり
避難先の郊外で過ごした不安な日々がうたわれている。
ウィルスの 日々長くして 蒸し暑い
(受賞したリナさん)
「ロックダウンのときの気持ちを描きたかった。
コロナの怖さと友だちにも会えない寂しさ
複雑な気持ちだった。」
フランス語でも俳句の世界は奥が深いようである。
作ってみるとなかなか17音にはならない。
子どもたちは同じ意味を持つ言葉を辞書で調べて
音節を数え
思考錯誤を重ねる。
(ラバ教諭)
「最初は簡単だと思って喜びますが思うようにはいきません。
言葉を探しあぐねて簡単ではないと気づくのです。」
授業の最後に作った俳句を発表する。
運河沿い すべての川が蛇行して 水遊び万歳
コンクールの審査員を務めた川崎さん。
フランスで翻訳業のかたわら
地元の人たちに俳句を教えている。
自らも日本語とフランス語の両方で俳句を詠んで発信。
さらにフランス語の俳句を日本でも味わってほしいと和訳を手掛けている。
たとえばこれは今回の受賞作のひとつ。
Mas que un peu de fait (5)
pour miux sen tir le par fum (7)
du pam ple mou ssier (5)
少しずらしたマスク
もっと香りを嗅ぎたいから
グレープフルーツの木
マスクややずらして香る文旦樹
(俳句コンクールの審査員 川崎さん)
「マスクがあって息苦しいとかではなく
それをちょっとずらすってことで
自然の動きにとても敏感だと感じました。
とても繊細な句です。」
コロナ禍で日本とフランスの人たちが同じような不安や苦しみを抱いているなか
川崎さんは
俳句がお互いにエールを送り合う手段になったと感じている。
(俳句コンクールの審査員 川崎さん)
「閉塞感というのはやっぱりあったと思います。
ただそれよりも増してそれを乗り越えて
その自然の喜びなり
春が来た喜びとか
日仏で共有するというところがあったんではないかなと思います。」
授業の最後に男の子が詠んだあの作品。
le long du canal,
tous les fleuves serpentent,
Vive la baignade!
運河沿い すべての川が蛇行して 水遊び万歳
直訳ではこうなるが
川崎さんの訳は
水遊び 楽し 運河と うねる川
「すごいですね。
大人が運河と
ぐじょぐじょぐじょと蛇行する川を一緒に見るなんてこと
なかなか無い気がする。
そういったことをうまく対比して
大人もなかなか思いつかない
本当に傑作かもしれませんね。」
(俳句コンクールの審査員 川崎さん)
「皆さん読んで
これ言語はどっちフランス語?日本語?ってわからなくなるくらい
すんなりと入っていけるような訳ができたらいいですね。」
今回の日仏交流俳句コンクールの受賞作品は
パリ日本文化会館のサイトでみることができる。
2021年2月16日 NHK「おはよう日本」
2050年の脱炭素化を掲げた日本。
その中で注目された技術に“メタネーション”がある。
二酸化炭素を逆に生かして燃料に変える技術とはー。
(大阪ガス)
「脱炭素化技術であるメタネーションを軸とした都市ガス原料の脱炭素化や
再生可能エネルギー導入を軸とした電源の脱炭素化により
2050年 当社グループ事業におけるカーボンニュートラル実現に挑戦する。」
大阪ガスが脱炭素化の新技術の軸としたメタネーション(Methanation)。
その仕組みは
温室効果ガスである二酸化炭素を取り込む。
水を分解して水素を取り出し合成することでメタンを作り出す。
作られたメタンは都市ガスの原料に使われる。
都市ガスを燃やしてでてきる二酸化炭素を相殺できるので
実質ゼロにできるという計画なのである。
メタネーションはヨーロッパなどで一部実用化されている。
ドイツの大手自動車メーカー アウディ。
このメーカーが開発した乗用車はメタンが主成分の天然ガスを燃料にしている。
アウディはドイツ北部にメタネーションの工場を自社で建設。
風力発電で電力を得る。
その電力で水を電気分解して水素を生成。
そして二酸化炭素を合成しメタンを作る。
それを都市ガスに使っている。
さらに天然ガス車の燃料として使用。
脱炭素化を実現した車社会を目指している。
日本で長年この技術の研究に取り組んできた大阪ガス。
今回 “実用化に向けた大きな一歩“と発表したポイントはこの部品。
水から水素を取り出す過程で
これまで使っていた高価な特殊セラミックスに代えて
安価な金属を使うことに成功。
国内で初めてコストを9割も削減できるようになったのである。
(大阪ガス エネルギー技術研究所)
「金属をベースとしたもので
大型化しやすくコストダウンもしやすい。
実用化に向けて一歩進められた。」
さらにメタネーションの利点は
都市ガスのパイプラインなどの設備をそのまま使える点にある。
同じくクリーンな水素とは異なり
巨額のインフラ投資をしなくても導入できるという。
大阪ガスはメタネーションの技術を2025年の大阪・関西万博で活用する計画を明らかにした。
(大阪ガス)
「我々の技術をこのタイミングで知らせて
中長期的な脱炭素社会に貢献していく姿勢を見せられたら。」
2021年2月16日 読売新聞「編集手帳」
古来の災害を調べてきた歴史学者の磯田道史さんは、
現在は「災後」ではなく「災間」だと述べている。
地震、津波、風水害…常に災害と災害の間に生きていて、
この現実から逃れられないと。
近く発生から10年を迎える東日本大震災の被災地である福島、
宮城を震度6強の地震が襲った。
けが人多数、
建物の破損などが報告されたものの、
亡くなった人がいるとの報を聞かない。
深夜の突然の強震だったにもかかわらず、
である。
多くの家庭で、
家具の倒壊や落下物への警戒がされていたからだろう。
災間の備えの結果とみていいのではないか。
すこしだけホッとできたのもつかの間、
今来ている災間は忙しい。
低気圧が急発達し、
東北に激しい雨が降り注いだ。
土砂崩れをはじめ地震で緩んだ地盤の崩壊が懸念されている。
念のための避難が命を守る場合がありそうである。
磯田さんは「起きてもいないことを想像することが防災の生き方だ」とも語る。
「信長が殺された時、
京都で戦う作戦を持っていたのは秀吉だけ。
勝者の法則です」。
災害と災害の間に生きる現実を受けいれつつ、
勝利することをめざそう。
2021年2月16日 NHK「おはよう日本」
青森県弘前市に冬限定のキャンプ場が開設され
コロナ禍で密を避けられると
1人でキャンプを楽しむ人が多く訪れている。
凍てつく氷点下の世界。
厳しい寒さの中で行われる冬キャンプである。
岩木山のふもとに広がる雪原がこの冬 期間限定でキャンプ場になった。
この日はSNSで開催を知った50人が県内外から訪れた。
「やばいやばい 風が。」
風や雪に耐えながら
あえてキャンプにのぞむ。
「非日常みたいな。
その非日常を楽しんでいる。」
グループでの参加。
テントは1人1つずつ。
「こんな感じでソーシャルディスタンスを保ちながら。
テントになったら密になってしまうので
各人のテントで。」
「寒いですよ。
寒いんですけどあたたかいですよ なんか・・・。」
夜 気温はさらに下がる。
体を温める焚火。
熱々の「キャンプ飯」。
「あちゅい。」
日常を忘れ
時は過ぎる。
冬キャンプで気持ちを新たにしようとする人がいた。
青森市から来た田中さん(34)。
介護施設や病院で栄養士として10年働いてきた。
「会社を辞めたのはつい先日です。
みんなに言われました。
『今なの?』って。」
大きなやりがいを持って働いていたが
あまりにも忙しくなり過ぎた。
寒空のもと自分をしセットしようとこの場所に来た。
「キャンプしている時はそういうの考えないようにしてる 逆に。
ある意味 無の状態。」
キャンプ場でふと心に浮かんだ光景。
それは田中さんの生きがいになっている青森ねぶた祭である。
「はねと」と呼ばれる踊り手として10年以上活動してきたが
去年は新型コロナウィルスの影響で中止になったのである。
「コロナなんて無ければいいのにって本当に思う。
いまが一番 暗い時なのかなと思う。
ランタンの光があるのと同じで
必ずどこかに光があるので
明るくなることを信じて
待ってます。」
夜が明けてー
水筒の水も凍る。
「穏やかな朝で。
明日の活力になりました。
きょうもこうやって朝日が昇ってますし
頑張っていこうと思う。」
寒さの中で自分を見つめた冬のキャンプ。
気持ちを新たに歩み出す
今年の冬である。
2021年2月15日 NHKBS1「国際報道2021」
タイを拠点にサッカー選手の代理人を務める真野浩一さん。
真野さんは
Jリーグにはいれなかったり解雇されたりした選手など
多くの日本選手がアジアに移籍するのを手助けしている。
2020年12月
タイで日本選手の契約交渉に臨む代理人の姿があった。
真野浩一さん(35)。
9年前からバンコクを拠点に活動している。
(サッカー代理人 真野浩一さん)
「1か月くらい前からリクエストは届いていて
何人かの選手を提案させてもらったのですけど
なかなかうまく折り合いがつかないところもあって
いま契約できるかなっていうところです。」
この日は大井川選手(24)を新たなクラブに売り込む。
「この選手は右サイドでも左サイドでも使えます。」
攻撃的な持ち味が評価され
シーズン終了までの契約合意に達した。
「4時からきょう練習。」
「行っていいんですか?」
「もちろん
逆に行かないと 行かないと!」
大井川選手にとってもこれまでよりレベルの高いクラブでの新たな挑戦となる。
(サッカー代理人 真野jさん)
「彼なりにしっかりとコミュニケーション取りながら
新しいチームメイトとあいさつを交わしていたので
“すごくいいな”って。」
真野さんはかつて自らもフットサルの選手としてタイのクラブとプロ契約を交わした。
しかし現役生活はわずか1年で終わった。
(サッカー代理人 真野さん)
「契約を取ることが大変すぎちゃって
契約を取ること自体がもう最終ゴールになってしまったんですよ。」
選手たちを支える存在の重要性を痛感した真野さん。
引退後もタイにとどまり
当時アジアにほとんどいなかった代理人になった。
これまでに移籍を手掛けた日本選手は126人。
アジアの19の国や地域に送り出した。
しかし新型コロナの感染拡大の影響はプロスポーツ界を直撃。
選手の国際的な移籍が停滞する事態となっている。
(サッカー代理人 真野浩一さん)
「プレーを直接 自分の目で見られないとか
直接会って人柄を見ることができないので
この状況だとすごく難しいですね。」
こうしたなか真野さんが力を入れているのが選手たちの生活を安定させることである。
この日は半年前に移籍を支援した小島選手(31)のもとを訪れた。
新型コロナによる所属クラブの経営悪化などによって
児島選手の収入は約3分の1にまで減少。
プレーに集中することも難しくなっていた。
そこで現在手掛けているのは
選手とファンを結ぶオンラインサロンの設立である。
会員になったファンが選手と交流できる新たな試みである。
(小島選手)
「こっちのほうに重点を置きすぎてサッカーがおろそかになっちゃうんじゃないかとか。」
(サッカー代理人 真野浩一さん)
「サッカー選手のときはサッカーしかしません。
それ以外のことにチャレンジするのは引退した後でという形で分けるのではなく
やっぱり今の時代
並行しながらできるというか。」
サイドビジネスが軌道にのれば
収入面の不安が解消するだけでなく引退後の生活も安定する。
真野さんは小島選手の挑戦を強く後押ししている。
(小島選手)
「やっぱりチャレンジしてみようかという気持ちになり行動に移せるので
ありがたいなと思いました。」
選手としての夢を諦めざるを得なかった真野さん。
いまの選手たちが少しでも長くプレーできるように支え
その経験をセカンドキャリアにも生かしてほしいと考えている。
(サッカー代理人 真野浩一さん)
「日本から海外に一歩を大きく踏み出すことによって
大きな結果を得るチャンスを得ていると思うので
最終的には成功をつかんでもらいたいと思います。」
2021年2月15日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
南米ブラジルでは今年に入って感染が再び拡大し多くの都市でロックダウンが行われているが
その影響で女性の化粧に対する意識に変化が起きている。
最大都市サンパウロで毎年開かれている日系人の美人コンテスト。
ブラジルに200万人いると言われる日系人最大のイベントで
会場にはブラジルの美容関係者が多くかけつける。
メイクに使用されているのは日本製の化粧品。
もともと根強い人気のあった日本製の化粧品だが
コロナ禍のブラジルでは今その人気が多くの人に広がり始めている。
ブラジルでは日本製の化粧品だけを集めたコーナーが多く見られるようになっている。
売れているのは洗顔料や肌のケアに必要な基礎化粧品である。
中でも日本製の商品は人気で
前年比で20%近く売り上げが伸びている。
(店員)
「パンデミック後売り上げが急に伸び
日本の洗顔料などを多くのお客様が買い求めています。」
1人あたりの化粧品消費量が世界4位の美容大国ブラジル。
出かける際は完璧なメイクをするが
これまで保湿などのスキンケアは重視されてこなかった。
新型コロナの拡大がブラジル人の女性の意識を徐々に変化させているのである。
なかには日本の化粧品だけを好んで使用する“JAPANマニア”と呼ばれる人も生まれている。
サンパウロで美容関係の仕事をしているオオタさん。
3年前訪れた東京で日本の化粧品を購入し
そのクオリティの高さを知った。
感染拡大後
クーラーがきいた家にいる時間が増え
肌の乾燥が気になるようになったオオタさん。
肌をきめ細かく整えるには日本製が一番だという。
いまでは30種類以上の日本の化粧品を使い分けている。
(オオタさん)
「日本人が化粧品に対して意識が高いことは知っていました。
日本製は非常に品質が高く
実際に使ってみると良さが分かります。」
意識の変化に一役買っているのがユーチューバーの存在。
ブラジルでは感染拡大以降日本の化粧品を紹介するユーチューバーが増え
数百人にのぼっている。
ユーチューバーのふたりが紹介するのは鼻の汚れを取るシール。
「取れた?」
「いっぱい汚れが取れた。」
「私のもすごくとれたわ。」
ユーチューバーのゴイさんは女性誌の編集者だった。
感染拡大後
出版社をやめオンラインでの発信に専念している。
自分で日本製の化粧品を購入して商品を試し
今ではチャンネル登録者が3万5,000人にのぼる。
(ゴイさん)
「感染拡大で在宅が増えたため
人々の意識が変わり
肌のケアの新しい方法に興味を持ったのです。」
ブラジル人の意識の変化は日本企業の新商品の開発にも影響を与えている。
日本の大手商社 三井物産では
保湿を重視し始めたブラジル人女性の好みを知るために
現地でアンケート調査を始めた。
この日は開発中の化粧品と美容液のさまざまなサンプルを準備した。
どのタイプが最も肌になじむのか試してもらい用紙に記入してもらう。
さらっとするよりも
潤いを維持できるしっとりとした感触の製品のニーズが高まっているという。
「肌が乾燥しないし
べたつかないので気に入りました。」
企業側では日本の化粧品に対する需要を踏まえ
ブラジルの人により好まれる商品の開発を進める予定である。
(ブラジル三井物産)
「日本の製品に対する需要が非常に大きくなっている。
いろんなタイプの肌質の方がいるこの国で成功モデルを作れれば
“Jビューティー”という日本の美容が
ラテンアメリカで有名になることが実現できればと思っている。」
いまだ感染拡大が続く新型コロナウィルス。
ブラジル人女性の意識にも変化をもたらしている。
2021年2月12日 読売新聞「編集手帳」
子供ならではの疑問がある。
5歳児が大人に、
月がきれいだと話して、
こうも言った。
「おつきさんはぜんぶでなんこあるの」。
最近、
「こどもの詩」欄に掲載されていた。
いつか学校で教わるだろう。
月は地球の周りを公転している。
太陽光に照らされて、
地球から見える。
満ち欠けは、
位置関係による。
科学知識を身につけても、
天体に感動するのは変わらないらしい。
国際宇宙ステーションに滞在中の野口聡一さんが、
満月の写真をツイッターに投稿した。
「蒼く見えてますね。
幻想的!」との言葉が添えられていた。
高度約400キロの軌道を飛ぶ宇宙飛行士が、
インターネットで発信できる。
そんな時代になった。
「#きぼうを見よう」というサイトでは、
宇宙ステーションを肉眼で見られる場所と日時が分かる。
天気に恵まれたある日の夕暮れ後、
半信半疑で都心の空を見た。
あった!
光る点が動いている。
思わず手を振る。
どうかお元気で。
今日は旧暦の正月にあたる。
人は昔から、
月や太陽の運行を観察し、
暦を作り、
暮らしに役立ててきた。
法則を探る科学と、
美をめでる心の両方を大切にしたい。
2021年2月12日 NHKBS1「国際報道2021」
1月 初めて女性の副大統領が誕生したアメリカ。
ただ女性の政治参画が進んでいるとは言えないのが現状である。
G7各国の女性議員の割合は
1位 フランス 39.5%
2位 イタリア 35.7%
3位 イギリス 33.9%
4位 ドイツ 31.5%
5位 カナダ 29.6%
6位 アメリカ 27.3%
7位 日本 9.9%
アメリカは2020年秋の連邦議会選挙を経て
23.4%から27.3%に上昇しているが
日本の9.9%に次いで低い水準。
その背景には何があるのか。
女性として初の副大統領に就任したカマラ・ハリス氏。
将来の大統領候補とも言われ
バイデン政権における女性の政治参画の象徴的存在となっている。
しかし大統領選挙と同時に行われた連邦議会選挙では
立候補の段階から女性の割合は男性に比べて低く
民主党と共和党で合わせて
上院で23.9%
下院で29%
にとどまった。
女性の政治参画の研究で知られるラトガーズ大学。
30年前から政治を目指す女性に“選挙トレーニング”など実践的な講座を行なってきた。
しかしいまだ女性議員の割合が思うように増えていない現実に危機感を抱いている。
(ラトガーズ大学 アメリカ女性と政治センター ウォルシュ所長)
「家族や子どもの問題・環境問題などにおいて女性は非常にすぐれた視点を持っています。
もし女性議員がいなければ女性のすぐれた視点は議論に反映されないでしょう。」
なぜ女性の立候補者の数は伸び悩んでいるのか。
その背景には日本とも共通する課題がある。
民主党のストリックランド下院議員。
8年間市長をし務めた経験をアピールして初当選した。
ストリックランドさんが壁と感じてきたのは
女性には家事や育児・介護などとの両立が求められることである。
(民主党 ストリックランド議員)
「男性議員は仕事と家事のバランスについて問われることがありません。
今でも家族の世話の大部分を担っているのは女性だからです。
市長になった時私はまだ独身でしたが
経済面など家族ができてもやっていけるか考えざるを得ませんでした。」
下院議員となった今
女性が政治に参加しやすい社会を実現していきたいと考えている。
(民主党 ストリックランド議員)
「女性にとって良い政策は社会全体の利益です。
さまざまな世代の女性が政治参画できるようにしたい。」
一方 投票する側は女性の候補者をどう受け止めているのか。
日本とアメリカの有権者の投票行動について研究を行なっている
早稲田大学政治経済学術院 小野義邦教授。
コンジョイント実験という方法で1、000人以上に対して調査を行なった。
参加者には
架空の候補者2人の性別・人種・重視する政策といったプロフィールを示し
どちらに投票するか選んでもらう。
これを何パターンも繰り返すことで
投票する際
どんな要素がどの程度影響しているのか推計することができる。
実験の結果
女性の候補者は男性に比べ
アメリカでは平均で1.3ポイント
日本では平均で2.7ポイント
得票しにくいことが分かった。
さらに
女性候補者がどんな政策をアピールするのかも得票に影響する可能性も見えてきた。
女性の場合
環境問題に比べて外交や安全保障をアピールする人の方が不利になる傾向があったというのである。
(早稲田大学 尾野教授)
「女性候補者がステレオタイプの枠から外れると
ネガティブに有権者は評価する傾向がある。
無意識のうちに女性はサブ的なものだというおそらくバイアスがある。
現状としてバイアスがあると認識していると
その辺 変わりやすくなる。」
こうした状況でどう女性候補者を増やしていくか。
ラトガーズ大学では政治家を目指す女性たちに具体的な選挙戦略の立て方を指導している。
1月に始まったオンライン講座にはこれまでにのべ650人余が参加。
(講師 セリンダ・レイク氏)
「選挙戦で重要なのは有能さと好感度の両立です。
これらの要素は女性により多く求められます。」
この日は選挙で評価されやすいポイントとして
“他の政党のメンバーとも協力しあってきた“
“経営者として新たなビジネスや雇用をたくさん生んだ“など
協調性や実務経験をアピールすることを提示した。
大学では女性議員を増やすには
政党が具体的な取り組みを進める必要があると考えている。
(ラトガーズ大学 アメリカ女性と政治センター ウォルシュ所長)
「民主・共和両党は女性候補の擁立に力を注ぎ
選挙で勝てるよう支援していくべきです。」
2021年2月12日 NHK「おはよう日本」
5万回斬られた男。
東映京都撮影所の俳優 福本清三さん(77)。
数多くの時代劇に“斬られ役“として出演。
名前もセリフもない役がほとんどだったが
全力で演じ続ける姿は人々の心をとらえ
ハリウッド映画にも出演した。
亡くなって1か月余。
その生き方に励まされた人たちが追悼の思いを寄せている。
1月下旬
京都市で福本さんが出演した映画の追悼上映が行われた。
「太秦ライムライト」。
映画は
時代劇の斬られ役を描いた
福本さんの人生と重なるストーリー。
70歳を過ぎて初めて主演を務めた。
(観客)
「時代劇が当たり前の家庭で
いつの間にかファンにという感じ。
頭に残りますね 強烈に。」
「斬られるところ
すべてが美しい。
どんなつまらないようなことでも一生懸命やるってことですよね。」
15歳の時に東映京都撮影所に入所した福本さん。
時代劇を陰で支える大部屋俳優として
斬られ役や通行人など
無名の役を50年以上にわたって演じてきた。
主役の強さを引き立てるため
大きくのけぞりながら倒れる独特の斬られ方。
その演技にはひとつの思いがあったと語っていた。
(「UZUMASAの火花」より 2014年NHK放送 福本清三さん)
「日本中で1人でいいから俺を見てくれるひとがいるように自分でしよう。
どこかで誰かが見てくれることを何かしないといけない。
だからこそやらないといけないんだと
ぼくは何かのときに感じたんですよ。」
どこかで誰かが見ていてくれる
その思いを胸に撮影所にある道場で黙々と稽古にうち込んできた。
40年近く交流があった殺陣師の清家三彦さん。
日々の努力は画面に存在感として現れていたと振り返る。
(殺陣師 清家三彦さん)
「妙に道場が騒がしいなと思ってそっとのぞいたら
1人でなぎなた振ってたり。
あそこに福本さんいるなっていうくらい
メインの動きでなくても全力でやられている。」
福本さんの役との向き合い方は
時代劇に出演する俳優のお手本にもなっている。
東映太秦映画村で行われているチャンバラショー。
この日出演した50代のベテラン俳優には
今でも忘れられない撮影現場での福本さんの姿があるという。
(俳優 松永吉訓さん)
「福本さんはその時代の人になり切る。
みなさん寒かったら足袋履かれるんですけど
素足にわらじとか
そういうのを守っておられました。
ぼくも役者やっていく以上は受け継ごうと思っています。」
小さい頃にショーで見た福本さんの立ち回りに憧れて入所した若手俳優もいた。
(俳優 岡内学さん)
「たとえ端っこの方の見えない役でも
絶対誰かは見ていてくれる。
自分ももっと頑張って
ぼくらが時代劇を引っ張って行ければ。」
スポットライトはあたらなくてもどんな役でも全力で挑む。
福本さんの積み重ねたその思いは
次の世代へと受け継がれている。