
幼い頃、わたしは煮た大根が苦手でした。
あの独特の苦味が、子どもには耐えがたかったのです。
保育所の給食に出たときは、なかなか食べることができませんでした。
先生は残したらダメと言ったので、無理やり飲み込みました。
「ウエッ!」とえづき、涙が出たのを、懐かしく思い出します。
しかし、いまは何の抵抗もなく食すことができます。
逆に、その味わいや苦味に惹かれ、美味しいと感じます。
このように、昔はつまらない、自分には合わないと思っていたものを再度試してみますと、その良さや素晴らしさ、本質的な価値を見いだすことができることがあります。
齢(よわい)を重ねるからこそ、わかることがあるのです。
感じるものがあるのです。
見えるものがあるのです。
その蓄積が、人の生き方に彩りを添えるようになります。
「成熟」とは、このようなものであると考えます。
中学生の時期は「成長」の時期です。
わたしは、中学生に、成熟した重みで、大事なことを伝えられたらいいなと思います。