私は教員36年間の間に2年間、また定年退職後の5年間を教育行政(教育委員会)に勤めました。
その経験を通して痛感したのは、行政の縦割り体質の弊害がずっと解決されていないということです。
職員は、自分の属する部署の仕事は鋭意取り組み、その部署の専門性を高めていきます。
しかし、同じ階にいる別の部署がどのような仕事をしているかをほとんど知らないのです。
となりの部署がどんな成果をあげているか、またどんな課題に直面しているかがほとんど知らずに、建屋の同じ階で教育行政の仕事をしているのです。
少なくとも学校では、そのような問題はあまり見当たりません。
一人の学級担任が、子どもが不適応を起こして関わりだすと、家庭のことが見えてきて、その子に関する情報が、しくみとして多くの職員間で共有されます。
しかし、行政では、「隣の人はなにをする人ぞ」で、わからないことが多いのです。
そのことは、教育に限ったことではなく、役所の縦割り行政の弊害として、どこの自治体でも多かれ少なかれ指摘されることがあります。
たとえば、はたらく女性が自分の子の子育てと親の介護の両方を抱え、その重い負担に苦しんでいても、相談窓口が異なり、子育て部署は子育てのことしか対応できず、介護の支援対応まではできないのです。
その逆も同様です。
そのように、課題が複合的に絡み合う、いわゆるダブルケアの課題に直面している女性を支援する公的支援の手立てが見つかりにくいのです。
複合的な課題の解決には、総合的な対策が必要というのは、支援の鉄則です。
縦割り行政の解消は、ぜひとも解決されなければならないのです。