箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

白鳥が飛ぶ

2024年12月07日 06時15分00秒 | 教育・子育てあれこれ

『斐伊川相聞』(富岡悦子)の詩集は、作者にゆかりのある出雲や、父との記憶などをめぐって書かれています。


歯切れのいい短めの詩は、淡々とした語り口と互いに作用しあい、きっぱりとした清々しい印象を放ちます。



「天寺平廃寺」(てんじびらはいじ)には、次のような一節がでてきます。


私の手をひく大きな人は

もう片方の手で中空を指さした。

その先には白鳥が飛ぶ。

「ああ くぐい」と父の低い声。



くぐいとは白鳥のことですが、作者の思い出と重ねられて大切に扱われています。


詩を通して、敗戦の夏の記憶をたどり、作者は祖先に繋がる土地を引き寄せようとします。


一つ一つの物との距離感をはかるようにして綴られるが、はかりきれないはがゆさを含んだ作品になっています。


それは忘れてしまいたくないという抵抗でもあります。


私的なところから始まり、広がりをもって風物や歴史へと視線が届いていくのです。