「難民受け入れ」美談に潜む歴史的教訓 (前)
マルクスは米国を「自由な植民地」と言った。「そこには広大な土地があり、移住者はだれでもその一部を自分の所有にできるからだ」とも書いている。
それを愛知学院大教授の野村達朗がもっと分かり易く説明している。
「土地が開墾し尽くされた欧州ではあぶれた農民が都市に流れて賃金労働者化していた。しかし米国では20世紀初めまで開墾が続いた。欧州人が米国に移住したのは経済的独立をしてプロレタリア化を免れるためだった」(アメリカス学会誌)
マルクスも野村先生も大事なことを一つ見落としている。米国にはただ広大な土地が転がっていたわけではなかった。
そこには7000万インディアンが平和に暮らしていたのだ。欧州の移住者が自分の土地を得るには女子供を含めすべてのインディアンを殺していかねばならなかった。
米国は移民の国というよりヒトラーも裸足で逃げだすホロコーストから生まれた国と言った方がいい。
インディアンを殺しまくって西の果てに行ったらメキシコ領のカリフォルニアだった。今のディズニーランドの南、カピストラノには怪傑ゾロもいた。
米国はそこでメキシコに戦争を吹っ掛け領土につけ加え、その辺に住んでいたヤキ族も殺し尽くして白人の国にした。
この時点で7000万先住民はほぼ消滅し、アングロサクソン系の白人、いわゆるWASPが米国の新しい定住者となった。
そのころになるとジャガイモ飢饉で国を捨てたアイルランド人をはじめイタリア人やユダヤ人が米国移住者の輪に加わってきた。
先日離日したキャロライン・ケネディ大使の先祖もこのとき移民船に乗ってボストンに着いている。
定住者WASPは新参の白人たちをむしろ冷淡に扱った。嫌がらせもした。
ロサンゼルスCC(カントリークラブ)は今もWASPだけを会員にするゴルフ場で、ハリウッドで成功した白人系ユダヤ人すら入れなかった。
ユダヤ人はすぐ南の丘の上に彼ら専用のゴルフ場ヒルクレストCCを作った。
ここはアイルランド系のピーター・オマリーと黒人のシドニーポアチエと山野美容専門学校の山野正義をメンバーに入れて「我々は人種差別をしない」とアピールした。
(続く)
新潮文庫
「変見自在 トランプ、ウソつかない」
高山正之著 より
「変見自在 トランプ、ウソつかない」
高山正之著 より
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【米国は移民の国というよりヒトラーも裸足で逃げだすホロコーストから生まれた国と言った方がいい。】
この認識で以てアメリカを見ると、随分見え方が変わって来る。
「保護区に居住する先住民は十分な生活費を与えられているが、向上心がなくアルコールに溺れて自堕落な生活を送るものがほとんどである」
中高生の頃、ドキュメンタリー番組でこんな内容のものをいくつか見た記憶がある。勿論、製作は日本のテレビ局。