久し振りに自動車学校へ来たので二輪の教習を見ようと思って行ってみた。
二輪の教習を受けたのは三十五年以上前のこと。
原付の免許を取ろうと思ったのがその年の新年早々。
偶然目に入った派出所に飛び込んで「原付の免許を取りたいのですが、どうしたらいいですか?」と聞く。今考えれば何ともまあ、な話だが、詰めていた警察官が丁寧に答えてくれた。
三十半ば近くになって原付、というのも何ともまあ、な話。けれどその時はそれで十分だと思っていた。
原付講習を受けねば免許試験は受けられない。
寒空の下、二十名足らずの受講者を前に「ここだけの話ですから。原付に乗ったことがない人は手を挙げて」と聞く。手を挙げたのは自分一人。
あれ?とここらあたりから何か変だと思い始めた。
話の後、スクーターで発進、停止の練習をしたはずだが、数回やっているうちに気が付くと数人しか残っていなかった。
みんな勘がいいのだろうか、すぐ覚えて帰ってしまったとしか思えない。
免許を取って一週間。
丁字路でどっちに行こうかなときょろきょろしたら、右手にパトカーが居た。
手招きしている。何事かとそちらに行くと「通行区分違反(逆走)です」。
「標識なんてなかったですよ」。「ありますよ」。木が茂っていて見えない。
「あれじゃ見えないでしょ。それに来いって言われたから来たのに」
「エンジン、切ってたら良かったんですけどね」
一ヶ月後、スピード違反で合計違反点数4点。初心者講習受講権利(義務?)獲得。偶然のことながら普通二輪免許教習受講中の、この教習所で受講する。
「あれ?今日、教習やったか?」と揶揄われる。
次に世話になった時からでも、もう二十五年近く経っている。
VFRだったのがいつかCB400SFになっていて、それももうすぐ終わりらしい。免許を取ったのが他人より随分遅いと思っていたけど、それでもいつの間にか三十五年以上。
若い教官がやって来て「教習を受けられる方ですか」と聞いてきた。
えっ?と思ったがそりゃそうだ、そうでない者がこの場にいるのはおかしい。爺さんになってバイクの免許取る人が増えてるらしいし。
「昔、ここで世話になったので、久し振りに練習を見せてもらおうと思って」。
「あ、あのバイクですか」
髭の爺さんとドラムブレーキのSRが容易にリンクしたらしい。
ちょっと複雑な気分。
あっさり納得されるより「元気ですね」と言ってほしかった?
いやいや。
そんなお世辞みたいなこと言われたら、いかにも爺さん、じゃん?