宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

電波で観測しても暗い、太陽の黒点

2015年07月09日 | 太陽の観測
野辺山45メートル電波望遠鏡を使った太陽観測で、
ミリ波で見た太陽黒点の中心部が、周囲より暗い“黒い点”であること分かったんですねー

太陽観測衛星“SDO”で観測した紫外線での太陽像に、
野辺山45メートル電波望遠鏡で観測した電波の明るさを、
等高線で重ねた図。
紫から赤になるにつれて電波で明るくなり、
緑の領域が太陽の平均的な明るさを示す。

太陽の大気状態

太陽表面の黒点には、地球の1万倍も強い磁場が存在しています。

その磁気圧の影響で太陽表面の対流層が妨げられて、
温度が低くなってしまうことに… 黒点が黒く見えるのはこのためです。

このことは当然のように思えるのですが、
当然なのは可視光線で見える光球だけのことなんですねー

いっぽう太陽を電波の一種であるミリ波で観測してみると、
彩層と呼ばれる光球面より上空の大気が見えてきます。

彩層における磁場の広がりや、
その影響を受ける大気の温度、密度構造は、
まだ、よく分かっていません。

でも、明るさが大気の構造に左右されるミリ波で観測すれば、
大気状態を推測する重要な指標になります。

ただ、ミリ波で黒点を空間的に分解できるような高感度の大型電波望遠鏡は、
太陽の強い電波を観測するのに向いていないんですねー

なので、これまで電波望遠鏡による太陽観測例は、
あまり行われてきませんでした。


ミリ波で太陽を見る

そこで国立天文台を中心とする共同研究グループは、
電波の特性を変えずに強度だけを減衰させる、特殊な装置を独自で開発。

これを長野県にある野辺山45メートル電波望遠鏡に取り付け、
ミリ波での太陽黒点観測を試みます。

黒点は、プラージュと呼ばれる明るい領域に囲まれていて、
電波でもプラージュに対応する領域は明るく見ます。

一方、今回の観測によって、
黒点中心は明るいプラージュ領域よりは暗く、
周辺の静穏領域と同程度の明るさであることが分かったんですねー
太陽黒点の中心は、ミリ波でも暗い領域ということです。
黒点領域の拡大図。


太陽黒点は暗かった

これまでに提案された数々の太陽黒点モデルでは、
黒点領域はミリ波だと、明るく見えると予測されてきました。

でも、今回の成果は正反対になり、
ミリ波が放射される彩層のモデルが、
間違っている可能性を示すことになりました。

従来の彩層モデルは、
紫外線や可視光線の観測データに基づき構築されてきたのですが、
彩層の大気の状態は不安定なため、高度な観測と理論が必要でした。

電波は、彩層大気の状態の影響を受けにくい性質があります。

なので観測さえできれば、
彩層大気の状態を、より安定的に導くことが出来るんですねー

「太陽の彩層大気を診断する、新しい手法をもたらした」
という点では、今回の成果は注目すべきものらしいですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 地球を脅かす太陽の巨大黒点

姿勢制御システムに異常発生! 探査機“ドーン”は軌道変更を延期

2015年07月09日 | 小惑星探査 ドーン
準惑星ケレスを周回中のNASAの小惑星探査機“ドーン”。

姿勢制御システムに異常が発生したため、
6月30日から実施予定だった、軌道変更を延期していたそうです。
小惑星探査機“ドーン”


姿勢制御システムの異常

“ドーン”が準惑星ケレスに到着したのが今年の3月6日。

4月23日から5月9日まで高度1万3500キロからの観測を行い、
さらに軌道の高度を下げ、
6月6日から30日までは、高度4400キロから観測を行っていました。

当初の計画では、
6月30日からイオン・エンジンに点火し、らせん状に軌道の高度を下げ、
8月からは高度1450キロの軌道から、観測が開始される予定だったんですねー

でも、6月30日にイオン・エンジンを点火した直後、
機体の姿勢が制御できなくなり、それを検知した“ドーン”自身が、
イオン・エンジンなどを停止。

その後“ドーン”は、
必要最小限の機器のみ動かす「セーフモード」に移行することに…

「セーフモードに入った」という信号が“ドーン”から入ると、
地上の運用チームは、7月1日から2日にかけて対処に当たり、
通常の運用モードに戻すことに成功しています。


今後の探査に大きな影響は出ない

NASAによると、
今回の問題の分析が完了し、新しい飛行計画を立てるまでの間、
“ドーン”は高度4400キロの軌道に、とどまることになります。

先日、冥王星探査機“ニューホライズンズ”も、
コンピュータの問題で、「セーフモード」への移行が発生しています。

冥王星最接近のチャンスが一度きりの“ニューホライズンズ”と違い、
“ドーン”は、すでにケレスの周回軌道に乗っています。

ある決まったタイミングで軌道を変えなければいけない、
といった制約がないんですねー

なので、今回の問題で3回目の軌道変更が遅れたとしても、
観測目標を変えたり、得られる成果に変化が出ることは無いそうです。

また今年12月からは、
軌道高度を、さらに375キロまで下げた運用が予定されています。

こちらも単に開始日が遅れるだけで、影響はまったく出ないようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ ますます鮮明に見えてきた、ケレスで輝く謎の光点