宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

狭い領域で見つかった、きわめて珍しい四つ子のクエーサー

2015年07月10日 | 宇宙 space
観測可能な宇宙の端で、四つ子のクエーサーが見つかりました。

クエーサーはひじょうに明るい天体で、普通はバラバラに存在しています。

でも、今回発見された4個のクエーサーは、
わずか65万光年という狭い範囲にひしめいていることに…

平均すると、クエーサー同士は1億光年ほど離れて存在していて、
こんなに狭い領域で見つかるのは、大変珍しいんですねー
クエーサーは、銀河の中心にある巨大なブラックホールに、
物質が落ち込むときのエネルギーによって強烈に輝いている天体。
今回、ひじょうに明るい星雲の中に、きわめて珍しい四つ子のクエーサーが、
埋もれているのが発見された。


クエーサーのエネルギー源

1960年代初頭にクエーサーが発見されたとき、その正体は謎に包まれていました。

それは、数十億光年の彼方にある天体が、これほど明るく輝くには、
莫大な量のエネルギー放出が必要だからです。

でも当時は、そのような物理過程が思いつかなかったんですねー

今では、クエーサーのエネルギー源は、
「活動銀河の中心にある大質量ブラックホール」であることが、
明らかになっています。

こうしたブラックホールに大量のガスが落ち込むとき、
ガスは数百万℃まで加熱され、
途方もない量のエネルギーを放出するというわけです。


2つの驚き

ただ、今回の発見で天文学者を驚かせたのは、
四つ子のクエーサーだけではありませんでした。

それは、4個のクエーサーが見つかった場所でした。

4個のクエーサーが埋もれていたのは、
冷たい水素ガスからなる恒星1000億個分もの質量を持つ、
巨大な星雲の中だったんですねー

この星雲もまた、普通では考えられないものでした。


四つ子のクエーサー

天文学者が四つ子のクエーサーの発見に驚いたのは、
クエーサー自体が比較的珍しいからです。

クエーサーのエネルギー源である大質量ブラックホールは、
実は、ごくありふれた天体なんですねー

大きな銀河のほとんどが、
中心部に大質量ブラックホールを1つ持っていることが分かっています。

でも、こうしたブラックホールが明るく輝くのは、
大量のガスを飲み込んでいるときだけです。

そして、銀河の生涯において、
そのようなことは、めったに起こらないそうです。


低温なガス雲

観測可能な宇宙には、約1000億個の銀河があるのですが、
そのうちクエーサーとして活動しているものは約50万個。

四つ子のクエーサーを包んでいる巨大な冷たいガスの雲は、
クエーサーの形成に関する手がかりを握っているのかもしれません。

天文学者は、銀河はもともとビッグバンにより生じたガスが、
ダークマターの塊に吸い寄せられたときに誕生したと考えています。

ダークマターは、
光で観測できる恒星や銀河の5倍もの質量があるにもかかわらず、
その正体がいまだに不明の物質。

ふつう、ガス雲は重力吸収するときに高温になります。

でも、今回発見された雲の温度は、わずか1万℃…

ガス雲が重力吸収するときの温度は、1000万℃程度になるはずなので、
宇宙論的には、1万℃というのは低温なんですねー

また、このガス雲の密度は理論家が考える密度より、はるかに高く、
そんなガス雲がどうして存在するのか、まったく分からず…

分かっているのは、
異常な星雲の中に、異常なクエーサーの集団があることのみ。

もうこれは、偶然ではないのかもしれませんね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 100億光年彼方のクエーサーを複数アングルから観測

彗星探査ミッション延長へ、“ロゼッタ”は彗星に着陸するかも…

2015年07月10日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
ヨーロッパ宇宙機関の彗星探査ミッションが、
2016年9月まで延長されることになりました。

そしてミッションの最後には、
「機能停止が迫る周回探査機と着陸機が、彗星表面で再開」
するかもしれないんですねー


彗星探査の目的

ヨーロッパ宇宙機関が発表したのは、
ロゼッタのミッションが9か月間継続するための正式な承認が得られた、
というもの。

そう、“ロゼッタ”による冒険はまだ続くことになるんですねー

そしてミッションの最後には、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を周回している“ロゼッタ”を、
彗星に着陸させる可能性もあるようです。

このミッションを構成している探査機は、
彗星周回機“ロゼッタ”と実験用着陸機“フィラエ”。
彗星探査機“ロゼッタ”から切り離される実験用着陸機“フィラエ”
(イメージ図)

太古の氷とチリの塊である彗星の謎の解明を目的にしています。

そして、この探査により、
地球上で、どのように生命が発生したかに関する、
手がかりも得られるかもしれないんですねー

これまでの説では、
「幼年期の地球に複数の彗星が衝突し、
水と生化学的分子という形の貴重な贈り物がもたらされた」
という可能性も指摘されていました。


彗星の近日点通過を観測

周回機“ロゼッタ”と着陸機“フィラエ”は、
10年間におよぶ追跡の旅を経て、
昨年の8月にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の軌道に入りました。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星

そして、昨年の11月には“フィラエ”が彗星の表面に着陸するのですが、
上手くいかず、機体が大きく傾いてしまうことに…

“フィラエ”は太陽光が十分に当たらず、
太陽電池による発電が十分にできない状態になってしまいます。

期待と不安が渦巻くなか、
調査は、あらかじめ充電されていたバッテリーを使うことで開始。

そして当初予定されていた観測は、ほぼ完了するのですが、
着陸から約57時間後にバッテリー切れで、
“フィラエ”は活動を停止することになります。

でも、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星が太陽に近づくにつれ、
“フィラエ”の太陽電池パネルに太陽光が当たるようになり、
今は休眠状態から目覚めています。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、
太陽に再接近する近日点に8月13日に到達します。

この日、“ロゼッタ”と“フィラエ”の目前には、
「特別観覧席」からの見事な眺めが展開されるはずなんですねー


彗星の進化

近日点を通過したチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、
深宇宙に向かう方向に折り返して行きます。

太陽を周回する公転軌道をめぐる6年半もの旅を、
新たに始めることになります。

そして再び太陽から離れるにつれて彗星活動は低下…

これが観測できれば、
太陽に接近する「前と後」の詳細なデータが揃い、比較することで、
彗星が寿命中に、どのように進化するかが分かるかもしれません。


延長ミッションは彗星への着陸付き

ミッションの名目上の資金供給は、2015年12月までとされていたので、
今回の延長は、まったくの想定外ではありませんでした。

ただ、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は再び太陽から離れていくので、
“ロゼッタ”は十分な電力を太陽光発電からは得られなくなるんですねー

なので搭載された科学実験機器を、
効果的に機能させることが難しくなることに…

この時点で、“ロゼッタ”を彗星表面に着陸させる可能性が、
ひじょうに高いそうです。

でも“フィラエ”と異なり“ロゼッタ”は、
着陸をするための設計にはなっていません。

なので、彗星表面の接近画像を撮影するため、
推進剤を最後の一滴まで使い、
約3か月かけて、ゆっくりとらせん状に降下するミッションが、
練られているそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 7か月ぶりの交信! 彗星着陸機“フィラエ”は運用可能な状態