宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

巨大星の集団を育む、巨大なガスの渦巻き

2015年07月17日 | 宇宙 space
巨大星が集団で誕生していると見られる場所に、
高密度のガスの塊を取り巻く、3光年を超えるガスの腕が、
アルマ望遠鏡による観測で見つかりました。

このことは、ガスの腕が巨大星のゆりかごであることを示していて、
巨大星がどのようにガスを得て成長していくのかを、
明らかにするチャンスになるようです。


回転している構造を見つける

巨大な星団ができるためには、
大量のガスが効率よく星になる必要があります。

でも星が生まれると、
星の材料になるガスが恒星風で吹き飛ばされてしまいます。

なので、ガス雲の崩壊と星の誕生は、
非常に短期間で急激に起こらなくてはならないと考えられています。

つまり、ある程度の期間ガス雲が重力崩壊せず、
一気に中心部に流れ込むということなんですねー

ガス雲の重力崩壊に抗う力としては、
もともとガス雲が持っている回転の勢い(角運動量)が考えられるので、
回転している構造を見つけることが、
巨大星団の観測研究において重要になります。


2本のガスの腕

今回の研究で対象になったのは、
わし座の方向約2万3000光年彼方にある、
明るく巨大な星が集団で生まれている領域(OBアソシエーション)“G33.92+0.11”。

この領域全体の明るさは太陽の25万倍もあり、
その大半は2、3個の巨大な星によるものでした。

今回の研究では、
まず赤外線天文衛星“ハーシェル”などのデータを解析して、
“G33.92+0.11”の周りのチリやガスの分布を明らかにし、
2本のガスの腕が、若い星団の南北に伸びていることを突き止めています。

そして大量のガスが、
この腕を通じて星団中心部に流れ込んでいることが分かってきました。

次に、この領域の中心部“G33.92+0.11A”を、アルマ望遠鏡を使って高解像度で観測。
太陽の100倍から300倍の質量をもつ巨大なガスの塊を2つ発見しています。
チリが放つ電波(左)、
(右)はアセトニトリル(黄)、硫化炭素の同位体(緑)、
シアン化重水素(紫)といった分子ガスの分布。
電波観測データを疑似カラー化したもの。

さらに、これらのガス塊が、
いくつかのガスの腕でつながれていることも、明らかにできたんですねー


ガスの腕が分裂と第2世代の巨大星

若い星の周りの渦巻腕構造は、
小質量星“L1551NE”の周りにも見つかっていたのですが、
今回のものは、それに比べて100倍から1000倍ほど大きいものでした。

“G33.92+0.11A”のガスの腕は分裂途中にあると見られ、
2つの大きなガス塊の周りを取り巻く、衛星のような構造も見えています。

アセトニトリル、硫化炭素、シアン化重水素といった分子ガスの観測結果からは、
ガスの温度や密度が、場所によって大きく異なっているようすがとらえられています。

中心部では、星が生まれて高温になっているいるのですが、
北側の衛星ガスは、比較的低温だったんですねー
大質量星形成領域のガス分布のシミュレーション結果(左)、
アルマ望遠鏡で観測した“G33.92+0.11A”のチリの分布(右)。

この研究から考えられることは、
“G33.92+0.11A”の中心約3光年程度は平らな構造をしていて、
質量の大きなガス塊に向かって、腕を経由してガスが流れ込んでいること。

また、ガスの回転にともなう遠心力によって、ガス流の勢いは弱まっているようでした。

でもガスの腕が分裂することで、
第2世代の巨大星たちが、ここで生まれる可能性もあるようです。


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