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X線新星 “はくちょう座V404星”のブラックホール連星がアウトバースト

2015年07月28日 | 宇宙 space
太陽系から最も近いところにあるブラックホールの連星系、
“はくちょう座V404星”がアウトバーストを起こし、
大きな注目を集めているんですねー

“X線新星”の条件

X線新星と聞くと、どんな天体を思い浮かべるでしょうか?

X線や新星という名前は耳にしたことがあると思いますが、
この2つがつながった“X線新星”という名前は馴染みがないですよね。

中性子星またはブラックホールが、
通常の恒星と近接連星を成している連星系で起こる活動現象の1つが、
X線新星です。

連星系は、2つの星の間の距離が非常に近いので、
恒星の外層は、中性子星やブラックホールへ向かって流れ出していき、
降着円盤を形成します。

この現象は、
矮新星をはじめとする激変星で起こっていることにそっくりなんですが、
主星が白色矮星でなく、中性子星やブラックホールなどの、
より密度の高い天体だという違いがあるんですねー


“X線新星”のアウトバースト

このような降着円盤も激変星の場合と同じく、
安定して降着するのではなく、ときどき急激に物質が降着することがあります。

激変星の場合、この現象は矮新星アウトバーストとして観測されます。

でもX線連星の場合、中心天体がより高密度なので、
円盤が形成されている半径の重力ポテンシャルの深さは、
激変星の場合より、はるかに深くなります。

このため、矮新星の場合と比べて、エネルギーの高いX線を主に放出することに…
なのでX線新星と呼ばれているんですねー

新星と名が付いているのですが、いわゆる新星爆発とは別物になります。

もっとも、このX線の一部は円盤に再び吸収されて再放射されたり、
円盤からシンクロトロン放射されたりすることにより、可視光でも明るくなります。

そして、可視光で11等台に達することもあり、観察が行えるというわけです。


新星爆発ではなかった

“はくちょう座V404星”は、1938年に発見された古い新星です。

その後しばらくの間は、あまり注目を集めることもありませんでした。

でも、1989年にX線天文衛星“ぎんが”が、X線で明るくなっているところを発見。
この天体の増光が新星爆発ではなく、X線新星のアウトバーストだと確認されました。

このアウトバーストの際に、
可視光でも再び12等まで明るくなり、各地で観測がされました。

その後の研究で、このX線連星が持つ高密度天体は、
中性子星ではなく、ブラックホールらしいことが分かり、
ブラックホール連星としても知られるようになります。

今のところ、太陽系からもっとも近いところ(約7800光年)にある、
ブラックホールだと考えられているんですねー
X線天文衛星“ぎんが”X線天文衛星“スウィフト”


観測は今が狙い目かも

今回のアウトバーストは、
6月15日にX線天文衛星“スウィフト”によって、
“はくちょう座V404星”の位置にX線で明るくなっている天体があると、
報告されたことに始まりました。

これを受けて、可視光線でのフォローアップ観測がなされ、
12.65等まで明るくなっていることが明らかにされます。

そして、このフォローアップ観測の終了時には15.43等まで暗くなることに…

でも、6月16日には16.18等だったのが、、
13.1等とさらに明るくなっているとの報告が…
16日の観測は、いったん暗くなったところをとらえたようです。

その後、この天体はさらに明るくなり、ときに11等台に達することもあったようです。

短いタイムスケールで大きな変動を示す天体なので、
特にアウトバースト直後は1~2時間で3等級ほど明るさを変化させることもあるんですねー

ただ、タイミングが悪いと16等くらいまで暗くなることもあるのですが、
アウトバーストから数日が経過し、
このような大きな変動は少し収まってきたきたようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ いて座のX線新星はブラックホール連星