モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

ツル性のトリカブトを冠着山(姨捨山)と聖山で発見。絶滅危惧種のハナカズラが信州に?(妻女山里山通信)

2023-10-06 | アウトドア・ネイチャーフォト
 ひとつ前のアサギマダラの記事で、ツル性のトリカブトを載せました。環境省のレッドデータブックー日本の絶滅危惧種で、絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定されている離弁花類キンポウゲ科の猛毒の植物です。学名はAconitum ciliare。国内では九州の一部だけに極稀に自生するとされています。それが信州の山に自生しているのです。牧野植物園では、九州、朝鮮半島、中国東北部、ロシア沿岸地域に分布とあります。発見した冠着山(姨捨山)と聖山は何度も登っているので開花時期の9月の写真をすべてチェックしてみました。以下はその記録です。見られた標高は、1100〜1400mぐらいです。

■2011年9月27日【冠着山】
 山頂の北面のトリカブト。急斜面から横に長くツルが伸びています。

 コバルトブルーの青く美しい花。9月下旬なので結実しているものもありました。

 樹木がない開けた斜面に群生地があります。結実しているものもたくさん見られます。茎は長いもので2mぐらいです。上の2つのカットと同じ場所なのですが、直立性で斜めに倒れているものと。明らかにツル性と分かるものがあります。ここは北面巻き道ですがほとんど廃道となり崩れていて危険です。

■2014年9月15日【聖山】
 聖山で。15日だとまだつぼみも見られました。

 聖山の標高1300mぐらいの尾根道。

■2017年9月16日【聖山】
 ツル性とよく分かるカットだと思います。根は林の縁にあり、光を求めて伸びてきたということでしょう。

 聖山山頂直下からの北アルプスの仁科三山。双耳峰の鹿島槍ヶ岳。

■2020年9月5日【冠着山】
 山頂近くの冠着権現の石の祠の脇に咲くトリカブト。ツルは長いものは2mぐらいあり地面をはって横に伸びています。咲き始めなので花の色がやや薄い。つぼみもたくさん見られます。短いものは直立しています。突風で倒れたものではありません。根本も折れていません。新種のツル性トリカブトかも知れません。

 鳥居平からのコースの山頂下にある北アルプス展望所。右にアンテナのある聖山が見えます。近いので植生は似ていますが、冠着山には山梨やヤマボウシがありますが、聖山には見られません。

■2021年9月23日【聖山】
 このツルは非常に太く長く2m50cm以上あったと思います。トリカブトのツルが絡みついているのは山葡萄のツルです。

 鳥兜は舞楽で使用する伶人の冠に似ていることからつけられた名前です。全草が猛毒なので素手で触るのも厳禁です。

 ハナアブが吸蜜。毒は大丈夫なのでしょうか。大丈夫だから吸蜜しているのでしょうけど。猛毒のキノコを食べる昆虫もいますし自然のメカニズムは不思議です。

 聖山から下って眼下に聖湖。向かいの三峯山にはないでしょうか。来年は調査しないといけませんね。右後方に見えているのが冠着山です。聖湖対岸から一本松峠経由で冠着山登山口の鳥居平へ行くことができます。

■2023年9月26日【聖山】
 2021年と同じ場所ですが、夏が猛暑で少雨だったので細いツルが数本あるだけでした。右の花は残花になり結実しています。その下にはだれかに食べられた様な痕跡が。

 結実して葉が枯れ始めているものが多く見られました。花の見頃は、9月10〜20日ごろだと思います。

 2011年に発見して絶滅危惧種と知ったのが今年ですが、絶滅危惧種に指定されたのが2020年なのです。今回ツル性のトリカブトの希少性を知り、北海道以外で本州では上田の半過岩鼻にしか自生しないモイワナズナの例があるので、もしかしたらこれもと思い色々調べてみました。来年はもう少し調査の範囲を広げてみようと思います。私のブログはgooブログ300万以上ある中で常にアクセスランキング1000〜2000番にいます。でも最もアクセスが多いのはBABYMETALやハロプロや80年代ポップスの記事ですが。でもネイチャーフォトの記事もかなり人気があります。私が里山観察で最も重要視しているのは、蝶とかある種の昆虫とかに特化するのではなく、樹木から山野草、哺乳類から昆虫、蜘蛛、鳥類、藍藻類、菌類、粘菌、地質、歴史までと総体で里山を観るということを最重要視していることです。それで里山の全体像が浮かび上がって来るのです。特に日本の里山で妻女山の陣場平にしかない貝母(編笠百合)の記事には毎年凄いアクセスがあります。4月のアーカイブをご覧ください。

●聖山は、長野県の長野市、千曲市、東筑摩郡麻績村の境に位置する山で、標高は1447メートル。
●冠着山(かむりきやま)は、長野県千曲市と東筑摩郡筑北村にまたがる標高 1,252メートルの山。別名は姨捨山(おばすてやま)。両山とも拙書に載せています。

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『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、
『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。大学や市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
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大海を渡り2500キロ旅するアサギマダラ。アキノキリンソウ、ハナカズラ!?、シシウド、サラシナショウマ、ウバユリ(妻女山里山通信)

2023-09-26 | アウトドア・ネイチャーフォト
 妻女山の陣場平へ登ったらマルバフジバカマで数頭のアサギマダラが吸蜜していました。忘れていました。そうだ聖高原へ行かなければと翌日向かいました。天候はあいにく曇り空。しかし、これを逃すとフジバカマは散ってアサギマダラは飛び去ってしまいます。

 曇り空で撮影条件はよくありませんが、ほぼ無風なのが救いです。早速フジバカマで吸蜜するメスを撮影。アサギマダラ(浅葱斑)は、チョウ目タテハチョウ科マダラチョウ亜科の蝶です。成虫は、春から夏にかけて南から北へ移動し、移動先で世代を重ねた後、秋になると南へ海を渡って移動します。数千キロもの移動をするため、全国でマーキングをして調査をしています。アニメ『鬼滅の刃』にも登場して話題になりましたが、植物学者牧野富太郎をモデルにした朝ドラの『らんまん』のオープニングにも出てきますね。

 吸蜜するメス。アサギマダラはガガイモ科キジョラン属の常緑のつる植物のキジョラン(鬼女蘭)に卵を産み付け、幼虫は越冬します。ただガガイモは信州の里山にもあるのですが、キジョランの北限は東京なので、これらのメスはまもなく南下して産卵するのでしょう。6月に飛来したメスが長野県内で産卵しているのが確認されたそうですが。産み付けられた植物はおそらく新芽が山菜のイケマ(牛皮消)でしょう。その卵は夏には羽化して産卵し、その子供達が晩秋に南下するのでしょう。では秋に産卵して育った個体は? どうも雪のない西日本に南下し産卵して一生を終える様です。

 上のメスを捕まえて撮影。お腹の膨らみから卵を持っているか見ました。この膨らみからすると卵を抱えていますね。マーキングの際もこんな風に捕まえますが、傷つけない様にコツが必要です。撮影後は放します。

 この個体は、後翅下部に黒斑があるのでオスです。これは性標で、メスにはありません。オスはこの性標に性フェロモンを蓄えていて、尾部のヘアペンシルをここにこすりつけて、性フェロモンを移しとります。

 オスのアップ。アサギマダラと言われるのは翅の白い部分が浅葱色を帯びているからです。黒から茶色にかけてのコントラストが綺麗です。前翅の中程は半透明で透けて向こうの景色が見えるものも。個体差があります。

 吸蜜する2頭のオス。浅葱色(あさぎいろ)というのは、薄い葱の色という意味で、日本の伝統色の名前です。翡翠色、江戸紫、群青色、銀鼠などは聞いたことがあると思いますが、瓶覗とか高麗納戸、甚三紅とかは聞いたことがないと思います。日本の伝統色にもっと興味を持っていただけると嬉しいです。

 メスのアサギマダラ。アサギマダラは暑さに弱く北上し、寒さを避けるために南下するといわれています。それぞれの移動先で産卵し成虫は死ぬので、南下と北上の個体はまったく別のものといわれています。真夏に四阿山のカルデラの中の浦倉山から下った渓流で大きな群れを見たことがあります。

 そのクローズアップ。草間彌生の水玉模様の様な胸部が可愛い。この浅葱色の部分は構造色です。この部分の鱗粉は、開かずに縮んだままで細長い形です。

 フジバカマで吸蜜するのはアサギマダラだけではありません。これはキタテハ(黄立羽)。幼虫はカラムシなどのイラクサ科の葉を食べます。

 おそらくこれもキタテハだと思います。いや違いますね。これはヒョウモンチョウの仲間です。種類までは同定できません。フジバカマ(藤袴)は、キク科ヒヨドリバナ属の多年生植物。「秋の七草」の一つで、万葉の時代から人々に親しまれてきた植物です。
「萩の花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 あさがほの花」 山上憶良(巻8-1538)
 萩の花、ススキ、葛、ナデシコ、オミナエシ、そしてフジバカマとキキョウの花と秋の花を並べています。咲く花の情景を思い浮かべると秋の趣が感じられます。

 ホソヒラタアブのオスも来ていました。体長は9〜11ミリ。小さいです。撮影は大変です。幼虫はアブラムシを食べます。

 吸蜜に訪れる小さな昆虫を捕らえに来たアキアカネ。ナツアカネとの見分けは胸部の黒い模様ですが、尖っているのでアキアカネとしました。今年は赤トンボの発生が少ない様に思いました。小雨が降り始めたので帰ります。

 前回の茶臼山自然植物園の記事でソリダゴファイヤーワークスがアキノキリンソウの仲間と紹介しましたが。これがアキノキリンソウです。

 薄紫のノコンギ(野紺菊)の脇にシラヤマギク(白山菊)の群生がありました。これにユウガギク、ヨメナ、ゴマナとかあるので、秋の野菊の同定は大変です。『らんまん』のオープニングには薄紫の野紺菊も出てきます。

 センニンソウ(仙人草)かボタンヅル(牡丹蔓)の花後の実。葉に鋸歯縁が無いのでセンニンソウでしょう。どちらも毒草です。センニンソウは山野草の中ではトップクラスのいい匂いがします。花はブライダルブーケの様に清楚で豪華ですが、茎や葉の汁は皮膚炎を起こすので要注意です。

 久しぶりに見ました。ツル性植物のトリカブトでハナカズラ(花葛)といいます。牧野植物園では、九州、朝鮮半島、中国東北部、ロシア沿岸地域に分布とあり、絶滅危惧IB類なんですが。信州にあるんですけど。大発見ですかこれ。環境省でも九州にしかないと。でもあるんですけど。どうしましょ。ただ朝鮮半島にあるなら信州にあっても変ではないですよね。右上の花は結実しています。見頃は20日頃でした。その下は花がありません。こんな毒草を食べる動物がいるのでしょうか。妻女山陣場平の貝母も薬草で毒草ですが、ニホンカモシカは花を食べることがあります。トリカブトは猛毒です。山菜のニリンソウと似ていて誤って食べると死に至ります。素手で触るのも避けなければいけません。

 シシウド(猪独活)でしょうか。すぐ近くにある2m以上のシシウドは花後ですでに立ち枯れし始めています。これは高さ50センチぐらい。シシウド属の別種なのかまだ小さいのか。ノダケ、シラネセンキュウ、ウバタケニンジン、イワニンジンとかありますが、分かりません。

 サラシナショウマ(晒菜升麻)で吸蜜するクロヒラタアブ。

 今年は山栗が不作です。猛暑と少雨が原因です。松茸も不作だそうですが、森に入っても食菌はおろか毒キノコさえありません。先週かなりの豪雨があったのですが出ません。地温が高すぎるのです。松茸、ショウゲンジ、ウラベニホテイシメジ、ホンシメジ、天然舞茸は不作でしょう。10月下旬に雨が続けばハナイグチ、クリタケ、ムキタケ、ムラサキシメジは出るかも。

 ウバユリ(姥百合)が結実しています。枯れると割れてプレパラートの様な薄い膜のついた種を大量にばら撒きます。真夏に咲くラッパ状のユリの花は美しい。オオウバユリは高さ2mぐらいになります。

 小雨に煙る三峯山(1131.4m)。眼下にへらぶな釣りで有名な聖湖。小さなスキー場とスライダーがあります。麓には蒸気機関車やジェット機も展示されています。右奥は冠着山(姨捨山)。

 千曲川展望台から眼下に姨捨の棚田。稲刈りはこれからのところと終わったところも。千曲川の向こうに五一山脈。その向こうには私のホームフィールドの妻女山、斎場山から鞍骨山、鏡台山へと続く戸神山脈。
 今回は聖山へは登りませんでしたが、拙書でも紹介しこのブログでも何度も記事にしています。北アルプスから中央アルプス、美ヶ原、八ヶ岳連峰、志賀高原の山々に戸隠連峰と360度の大展望が魅力。県外からもハイカーがたくさん訪れる本当にいい山です。

●2021年9月23日に撮影した「ハナカズラ(花葛)」に似ているツル性のトリカブトです。今回と同じ場所です。こちらの方がツル植物ということがはっきりと分かると思います。山葡萄のツルにからみついています。

●拙書『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林の冠着山(姨捨山)のページにトリカブトの写真があるのを思い出しました。見るとどうもツル性のトリカブトらしいということで、写真データを探すと4枚ありました・2011年9月27日の冠着山です。場所はほとんど人が通ることのない北面巻き道で、ほぼ廃道になっています。山頂付近にもツル性のトリカブトがあります。冠着山や聖山、聖高原以外にも探すとツル性のトリカブトはあちこちにあるのかも知れません。探してみようと思います。

■2500キロ海を渡り旅する蝶、アサギマダラ


あいみょん – 愛の花【ACOUSTIC MUSIC VIDEO】 :あいみょんのアコースティックギターが心に響きます。

 昔、神田の古書店で『牧野植物図鑑』と『原色牧野植物大図鑑』を見つけて欲しいと思ったけどあまりに高額で諦めた思い出。今回古本の縮刷版を買いました。私もアートディレクターやデザインプロデューサー時代は仕事大好き人間で2度ほど死に損なったことがありますが、彼の仕事量は比べ物になりません。しかもアナログで全て手作業。交通の便も良くないのに日本中を飛び回り。想像を絶します。そして、そんな彼を支えた妻・壽衛さん。史実はドラマとは違いもっと過酷だった様ですが、彼女がいなければこの歴史に残る偉業はなし得なかったでしょう。
「家守りし 妻の恵みや わが学び」
「世の中の あらん限りや スエコ笹」


『原色牧野日本植物図鑑』北隆館が届きました。定価は4800円ですが新古本で3000円で買えました。さらに2、3とありますがとりあえず1を。コンパクト版なので携帯できます。大型本だと中古でも45000円はするので、昔、神田の古書店で見つけて諦めたことがあります。雨などで山に行けない日などに読むのもいいと思います。ただ植物の同定には使いません。近年,植物の分類体系が「新エングラー体系」や「クロンキスト分類体系」などから「APG 分類体系」とよばれる別のシステムに変わりつつあるのです。よって今まで形象学的に分類されていたものがAPG 分類体系によって、エッ!これがこれの仲間?ということがたくさん起きています。興味ある方は調べてみてください。
 朝ドラ「らんまん」で牧野富太郎が一般の人にも知られましたが、実際は二重婚で酒蔵の実家の金を絞り出して倒産させたり、お手伝いに手を出し、金が無いのに遊郭三昧とクズ男の見本。まあ妻の壽衛さんありきです。彼女がいなかったら稀代の植物学者牧野富太郎は間違いなく生まれなかった。

APG 分類体系と植物の進化 横浜国立大学教育学部 倉田 薫子:難解ですが、図版も豊富でじっくり読むといいでしょう。山野草好きにはおすすめです。APG 分類体系で、なんでこれがこれの仲間なの!?って思った方も少なくないと思います。

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ハンミョウに会いに茶臼山へ。自然植物園では珍しいホウジャクと邂逅。外来種の植物のオンパレード(妻女山里山通信)

2023-09-16 | アウトドア・ネイチャーフォト
 2週間ぶりにハンミョウに会いに茶臼山へ。前回は穴から出てきたばかりでたくさんいたのですが、今回は森の中に散ってしまった様で、4匹ぐらいしかいませんでした。代わりにクロメマトイが大量に発生していて鬱陶しいこと。結局15分ぐらいで退散しました。そして茶臼山自然植物園へ。

 ハンミョウ(斑猫)はナミハンミョウともいい、コウチュウ目オサムシ科のハンミョウ科の甲虫。アリとか小さな昆虫が餌ですが、まだ捕食シーンを見たことがないのでいつか見てみたいと思います。

 成虫の天敵は肉食の昆虫(ムシヒキアブ類、ジョウカイボン類、徘徊性クモ類)や鳥ですが、ハンミョウが食べられているところも目撃したことはありません。

 かなり鋭い牙なので不用意に掴むと痛い目にあいます。ハンミョウの生態については、前の記事をご覧ください。クロメマトイがあまりに煩いので自然植物園へ向かいました。

 花を撮影しようとしたら突然ホウジャクが吸蜜に訪れました。慌てて撮影。もう少しいいカットを撮りたかったのですが突然のことで。すぐに何処かへ飛び去ってしまいました。残念。ホウジャクはスズメガ科の蛾の一種です。長い口吻でホバリングしながら吸蜜します。

 ホウジャクが吸蜜していた花は、トリコステマ・ラナタム。南カリフォルニアとメキシコに自生する芳香性の植物です。

 クマバチ(キムネクマバチ)も何匹も訪れています。黄色い花粉がたくさん付いています。トリコステマ・ラナタムの花粉でしょう。クマバチはハナバチの仲間でオスには針がなく刺されることはありません。クマバチ(クマンバチ)は強靭な顎を持っていて枯れ木に穴を開けて巣を作ります。そこへ蜜と花粉の団子を運んで子育てをします。

 ガウラ。アカバナ科の多年草です。和名をハクチョウソウ(白蝶草)といいます。北アメリカ、メキシコ原産。

 ツマグロヒョウモンのオスがたくさん舞っていました。縄張りを維持するために占有行動をとることが知られています。

 激しい戦いの跡でしょうか、翅がボロボロです。

 ハナツクバネウツギ(花衝羽根空木)。スイカズラ科ツクバネウツギ属の園芸品種です。別名は、アベリア、ハナゾノツクバネウツギ。

 親子で昆虫採取。男の子はツマグロヒョウモンのメスを捕まえました。しばらく観察した後で放してあげました。ハンミョウの写真を見せたらすぐに「ハンミョウだ!」と。昆虫好きの様です。

 ヘリアンサスの仲間。別名は宿根ヒマワリ。原産地は北アメリカ。2m以上の大きなものもありました。

 ルリマツリ。イソマツ科ルリマツリ属(プルンバゴ属)の常緑性低木です。原産地は南アフリカ。熱帯性の花木のため、暑さには強い様です。

 ソリダゴファイヤーワークス。キク科の宿根草(耐寒性多年草)です。日本に自生するアキノキリンソウの仲間。名前の通り花火の様に咲き乱れます。

 ソリダゴファイヤーワークスのアップ。

 植物園から望む松代方面。中央に奇妙山。その奥に根子岳と四阿山。右手前にプリン型の皆神山が見えます。最高気温は32度。9月半ばとは思えないほどの暑さでした。帰りに茶臼山動物園の横を通ったのですが大人気ですね。県外ナンバーの車にもたくさんすれ違いました。

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ヤマトシジミ(大和小灰蝶)が大発生。特定外来生物のアカボシゴマダラ。クズの花にウラギンシジミの幼虫。ザトウムシ(妻女山里山通信)

2023-09-09 | アウトドア・ネイチャーフォト
 久しぶりに妻女山山系へ。7月30日以来です。この猛暑で樹液バーにはなにもいませんでした。かわりにアブとクロメマトイが大発生。では昆虫たちはどこへ行ったかというと、谷筋の渓流沿いや貯水池や沼などの周辺です。ツバメも里にはいませんでした。高原に行くとたくさん見られます。昆虫の中にも標高の高い山へ移動したものがいるはずです。最高気温はまだ30度を少し超えますが、最低気温は20度を下回る日も出てきました。

 ある開けた場所でヤマトシジミ(大和小灰蝶)が大発生していました。ノボロギク(野襤褸菊)で吸蜜しています。ノボロギクは、明治初期に渡来した欧州原産の帰化植物で、野に咲くサワギクの意味です。毒草です。ヤマトシジミの複眼には瞳の様なものが見えますが、これは偽瞳孔です。

 ヤマトシジミのメス。オスは淡い青紫色をしています。

 カントウヨメナ(関東嫁菜)で花粉を食べるコアオハナムグリ。似ているノコンギクやユウガギクはまだ咲きだしていません。野菊は他にもヨメナ、シラヤマギク、ノジギク、ゴマナなどあり同定はなかなか困難です。

 コムラサキ(小紫)の緑の実が紫に染まり始めました。ムラサキシキブ(紫式部)より実は小さいのですが、数がたくさんなります。我が家の庭にもあるのですが鳥は食べに来ません。有毒ではないのですが、食べると無味に近く美味しくありません。でも庭にあるということは、何かの鳥が山から運んできたということでしょうね。誰でしょう。

 ツユクサ(露草、鴨跖草、鴨跖)。ツユクサ科ツユクサ属の一年草。朝咲いて午後にはしぼんでしまう半日花です。おひたしなどで食べられます。水で色落ちするので友禅の下絵に使われます。
 万葉集には9首詠まれています。儚い命や移ろいやすい心の例えに使われた様です。
「月草の うつろひやすく 思へかも 我が思ふ人の 言も告げ来ぬ」大伴坂上大嬢
「月草に  衣色どり 摺らめども うつろふ色と 言ふが苦しさ」詠人知らず


 堂平大塚古墳に寄ってみました。大事な山仲間だったKさんが亡くなってもう10年。彼の友人達も高齢になって手入れが行き届かなくなりました。

 陣場平へ。クロメマトイの大群に襲われました。そこら中にいます。貝母は枯れて倒れた茎だけが少し残っています。ミンミンゼミが鳴いています。あちこちにジョロウグモの巣があります。貝母(編笠百合)の里山での群生地は日本でここだけです。見頃は4月10日から20日頃。カスミザクラ、ヤマザクラ、オオヤマザクラなどが咲いてさながら桃源郷。妻女山駐車場から登って30分ぐらい。県外からもたくさん訪れます。満開の様子は去年以前の4月のアーカイブを御覧ください。

 乱れ咲くミズヒキの花。水引は、信州飯田の伝統工芸で、全国の70%を生産しています。秋を知らせる代表的な花のひとつです。

 ミズヒキ(水引)。タデ科イヌタデ属の多年草。あまりに花が小さくてかなりアップにしないと分かりません。まだつぼみですが、開くと紅白の4つの花びら(萼)に。おめでたい花なんですが、なぜか万葉集や和歌には詠われていません。

 入り口に設置したベンチにザトウムシ。節足動物門鋏角亜門クモ綱ザトウムシ目で日本には80種類ぐらいいます。アメリカでは足長伯父さん(Daddy Longlegs)と呼ばれています。「千と千尋の神隠し」の釜爺(かまじい)のモデルであり、また「新世紀エヴァンゲリオン」のマトリエルのモデルとなっています。8本足なんですが3本ほど欠損しています。

 クサギ(臭木)の実。染色に使えるそうです。

 イチモンジチョウ(一文字蝶)。 幼虫はウツギ・スイカズラなどの葉を食べます。

 コミスジ(小三條)。羽ばたきと滑空を繰り返し軽やかに舞うチョウ。幼虫の食草はクズ、フジ、ハギ、ニセアカシアなどのマメ科植物。冬は3齢幼虫で越冬します。人の気配に敏感です。

 サンショウ(山椒)の実が色づいてきました。

 今年はシナノガキ(信濃柿・豆柿)が豊作の様です。鈴生りになっていました。この青い実を水に浸けておくと柿渋ができます。柿渋は平安時代から使われていたそうで、防虫剤や民間薬、染料として使われました。我が家では昔、虫除けのために畳の下に染み込ませた厚い和紙を敷いていました。買うと結構いいお値段がします。

 イヌザンショウ(犬山椒)の実。山椒と違っていい香りがしないので食用にはなりません。

 センニンソウ(仙人草)が満開です。今回の目的の花なんですが樹冠に咲いていてアップで撮影できません。センニンソウは、キンポウゲ科センニンソウ属に分類されるつる性の半低木(木質の多年草)。ただ、茎や葉の切断面から出る汁や濡れた花粉に触れると炎症を起す有毒植物なので、要注意です。別名は、ウマノハオトシ(馬の歯落とし)、ウマノハコボレ(馬歯欠)、ウシクワズ(牛食わず)、ハコボレ(歯欠)、ハグサ(歯草)など。毒草ゆえの名前なのでしょう。

 特定外来生物のアカボシゴマダラ。国立環境研究所のサイトによると、「“放蝶ゲリラ”による人為的な放蝶によると考えられている。」とあります。タテハチョウ科は、植物防疫法で検疫有害動物に指定されています。ゴマダラチョウやオオムラサキと競合するので、それらの減少を招く危険性があります。

 ヨウシュヤマゴボウ(マルミノヤマゴボウ)。有毒です。繁殖力がもの凄く、妻女山では林道脇に繁茂し、在来植物を淘汰しています。オオブタクサ、セイタカアワダチソウと共に駆除すべき植物です。

 クズ(葛)の花に何かの幼虫がいました。ウラギンシジミの幼虫の様です。刺激すると触覚から花火の様なフラッシュブラシを出すそうです。触覚のある方がお尻です。

 枯れ木にシュタケ(朱茸)ヒダナシタケ目サルノコシカケ科でしょうか。けっこう肉厚です。もちろん食べられません。

 妻女山展望台裏手の四阿から望む茶臼山。右奥は虫倉山。両山とも拙書で紹介しています。北アルプスは雲の向こうです。

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七色のハンミョウを求めて猛暑の茶臼山山系へ。ヨメナで吸蜜するベニシジミ。ワレモコウ、ゲンノショウコ、クマノミズキの実で初秋の趣(妻女山里山通信)

2023-09-04 | アウトドア・ネイチャーフォト
 ブルービー(ナミルリモンハナバチ)は、ノアザミが咲き終わったのでいません。そろそろハンミョウの羽化のシーズンなので生息地へ。湿った南風が入って森は酷い蒸し暑さでした。ただ千曲川の堤防上にはアキアカネの大群が舞っていました。茶臼山では桜やクヌギの紅葉が始まりました。耐え難いほど蒸し暑い日でしたが、小さな秋はあちこちに見られました。ただ10月まで気温は高めとか。9月に入っても30度以上が続きそう。今年のキノコは難しいかも知れません。たとえ雨が降っても地温が高ければ秋のキノコは出ないからです。ただ好気性の松茸はそこそこ出るかも知れません。

 ハンミョウ(斑猫)はナミハンミョウともいい、コウチュウ目オサムシ科のハンミョウ科の甲虫です。動作は機敏で、アリや蛾などの小型の昆虫を捕らえて食べます。幼虫は1年から2年の期間を過ごし、夏の終りに羽化します。周囲には羽化したばかりと思われる成虫が20〜30匹ぐらいいました。冬は土中で集団越冬します。そして、翌春に交尾産卵をします。

 大きな複眼とメタリックで鋭い大顎が目を引きます。飛び出た複眼で後方も見えるのでしょう。後ろからそっと近づいてもサッと逃げます。複眼でどういう景色を見ているかは実は確実には分かっていません。おそらく脳でひとつにまとめて魚眼レンズで見るような景色だろうとか、色はどこまで識別できているのかとか想像の世界で、当事者でないと分かり得ないことです。

 ハンミョウの幼虫も大きな顎を持ち、穴の中に隠れて獲物を襲い体液を吸います。食べ終えた昆虫は巣の外に捨てます。それをアリや他の昆虫が食べます。ハンミョウの天敵は、幼虫の初期の頃はホソツヤアリバチで、ハンミョウの幼虫に針を指して麻痺させ卵を産み付けます。やがてハチの幼虫の餌になります。成虫の天敵は肉食の昆虫(ムシヒキアブ類、ジョウカイボン類、徘徊性クモ類)や鳥ですが、この七色の体も目をくらます効果があるといわれています。

 近づくとすぐに逃げて1mぐらい先に止まります。これを繰り返すので「道教え」とか「道しるべ」とかいわれますが、撮影しようとすると逃げまくるので非常に厄介な被写体です。撮影が難しい昆虫のベストテンには必ず入るでしょう。ハンミョウの仲間には、ヒメツチハンミョウの様に猛毒を持つものがあるので絶対に触ってはいけません。

 ヨメナ(嫁菜)で吸蜜するベニシジミ(紅小灰蝶)。幼虫の食草は、タデ科のスイバやギシギシなど。翅に構造色を持っている為、角度によって銅のような金属光沢を放つ事があります。夏型(6〜9月)は春型(3〜5月)に比べて翅の表の色が黒くなります。

 久しぶりに棚田の一番上まで行ってみました。遠く拙書でも紹介の虫倉山が見えます。2014年(平成26年)11月22日22時8分ごろ発生した神城断層地震で山頂は4割が崩壊。さらにクラックが入っています。山頂直下に崩れた跡が見えます。棚田の稲は例年より早く黄金色になっています。帰りにひとつ稲刈りしてはぜかけしてある田んぼがあって驚きました。

 ワレモコウ(吾亦紅、吾木香、吾妹紅)バラ科ワレモコウ属。別名には酸赭、山棗参、黄瓜香、豬人參、血箭草、馬軟棗、山紅棗根などたくさんあります。上から咲き始めています。ミズヒキやキンミズヒキと共に、古代より愛された初秋を感じさせる植物です。
「老いを忘るる菊に、おとろへゆく藤袴、ものげなきわれもこうなどは・・・」源氏物語 42『匂宮(匂兵部卿)『吾亦紅・ワレモコウ』。
(匂宮は不老の菊、衰えてゆく藤袴、見ばえのせぬ吾木香(ワレモコウ)などという香のあるものを霜枯れの頃まで愛し続ける様な風流をしておいでになる方であった)
「吾も亦 紅なりと ひそやかに」 高浜虚子

 ゲンノショウコ(現の証拠)フウロソウ科フウロソウ属。胃腸、下痢便秘の薬草として有名です。センブリ、ドクダミなどとともに日本の民間薬の代表的なもの。

 アオイトトンボ(青糸蜻蛉)。茶臼山は棚田や溜池が多いので色々なトンボが生息します。オオアオイトトンボ、モノサシトンボ、オツネントンボも見られます。

 アキアカネ(秋茜)。真っ赤なナツアカネ(夏茜)もいました。他にはオニヤンマにシオカラトンボなども。

 クマノミズキ(熊野水木)の花序の枝は緑の実をつけてピンク色になっています。秋が深まると実は紫色から黒紫に。枝もサンゴのような鮮やかな朱色になります。蒸し暑さとクロメマトイの襲来でバテバテです。帰りに温泉に入って生き返りました。

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『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、
『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

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幸せを呼ぶ青い蜂ブルービー再び。ツクツクボウシ、ムギワラトンボ、ノシメトンボ、ジャノメチョウ。信州の里山の風景(妻女山里山通信)

2023-08-19 | アウトドア・ネイチャーフォト
 二つの台風の襲来で、猛暑なのに天候に恵まれず、約2週間ぶりの撮影に茶臼山山系へ。気温は28度でしたが前日に豪雨があったのでもの凄い湿気です。加えてアブにしつこく付き纏われ、なかなか厳しい撮影となりました。撮影時間は1時間が限度でした。その間に撮影チャンスはたった2回。

 ノアザミで吸蜜するブルービー(Blue Bee)。正式にはナミルリモンハナバチ(波瑠璃紋花蜂)。ハチ目ミツバチ科の昆虫です。全国的に減少傾向で、県によって絶滅危惧Ⅰ類、絶滅危惧Ⅱ類、準絶滅危惧種に指定されています。長野県では準絶滅危惧種。

 今年はノアザミが早く咲いてしまったので、ほとんどが既に種になっています。今回も咲いていたのは4つだけ。それも離れているので全部を観察するのは無理。そこで、ここに来るだろうという一輪を決めて観察。すると予想通り来ました。

 ナミルリモンハナバチは、コシブトハナバチ類(スジボソフトハナバチ)やケブカハナバチ類の巣に寄生(労働寄生)し、幼虫は巣に貯えられた花粉などを横取りして育つという珍しい生態をしています。寄生のために卵の数が制限されることも数が増えない理由の様です。

 ぶれたカットですが長い舌がはっきりと分かるので載せました。ニホンミツバチ、セイヨウミツバチも同じ様な長い舌を持っています。舌は蝶の口吻の様な円筒形の筒状ではなく、もっと複雑な構造をしています。「ミツバチの体」で検索を。動画は3つ前の記事の最下部とInstagramで見られます。

 足元にいたツクツクボウシ。ミンミンゼミと共に晩夏を象徴するセミです。周りでアブラゼミ、ミンミンゼミと共にたくさん鳴いています。以前ブログでアップしましたが、朝早く森を歩くと夜に羽化したセミを拾って歩くことができます。そういう森を知っていないとできませんが。

 ムギワラトンボ(麦藁蜻蛉)・シオカラトンボのメスと思ったのですが、腹部の第8節が横に膨らんでいないのと複眼が青いのでオスの未熟でしょうか。
。です。来る途中の千曲川の堤防上には無数のアキアカネの未熟が舞っていました。1000m以上の高原にいたものが下りてきたのです。猛暑ですが確実に秋は近づいています。

 キンミズヒキ(金水引)があちこちで咲いています。バラ科キンミズヒキ属の多年草。これもミズヒキと共に秋を感じさせる花です。止血、止瀉、消炎、強壮の薬草です。

 イチモンジセセリ(一文字挵)。幼虫の食草は、イネ科、カヤツリグサ科の葉。成虫はアザミ、キクやハギ類で吸蜜します。

 ノアザミ(野薊)で吸蜜中。

 ジャノメチョウ(蛇目蝶)も吸蜜中。人の気配に敏感なのでお食事中とかでないと撮影は難しい。周りには何頭も舞っていて縄張り争いをしています。

 ノシメトンボ(熨斗目蜻蛉)。熨斗目(のしめ)は、江戸時代に、武士が小袖の生地として用いた絹織物のこと。赤ん坊のお宮参りの着物。熨斗目蜻蛉は、腹部の黒い斑紋が熨斗目模様に似ていることが名前の由来とか。アキアカネと似ていますが、翅の先端が褐色なので見分けがつきます。

 麓は35度ぐらいでしょうか。ここは29度。下から吹き上げる風が快適です。左は五里ヶ峯。中央の中腹に森将軍塚古墳。麓にある古墳館は必見です。右奥遠くには雲に隠れた蓼科山。

 かなり汗をかいたので温泉へ。田んぼの向こうには、さっきまでいた茶臼山山系。その奥は陣場平山から富士ノ塔山への峰。右奥は戸隠富士と呼ばれる高妻山。

 帰りに妻女山の陣場平へ久しぶりに登ってみました。やはり何もいない樹液バー。しかし、大量のアブがいて車外に出られません。クロメマトイも凄い。カブトムシやオオムラサキ、アオカナブンやミヤマカミキリ、オオスズメバチもまったく見られません。昨年に続き異常な状態が今年も。関東で業者などが大量に捕獲するためにライトトラップや手作り樹液をしたり樹木を傷つけることがニュースになっていましたが言語道断。私も樹に傷をつけますが、これは昆虫の餌を確保するため。薪を取るような木山をしなくなったため、自然のままでは樹液が足りず多くの昆虫が餓死してしまうのです。そのため樹に傷をつけ樹液が出る様にしています。捕獲のためではありません。

 陣場平の入り口へ。ここも大量のアブがウィンドウに体当たりしてきます。陣場平の様子を見たかったのですが出られません。こんなことは初めてです。昆虫の激減が猛暑が原因かは分かりません。4月の度重なる遅霜も原因かも知れません。いずれにせよ帰るしかありません。現在、妻女山展望台を修理中なので暫くの間登れません。

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ナミルリモンハナバチ(波瑠璃紋花蜂)。幸せを呼ぶ青い蜂ブルービーを求めて茶臼山山系へ。ハンミョウ。ツマグロヒョウモン、ウバタマムシ(妻女山里山通信)

2023-08-06 | アウトドア・ネイチャーフォト
 ナミルリモンハナバチ(波瑠璃紋花蜂)。「幸せを呼ぶ青い蜂」といわれ、ブルービー(Blue Bee)」の愛称を持ち、非常に希少な種で、長野県では準絶滅危惧種に指定されています。
 今回は36度の猛暑の中、3日間撮影に出かけました。理由は簡単でなかなかいいカットが撮れなかったからです。相手が自然なので、気まぐれなブルービーはもちろん天候やノアザミの状態などが思うようには行かないのです。気温は27度で麓より6度ぐらい低く時折涼しい風も吹きますが、撮影時は炎天下に出るので厳しいです。

 ナミルリモンハナバチは、学名をThyreus decorusといい、ハチ目ミツバチ科ルリモンハナバチ属の昆虫です。成虫の体長は雄10~13mm、雌11~14mm。分布は、日本(本州・四国・九州・大隅諸島)・台湾・東南アジア・中国・朝鮮半島・極東ロシアということなんですが、本州でも確認されているところはごく僅かです。ルリモンハナバチ(瑠璃紋花蜂)ともいいます。

 二匹が吸蜜中。実はもう一匹います。

 特徴の一つに「労働寄生」があります。 他の花蜂の巣に侵入して卵を産み付け、幼虫は宿主が保存する餌を横取りして成長するもので、労働寄生の対象となる花蜂は、コシブトハナバチ類やケブカハナバチ類といわれていますが詳細は不明です。

 長い舌を差し込んで吸蜜しています。動画はInstagramに2本アップしています

 生息地の消滅や減少、宿主の生息や蜜源の減少により個体数が著しく減少しており、絶滅危惧II類に指定されています。

 200mほど離れたハンミョウのポイントへ。ハンミョウ(斑猫)はナミハンミョウともいい、コウチュウ目オサムシ科のハンミョウ科の甲虫です。大きな複眼と鋭い大顎が目を引きます。動作は機敏で、アリや蛾などの小型の昆虫を捕らえて食べます。成虫は夏の終りに羽化し、冬は土中で集団越冬します。そして、翌春に交尾産卵をします。

 近づくとすぐに逃げて1mぐらい先に止まります。これを繰り返すので「道教え」とか「道しるべ」とかいわれますが、撮影しようとすると逃げまくるので非常に厄介な被写体です。しかもまだ一匹しかいないので警戒心がマックス。旧盆をすぎると個体数は増えるはずです。

 モノサシトンボ。モノサシトンボ科モノサシトンボ属。文房具の物差しの様にメモリが入っているトンボ。細くて黒い部分が多いので目立たなく見つけにくいイトトンボなので観察力が必要です。

 前日に激しい雨が降ったためか三日目はブルービーは一匹が短時間現れただけ。そこで離れた茶臼山自然植物園の最上部へ下りてみました。葉の付け根に珠芽(むかご)が無いのでコオニユリ。コオニユリの百合根は非常に美味しく道の駅で売られていたりしますが高価です。猛暑で昆虫がいません。

 ピラミッドアジサイ。日本の山に自生するノリウツギの仲間。和名をミナヅキ(水無月)といい中国と日本が原産地だそうですが、花房が全て装飾花化した園芸品種だそうです。背が高く見栄えがします。

 ピラミッドアジサイに空蝉(うつせみ)が。大きさと触覚の根元から3番目の節が2番目の節の1.5倍の長さなのでアブラゼミです。ミンミンゼミはまだ出ていません。

 ツマグロヒョウモンのメスが一頭。他にはモンキチョウ、コミスジ、オニヤンマが見られただけでした。途中の水たまりで翅の表がラベンダーブルーの大きいシジミチョウの仲間が二頭舞っていました。形や大きさはウラギンシジミですが、色が違います。同定できず。昨年は見られたオオムラサキは樹液バーにもいませんでした。ツクツクボウシとアブラゼミの合唱。

 苔むした切り株に多孔菌科のキノコ。ベッコウタケでしょうか。生木に発生すると倒木を引き起こす厄介なキノコです。危険なので自治体によっては見つけたら報告を呼びかけるところもあります。

 赤松の切り株にウバタマムシ(姥玉虫・姥吉丁虫)。幼虫は枯れた松の木を、成虫は松の葉を食べます。4センチぐらいある大型のタマムシ。松の木の樹皮に擬態した体が渋くて美しい。

 ハキダメギクなどと共に可愛そうな名前の植物に必ずあげられるヘクソカズラ(屁糞葛)。別名は、ヤイトバナ(灸花)、サオトメバナ(早乙女花)、ウマクワズ(馬喰わず)。万葉集では屎葛(くそかずら)ですが、後年屁が追加されました。しもやけ、ひび、あかぎれなどの外用民間薬。
「そうきょうに 延ひおほとれる屎葛 絶ゆることなく 宮仕えせむ」 高宮王『万葉集』(巻十六、3855)
(そうきょう(皂莢・ジャケツイバラ)に絡みながら延びてゆくクソカズラ、その蔓のように絶えることなくいつまでも宮仕えしたいものだ)


 茶臼山自然植物園から妻女山山系を望む。麓は36度ですが山上は28度。日陰は吹き上げてくる風が涼しいのですが、日向は地獄のような暑さです。

ナミルリモンハナバチ 幸せを呼ぶ青い蜂ブルービー 230803


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猛暑の妻女山。何もいない樹液バー。クロメマトイの猛攻撃で退散。土用の丑の日ということで伊賀筑後オレゴンの手打ちうどん(妻女山里山通信)

2023-07-31 | アウトドア・ネイチャーフォト
 猛暑日が続く信州です。高原へ撮影に行きたいところですが、なにせ長野県は全国一ガソリン代が高いのです。県境の人は皆隣の県に給油に行っているそうです。ガソリン税は二重課税だし政府の無策には本当に腹立たしい。ということで久しぶりに妻女山山系へ。麓よりは3、4度低いのですが、今回はクロメマトイの猛攻撃に遭い1時間足らずで退散しました。とにかく雨が降らないので山はカラカラです。

 開けた場所でヤマトシジミが吸蜜中。花は蕾が立っているのでヒメジョオン(姫女苑)です。牧野富太郎博士が命名したハルジオン(春紫苑)は、寝ているし葉の根元が茎を巻いています。どちらも侵略的外来種ワースト100です。陣場平では見つけたら全部抜き取ります。

 コバギボウシ(小葉擬宝珠)。リュウゼツラン亜科ギボウシ属の多年草。一日でしおれる一日花なので、ちょうどいいところに出会えました。擬宝珠の名前の由来となった蕾も見られました。

 陣場平へ。もの凄い数のクロメマトイ(ヒゲブトコバエ)に取り憑かれました。長いタオルを振り回しながら歩きます。油断すると目に飛び込んできます。涙に含まれるタンパク質を狙っているのです。クロメマトイにはオニヤンマくんは役立ちません。ハッカオイルを塗って行ったのですが、効果ありませんでした(涙)。メマトイはマダラメマトイやカッパメマトイなど10種類ぐらいいるそうです。

 貝母(ばいも・編笠百合)はすべて種が飛んでいました。来年の発芽が楽しみです。

 セリバオウレンは葉がツヤツヤしています。株が大きくなってくれるといいのですが。

 ご天上の樹液バーへ。樹液はいつになくたっぷりと出ているのですが昆虫がいません。一種類の昆虫が激減は経年変化であるのですが、この様にすべての昆虫がいないというのは、極めて異常です。5月には咲くはずのウツギ、エゴノキ、ネジキの花が咲きませんでした。気象的なこともあるのかも。ただ3、4年前から明らかに昆虫が減っています。何が起きているのか非常に心配です。今年は3キロ離れた茶臼山の昆虫も減っています。

 2020年7月下旬の同じクヌギです。オオムラサキのメス、カブトムシのオス、アオカナブンがいます。

 2013年7月下旬の同じクヌギです。オオムラサキのメス2頭が吸蜜中、そこへオス2頭が忍び寄っています。オオスズメバチとカブトムシとアオカナブン。他のクヌギではオオムラサキのオスのグループが。他にはカナブン、ミヤマカミキリ、クジャクチョウ、スミナガシ、ヒメスズメバチ、コガタスズメバチ、チャイロスズメバチなどにハエの仲間もたくさんいました。
 2014年の千曲市による松枯れ病のネオニコチノイド系農薬の空中散布で千曲市側の昆虫は絶滅しました。中止になってから2年ぐらいで長野市側から昆虫が移り始め復活したかに見えたのですが、2020年頃から激減し始めました。理由は不明です。
2014年7月の記事:樹液バーとネオニコの記事が何本もあります

 ヌルデ(白膠木)の蕾。ウルシほどではありませんが、かぶれる人もいます。別名は、フシノキ。生薬名は、塩麩子(えんふし)/塩麩葉(えんふよう)/五倍子(ごばいし)。小葉と小葉の間に翼(つばさ)があるのが特徴。 ヌルデにできる虫こぶ(ゴール)のことを五倍子といいます。これは、ヌルデの若芽にアブラムシ科のヌルデノミミフシが寄生し、枝の翼に卵を産み付け、それが耳状にふくれたものです。
 五倍子は、タンニンの含有量が多く、染め物では空五倍子色(うつふしいろ)とよばれる伝統色として用いられます。古くはお歯黒などにも使われました。
「足柄の 吾を可鶏山(かけやま)の かづの木の 吾をかつさねも かづさかずとも」(詠人知らず) 万葉集(巻14)東歌 *カヅノキ(可頭乃木)=ヌルデ
(足柄の地の私を思うという名の山のカジノキのように私をかどわかして欲しい)


 ヨウシュヤマゴボウ(マルミノヤマゴボウ)。有毒です。繁殖力がもの凄く、妻女山では林道脇に繁茂し、在来植物を淘汰しています。オオブタクサ、セイタカアワダチソウと共に駆除すべき植物です。

 タケニグサ(竹似草)。毒草です。茎が中空で折ると黄色い汁が出てきます。これが有毒なのですが、皮膚病、たむし、みずむしなどの薬で、患部に直接塗るのだそうです。以前除草の際に触れてかぶれたことがあるので要注意。江戸時代にはハエ殺しの薬として便槽に入れたとか。

 振り払っても叩いてもまとわりつくクロメマトイに辟易。昆虫もいないので帰ることにしました。松代方面の眺め。積乱雲は発達していません。今日も雷雨は無いでしょう。

 西の眺め。北アルプスは雲の中。右に茶臼山。その右奥に虫倉山。いずれも拙書で紹介しています。リニューアルした茶臼山動物園は大人気の様です。帰りに桃の集荷場の横を通りましたが、買いに来た車で満車でした。川中島白桃は最盛期です。

 妻女山松代招魂社へ。県外ナンバーの車が3台ほど訪れていました。以前なら今頃はたくさんのオオムラサキが神社の切妻の壁に止まって休んでいたものです。今年はオスメス一頭ずつしか見ていません。

 土用の丑の日ということで、バンドエイドのガーゼの部分ぐらいの小さなうなぎが入った巻き寿司を買いましたが、うがつくものということで夕食は手打ちうどんを。友人が作った幻の小麦の伊賀筑後オレゴンで。麺は白ではなく薄いローズグレー。味は濃厚かつ芳醇。一般的なうどんとは比べられないほど。つけ汁の具は、この時期ならチチタケなんですが雨が降らないもので、今回は昨秋に採ったジコ坊(ハナイグチ)と油で焼いた小森ナス。出しは塩皮鯨、鰹粉、炒り粉、本味醂、醤油で作って冷やしておきます。薬味は父手作りの七味唐辛子。伊賀筑後オレゴンはネットで買える様なので、うどん好きのかたはぜひお試しください。

 信州の郷土料理のひとつ「夏野菜のくじら汁」。夏野菜は、信州伝統野菜の小森ナス、ボタンコショウに、カボチャ、モロッコインゲン。煮汁は、上のうどんつゆと同じです。塩皮鯨は、しっかり塩漬けの固いものと、ブロックの柔らかいものを使っています。おそらくゴンドウクジラとミンククジラだと思います。左上のキュウリは、ポン酢醤油と白出汁に、業務スーパーの人気商品・姜葱醤(ジャンツォンジャン)で漬けたもの。これやみつきになります。
 敗戦後の食糧難の時代、日本人を栄養面から救ったのが鯨でした。1年間に世界中でクジラが食べるエサの量は、3~5億トンだそうです。鯨保護がなされると同時に鯨食害論もあり、世界の海に散らばる鯨の生態調査は非常に難しいものの様です。興味のある方は、Wikipediaのクジラで検索を。
 昔、私がいた編集プロダクションで、C.W.ニコルさんにインタビューしたことがあり、著書の「勇魚」にサインしていただきました。近代日本の黎明と西洋との出会いを紀州太地の鯨刺しの青年の夢と野望を軸に描いた、波瀾万丈、近来まれに見る青春冒険小説傑作!という宣伝文句でした。非常にいい小説です。

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猛暑の中を茶臼山へ。ヒメアカネ、シオカラトンボ、アオイトトンボ、ノシメトンボ。ハンミョウを初見(妻女山里山通信)

2023-07-26 | アウトドア・ネイチャーフォト
 最高気温の予報が35度の猛暑日、3週間ぶりに茶臼山へ撮影に向かいました。10時過ぎには標高370mの麓は30度ですが、りんご畑の道を登って標高700mの駐車場に着くと気温は26度。時折涼風も拭き上げてきます。しかし、直射日光は痛いほど。撮影の時以外は日陰に避難します。アブがもの凄いのですが、そう思って虫回避の服装。紺と白のボーダー柄のTシャツに白いアームカバー、白いパンツ。シマウマのボーダー柄には虫よけの効果があるそうで、牛に白い縞を描いたら虫が70%減ったそうです。今回も取り憑かれませんでした。白Tは目一杯集られます。黒は蜂に襲われます。山へ行くときはマリンファッションがいいのです。

 アキアカネより少し小さなトンボ。ヒメアカネ(姫茜蜻蛉)。マユタテアカネやマイコアカネと似ているのですが、眉は無いし顔も青っぽくありません。

 腹部の先端の形状からメスでしょう。トンボの翅は、細いパイプ状の翅脈(しみゃく)と、透明な薄い膜でできていますが、全体重の2パーセントほどしかありません。

 トンボの翅は4枚が複雑な動きをしてホバリングや少しなら横移動、後退もできます。筋肉が4枚の翅の基部につながっていて、それぞれを別々に動かせる直接飛翔筋型昆虫です。蜂は筋肉が翅ではなく外骨格につながっていて、筋肉を交互に収縮させて、外骨格全体を変形させて飛ぶ間接飛翔筋型昆虫です。

 シオカラトンボ(塩辛蜻蛉)。オスは成熟すると青くなります。メスはならないのでムギワラトンボと呼ばれます。腹部の第8節が横に膨らんでいる様に見えるのでメスでしょうか。

 アップにするとなかなか獰猛な面構え。肉食で蝶や蛾、ガガンボやハエや蚊などを食べます。成熟したオスは白く粉をふいた様になりますが、紫外線を反射する働きがあるそうです。

 アオイトトンボ(青糸蜻蛉)。

 メタリックな色が美しいトンボです。

 茶臼山は棚田や溜池が多いので色々なトンボが生息します。オオアオイトトンボ、モノサシトンボ、オツネントンボも見られます。オニヤンマも2匹いましたが、餌を捕らえた時しか止まらないので、今回は撮影できませんでした。

 ノシメトンボ(熨斗目蜻蛉)。熨斗目(のしめ)は、江戸時代に、武士が小袖の生地として用いた絹織物のこと。赤ん坊のお宮参りの着物。熨斗目蜻蛉は、腹部の黒い斑紋が熨斗目模様に似ていることが名前の由来とか。アキアカネと似ていますが、翅の先端が褐色なので見分けがつきます。

 少し早すぎるかなと思いましたが、ハンミョウの出る場所に行ってみました。しばらく待っていると一匹が出現。しかし、すぐに何処かに行ってしまい、満足な写真は撮れませんでした。8月に期待します。

 ノアザミ(野薊)。総苞が粘るのでこの後に咲き出すノハラアザミと区別ができます。この総苞によくザトウムシの脚や小さな昆虫が捕らえられているのを見ます。食虫植物ではないのになぜ粘るのかと思いましたが、おそらく受粉に寄与しないアリから守るためではないかと思います。

 先に咲いて散ったノアザミが種をつけています。風が吹く度にケサランパサランが飛んでいきます。

 ノアザミに来たのはヒラタアブ(扁虻)の仲間。

 名前の通り平たいアブ。腹部の文様がはっきりとは見えませんが、クロヒラタアブかも知れません。

 ノアザミで吸蜜するジャノメチョウ(蛇目蝶)。お目当ての絶滅危惧種のナミルリモンハナバチが現れないので帰ることにしました。まだ少し早すぎるのかも知れません。撮影時は息を止めているのですが、さすがにこの暑さでは頭がボーっとしてきました。

 ハルジオンで吸蜜するスジグロシロチョウ(筋黒白蝶)。オスはレモンの様な香りのする香嚢という袋を持っています。

 マメコガネ(豆黄金)。幼虫はブドウ、バラ、ヤナギ、そしてクズやマメ類などの根を食べ、成虫はそれらの葉を食べることから害虫として知られています。北米ではジャパニーズ・ビートルと呼ばれる外来の重要害虫。鳥やスズメバチが天敵ですが、土壌中のバチルス・ポピリエという乳化病菌が幼虫に寄生するため大量発生を抑えているということです。つまり、農薬の空中散布などで土壌汚染されて細菌が死ぬと大量発生の可能性もあるわけです。

 左奥に冠着山(姨捨山)。正午前、山上でも30度を越えています。ただ3時を過ぎると下がり始め、5時以降は涼しい北風が吹き始めるのでなんとかしのげます。夕立が降ると気温は一気に10度ぐらい下がるのですが、高気圧が強すぎて小さな夕立しか降りません。猛暑は信州の高原がいいですね。

 暑いので冷や汁。鯖の水煮缶詰、キュウリ、木綿豆腐、青紫蘇、すり胡麻、手作り信州糀味噌、業務スーパーの人気商品・姜葱醤(ジャンツォンジャン)。バックの手ぬぐいは、朝ドラ「らんまん」のモデル牧野富太郎と関係の深い南方熊楠の粘菌(変形菌)。

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『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。大学や市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
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妻女山里山デザイン・プロジェクトの除草作業。昼は絶品パエリアで。原因不明で激減した昆虫が気がかり。スケバハゴロモ(妻女山里山通信)

2023-07-22 | アウトドア・ネイチャーフォト
 貝母(ばいも:編笠百合)の球根の移植作業以来の妻女山里山デザイン・プロジェクトの作業です。今回は除草がメインです。農作業で忙しいメンバーもいるので、今回は4人。梅雨明け間近で蒸し暑く、クロメマトイに纏わりつかれてなかなか厳しい作業です。まずは安全第一で。信州も梅雨明けしました。

 まず長坂峠の除草。ノイバラとススキ、帰化植物のヨウシュヤマゴボウを刈ります。オオムラサキの幼虫が食するエノキが何本かあるのですが、樹下と周囲が藪にならない様に除草します。藪にするとイノシシなどの隠れ場所になってしまいます。また、冬期に幼虫が落ち葉の下に潜り込んで春を待つのですが、藪になると不可能です。ここは、昭和40年ぐらいまでは谷の下まで桑畑や果樹園でした。このすぐ左に東風越えという旧道があります。江戸時代、千曲川が洪水のときには松代藩の大名行列が越えた峠でもあるのです。

 ヨウシュヤマゴボウはヤマグワで根っこ深くえぐり土を被せます。気温は24度ですが、すぐに喉が渇ききつい作業です。

 陣場平のインセクトホテル。制作者が観察していますが、一番活躍するのは冬です。成虫で越冬する昆虫のホテルになります。

 陣場平ではオオブタクサを探して抜き取ります。昨年と前回の作業で徹底的に抜いたので激減しましたが絶滅はしていません。里山保全は帰化植物との戦いでもあるのです。貝母の種はほとんどが弾け飛びました。来年4月の満開が楽しみです。

 作業は11時で終わり、Kさんのログハウスを借りて昼食。まず掃除をしました。今回は久しぶりにパエリア。アルゼンチン赤エビ、ムール貝、ホタテ、タコ、マジックソルトに漬けた鶏肉、紫タマネギ、スナップエンドウ、ピーマン、バジルが具です。なんか米がアルデンテ過ぎましたが、美味でした。岸田売国奴政権、ドリームモータース事件、長野市や須坂市、千曲市の再開発の現状やら、グルメ情報やら、パルセイロの話、私がアマゾン放浪で何度も死にかけた話と話題はつきません。下界は31度ですが、山上は24度。まったりした時が流れました。

 ログハウスの階段が腐っていたので修理してくれました。さすがプロです手際が良い。山仲間で友人だった持ち主が亡くなって10年。家族もほとんど訪れなくなったので、私は撮影のたびに訪れるようにしています。人の気配や臭いがなくなると野生動物がいついてしまうからです。

 2時半ごろお開きに。下界はまだ暑いので息子と拙書の扉にもなっている倉科の三滝に行きました。いやあ涼しいです。この夏は猛暑というので暑い日はここに来て椅子とテーブルと食べ物と本を持って来ようと思いました。たまにツキノワグマも出ますが。

 ナツアカネ(夏茜)かアキアカネ(秋茜)が出現しました。ナツアカネ(夏茜)だと真っ赤になります。ただ未成熟だとこんな色です。区別できる胸部の横の黒い帯がちゃんと確認できなかったので、確実な同定はできませんでした。高校時代は、赤とんぼで校庭の空が真っ赤になるほどでしたが、もうそんな光景は見られません。

 マドガ(窓蛾)。しっかり開張しても12-18ミリぐらいの小さな蛾。幼虫の食草はボタンヅル。

 ニイニイゼミかヒグラシの空蝉(うつせみ)、抜け殻です。全体に艶があって、触覚の4番目の節(せつ)が3番目より長いのでヒグラシ(日暮)ですね。夕方になると山の方から、「カナカナカナカナ‥」と哀調のある鳴き声が聞こえる様になりました。アブラゼミも見ましたが、全体にまだ数は少なめです。
「ひぐらしは 時にと鳴けども 片恋に たわや女(め)我は 時わかず泣く」 作者不詳 万葉集 巻10-1982
 (ひぐらしは時間を決めて鳴くけれど、片想いに悩んでいる弱い私は、いつも泣いています)


 樹液バーには何もいません。千曲市のネオニコチノイド系農薬の空中散布が中止されて全滅した昆虫が2年で復活し始めたのですが。ここ2、3年ほど昆虫が激減しています。原因は不明です。異常です。長野県、長野市、千曲市も私の様に定点観測をしていないので知らないはずです。梅雨明け後にまた続けて観察します。

 イチモンジチョウ(一文字蝶)。 幼虫はウツギ・スイカズラなどの葉を食べます。

 シオカラトンボ(塩辛蜻蛉)。尾部の形からオスでしょう。オオムラサキのメスを一頭確認しました。少ないです。トンボは不退転の勝ち虫として戦国武将に好まれました。兜の前立てに使われましたが、有名なのは前田利家と本田忠勝、武田信玄の武将、板垣信方でしょう。

 ヤマハギ(山萩)が咲き始めました。花枝が長いのが特徴です。古名は、芽子、鹿鳴草など。古くから愛された花で、秋の七草。万葉集には142首詠まれています。鹿が男性の象徴で、芽子(萩)が女性の象徴とされたからでしょうか。鹿が萩の花の匂いを好むという説もあります。左下にアリが取り付いている何かの蛹が見えます。大きさから、おそらくツバメシジミかルリシジミだと思います。
「わが岡に さを鹿来鳴く 初萩の 花妻どひに来 鳴くさを鹿」大伴旅人 万葉集 巻8-1541
 (我が岡に牡鹿が来て鳴いている。萩の初花のような美しい妻を求めて牡鹿が鳴いています)


 載せ忘れたので追加します。除草前に息子のヤマグワに珍しい虫が。スケバハゴロモの幼虫です。カメムシ目でセミやカメムシの仲間です。桑が食草で、昔はこの辺りは桑畑で、現在も山桑があるので今の時期はけっこう見られます。飛んできたのではなく、綿毛のようなしっぽで風に乗ってヤマグワの柄に止まった様です。

 2012年8月に妻女山で撮影したスケバハゴロモの成虫です。成虫は翅が透明で儚く美しい。ほかには似ているベッコウハゴロモもいます。

 松代方面の眺め。帰郷して10年前ぐらいは妻女山でも親子連れでカブトムシや昆虫採取に来た人がいました。ここ数年はまったく見なくなりました。なぜだか分かりますか。親の世代が山遊びや川遊びをした経験がないのです。刃物や火を使った経験もない。キャンプブームとかアウトドアブームとかいわれますが、実態はこんなものです。自然は子供だろうと未経験者だろうと忖度はしません。里山、川、海、野原や湿地帯、観光地。どこだろうと正しい知識と経験がないと大怪我をするか最悪死にます。このブログや拙書ではなるべくそういう知恵やリテラシー(読解力)を記するようにしています。

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万葉集にも詠われた合歓の木の花。天女の羽衣雪ノ下。山紫陽花と虫取り撫子。ミナミヒメヒラタアブ、ヤマトシジミ、ベニシジミ。(妻女山里山通信)

2023-07-04 | アウトドア・ネイチャーフォト
 梅雨の晴れ間。前日も晴れでしたがかなりの降雨だったので翌日にしました。信州の里山は葉が生い茂り鬱蒼としてきました。鞍骨山に向かうという方と邂逅。しばらくお話をしました。淡竹の筍の季節が終わったので鏡台山からツキノワグマはもう下りてきませんが、オオスズメバチやチャイロスズメバチは要注意。万一刺されたときに備えてポイズンリムーバーは必携です。イノシシのオスも油断できません。運が良ければニホンカモシカに出合えるでしょう。

 ネムノキ(合歓木、合歓の木)マメ科ネムノキ亜科の落葉高木。夜になると小葉が閉じて垂れ下がる就眠運動を行うことで眠る木。
「昼は咲き 夜は恋ひ寝(ぬ)る 合歓木(ねぶ)の花 君のみ見めや 戯奴(わけ)さへに見よ」 紀女郎(きのいらつめ) 『万葉集』巻八1461
(昼に咲いて、夜には恋しい想いを抱いて寝るという合歓の花を私だけに見させないで。君もここに来て見なさいな):紀女郎が大伴家持に贈った歌ですが、紀女郎は年上の人妻で、戯奴というのは目下の人を呼びかける言葉だそうです。人妻が若者をからかったのか、誘ったのか。背景を知ると、なんとも意味深な歌です。

 ネムノキは高さ10m以上になります。花は葉の上に咲くので、下からはよく見えません。ここは林道下の斜面に根本があるので間近で見られます。化粧の刷毛の様でもあり、線香花火の様でもあり。繊細な花です。なんとも形容し難いかすかに甘い香りがします。赤松と同様に排気ガスには弱く、我が家の山の大木は高速道路ができたら数年で枯れました。葉は合歓皮(ごうかんひ)といって漢方薬です。利尿、強壮、鎮痛、腰痛、打ち身、腫れ物、水虫、手荒れ、精神安定などに効くそうです。貝原益軒は「この木を植えると人の怒りを除き、若葉を食べると五臓を安じ、気をやわらげる」と記しています。
「象潟(きさかた)や 雨に西施(せいし)が ねぶの花」松尾芭蕉 西施は、中国の春秋時代の呉を滅ぼした傾国の美女。その越に滅ぼされた呉のエリートたちが日本に渡来して弥生時代を作ったのです。その後、越も滅ぼされ、また日本に渡来します。詳しくは下のリンク記事を。
中国正史の書を読む梅雨空の好日。『中国正史 倭人・倭国伝全釈』『中国正史の倭国九州説 扶桑国は関西にあった』『西暦535年の大噴火』(妻女山里山通信)
「合歓咲く 七つ下りの 茶菓子売り」小林一茶 江戸の八丁堀の合歓の木が咲く小腹が空く午後4時頃に、茶菓子売りの声が聞こえる様。どんな茶菓子だったのでしょう。茶饅頭か、夏だから水菓子か。

 ヤマアジサイ(山紫陽花)。別名は、サワアジサイ。周辺は装飾花で、中心部は両性花。ガクアジサイに比べると、花の色が色々あります。万葉集の二首。
「言問はぬ木すら味狭藍(紫陽花) 諸弟(もろと)らが練の村戸(むらと)にあざむかえけり」(大伴家持 巻4 773)
  (恋を語らない木ですら、紫陽花のように移ろいやすい。巧みな言葉に私は騙されてしまいました。)
「味狭藍(紫陽花)の 八重咲く如 やつ代にを いませわが背子 見つつ思はむ(しのはむ)」(橘諸兄 巻20 4448)
  (紫陽花が八重に咲くように、ますます長い年月を生きてください。紫陽花を見ながらあなたをお慕いします。)

 ミナミヒメヒラタアブがドクダミで吸蜜しようとホバリング。これは複眼がくっついているのでオスですが、体長が8-9ミリしかないので、まず見つけるのがひと仕事。小さすぎて羽音もしません。胸部と腹部の間の両側に小さなヘラ状の突起が出ています。昆虫は4枚の翅を持っていますが、ハエ目の昆虫は2枚です。これは後翅が退化して平均棍という飛翔の際にバランスをとるための器官に変化したものです。

 ユキノシタ(雪の下・虎耳草・鴨脚草・鴨足草・金糸荷)ユキノシタ科ユキノシタ属。羽衣を着た天女の様な可憐な花です。切り傷の化膿、やけど、中耳炎、扁桃腺、腫れ物、健胃、解毒、解熱、鎮咳、心臓病、腎臓病などの薬草です。葉は天ぷらで。もちもちとした歯ごたえで特に美味でもありませんが、体には良さそう。

 子供の頃はネバネバ草と呼んでいました。ムシトリナデシコ(虫取り撫子)ナデシコ科の越年草。別名は、ハエトリナデシコ、コマチソウ、ムシトリバナ。ヨーロッパ原産の帰化植物で、江戸時代に観賞用として移入されました。学名 Silene armeria Sileneのシレネは、ギリシャ神話の酒の神バッカスの養父の名にちなむもの。茎の茶色の部分が粘るのですが食虫植物ではなく、受粉することなく密だけ食べに来るアリを防ぐものといわれています。

 カタバミにヤマトシジミ(大和小灰蝶、大和蜆蝶)。幼虫の食草がカタバミなので、その周辺で見られます。陣場平へも行きましたが何もいません。そこで急遽、茶臼山自然植物園へ向かうことにしました。最近リニューアルして大人気の茶臼山動物園のゲートの横を進んで植物園の最上部にある駐車場へ。ここは穴場です。

 茶臼山自然植物園のイングリッシュガーデンの様な一角。個人的にはこういうガーデンをトップクラスのガーデナーを呼んでもっと大きく作って欲しいと思います。訪れる人も増えるでしょう。今日は、なかなか蝶や甲虫が見られません。オオムラサキもいませんでした。オオヒカゲとコミスジぐらい。たくさん咲いている白い花は、ガウラといい北アメリカ南部原産。和名は、白い蝶が飛んでいる様なことから白蝶草。

 やっと見つけたのはルリシジミ(瑠璃小灰蝶)。ヤマトシジミに似ていますが、目が真っ黒です。翅の表面は水色から明るい青紫色。瑠璃色ということでルリシジミ。春先から晩秋まで、山地から田畑、人家周辺でも見かけます。幼虫はバラ科、マメ科、ブナ科植物の蕾や花を食べます。

 フランスギク(仏蘭西菊)で吸蜜するベニシジミ(紅小灰蝶)。 幼虫の食草は、スイバ、ギシギシなど。地表近くを飛び、わりとすぐに止まるので撮影しやすい蝶です。

 メスグロヒョウモンのオスでしょうか。それともオオウラギンスジヒョウモンのオスでしょうか。ちょっとこのカットでは同定できません。ツマグロヒョウモンのメスも舞っていましたが撮影できず。

 これはまた随分と翅の色が抜けたヒョウモンチョウの仲間。コヒョウモンかしら。違いますね。同定不可。

 上の2つが吸蜜していたのがこの植物。クガイソウに似ていますが、ヒメルリトラノオ。ヨーロッパ~北アジア原産のベロニカ・スピカータの小型品種です。

 キキョウ(桔梗)キキョウ科の多年生草本植物。根を生薬で桔梗根といい、去痰、鎮咳などの薬効があります。夏から咲きますが秋の七草で、山上憶良の「七種の花」の歌「萩の花 尾花葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花」の朝顔が桔梗であるとの説があります。

 振り返ると丸太小屋の展望台(休憩所)。手前の黄色い花は、北米原産のルドベキアの一種。草丈が180センチぐらいあります。別名は松笠菊。

 展望台から見る善光寺平。左奥に根子岳と四阿山。手前に奇妙山。右奥は保基谷岳、手前は皆神山。日向は灼熱ですが、日陰は湿度が低いので快適です。手前に咲く白百合は、ニワシロユリ。バルカン半島および西アジアを原産とするユリで、バチカン市国の国花です。英名はマドンナリリー。草丈2mぐらいになります。日本のテッポウユリの仲間。

 7月8日、今年も庭にツマグロヒョウモン(褄黒豹紋)のメスがやってきました。赤と黒の鮮やかな幼虫の食草はスミレ類やパンジー、ビオラの葉。南方系の蝶で、昔はいなかったのですが、今では真夏の信州の亜高山でも見られます。

「ニラの挟みおやき」具はニラ7割、新玉葱3割をみじん切りに牛豚合いびき肉。信州糀味噌と鰹出汁と炒り粉をゴマ油で練る。皮は幻の小麦粉、伊賀筑後オレゴンにとろろ、卵、炒り粉に水入れて柔らかめに。とろろを入れると柔らかく上品な仕上がりに。冷めても固くなりません。やや多めのゴマ油と綿実油で蓋をして片面6分ずつ中弱火で焼くとできあがり。具をむきエビにして、豆板醤、甜麺醤、牡蠣油、中華出汁にすると、中華風エビニラおやきになります。

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ヤマトシジミの三角関係の修羅場に遭遇した真夏日の妻女山山系。オオムラサキのオスを初見も…(妻女山里山通信)

2023-06-29 | アウトドア・ネイチャーフォト
 9日ぶりの梅雨の晴れ間。前夜にかなりの降雨があったので林道は泥濘状態でズルズル滑りながら登りました。オオミドリシジミは数頭舞っていましたが、雨上がりで湿度が高いので地面近くには下りてきません。日当たりの良い場所に行けばゼフィルスが見られるだろうと向かいました。

 カタバミで吸蜜していたのは、最初メスかなと思いましたが、どうも縄張り争いで鱗粉が剥がれたオスだろうと。このオスが飛び立ってたどり着いたのは。

 メスを見つけました。交尾器のバルバを出してメスに交尾を誘います。

 迫るのですが、そう簡単には応じてもらえません。シェークスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』を思います。成就するでしょうか。

 諦めずに求愛を続けます。

 めでたく受け入れてもらえました。

 どちらが主導するのか分かりませんが、位置を微妙に変えていきます。

 マクロレンズで近接撮影をしているので、かなり接近します。驚かさない様に息を止めてゆっくりと移動します。

 一番いい体勢を探している様です。

 最もしっくりする体位に落ち着いた様です。ところが。

 近くに鱗粉がまだきれいなオスが止まりました。嵐の予感。

 交尾中の二頭に激しく羽ばたいて迫ります。おらっちの方が若いしいい子種を持っているだに。

 しかし、交尾中のオスのバルバはメスをガッチリと捕まえているので、若造が体当りしたくらいでは外れません。三角関係の修羅場になるかと思いきや。二人の愛は固く確かなものでした。

 ひとり寂しく黄昏れるオス。いやいや美しいメスは彼女だけではない。君にピッタリのメスは必ずいる。かもしれない。諦めるべからず。幸運を祈る。

 というわけでセッセと交尾に励むカップルでした。昆虫を擬人化するというのは生物学的にはやってはいけないことなんですが、やりたくなりますね。以前、オオムラサキの三角関係でメスがすがりつくのをオスが気に入ったメスと交尾直前で足蹴にするのを目撃しブログにアップしました。ルリボシカミキリの三角関係もアップしています。人に限らず動物の愛の成就は難しいものなのです。動画も撮影しているので、インスタグラムやYouTubeにアップします。

 撮影を終えて陣場平へ。気温は20度ですが湿度はものすごく高いです。ガビチョウやサンコウチョウの鳴き声がします。川中島の戦いで上杉謙信が本陣としたと伝わる場所。兵どもが夢の跡。

 貝母(ばいも・編笠百合)の実は枯れていますが、まだ緑のものも。見が弾けて種が飛ぶのは梅雨明け以降になります。

 貝母の群生地入り口から林道方面。梅雨明けしたら妻女山里山デザイン・プロジェクトのメンバーを集めて、除草や帰化植物の除去、倒木の処理や除伐の作業をします。

 下山して松代方面の眺め。もう夏の風景です。撮影はできませんでしたが、オオムラサキをのオスを初見しました。ここ2年ほど数が減少しているので、大量に発生してくれることを期待しています。昆虫の増減には経年変化や気象条件、農薬や排気ガスなど色々な原因があるのですが、ネオニコチノイド系農薬の空中散布は中止されましたし、どういう原因理由があるのかは非常に難しい問題です。とにかく定点観測が重要なのです。

■ヤマトシジミの三角関係の修羅場に遭遇した真夏日の妻女山山系


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続 梅雨の森の宝石オオミドリシジミ。構造色の鱗粉がはがれ始めた。コシアキトンボ。樹下に咲くイチヤクソウ。オカトラノオとシモツケ(妻女山里山通信)

2023-06-21 | アウトドア・ネイチャーフォト
 3日ぶりの梅雨の晴れ間。オオミドリシジミの撮影にでかけました。快晴とはいかず小さな雲が通り過ぎますが、風がないのが幸いしました。雨天はもちろん曇天や強風の日はオオミドリシジミの専有行動の飛翔はほとんど見られません。

 広葉樹林の藪の高いところで数頭が舞っていましたが、一頭だけ下りてきてくれました。ヒカゲイノコヅチの葉の上で休憩中。

 たった3日ですが構造色の鱗粉があちこちで剥がれています。専有行動の飛翔はかなり激しいもので、2匹、3匹がクルクルと回る途中で翅がぶつかるのでしょう。ひとつ前の記事の写真と比べると一目瞭然です。というか翅をぶつけ合って回っているのでしょう。鹿のオス同士の角突きみたいなものかも。

 この日は葉に止まるとすぐに翅を開きます。湿った翅を少しでも早く乾かしたいのでしょうか。

 メスはオスの後翅の様な茶褐色です。オオムラサキは、メスのほうが1週間か10日ほど遅く羽化するのです。そして産卵して生涯を終えます。オオミドリシジミもそうなのでしょうか。

 オニグルミの葉の天蓋。オオミドリシジミはこの樹冠の上には行きません。

 いきなりシナノガキ(信濃柿・豆柿)の葉に止まりました。少し後ピンになりました。すぐに飛び去ったのでこのワンカットだけ。あっという間に終了の10時半になりました。彼らの体内時計は、SEIKO並みに正確です。

 苔むした山桜の幹にニホンカナヘビが日向ぼっこ。人の気配に非常に敏感ですぐに逃げるのですが、この時は日向ぼっこの心地よさに酔いしれていました。

 湿った樹下に咲くイチヤクソウ。木漏れ日のスポットライトを浴びていました。

 イチヤクソウ(一薬草)。別名は 鹿蹄草(ろくていそう)といい生薬。 薬効は急性腎炎、膀胱炎、妊娠時のむくみなど。妻女山山系では貴重な花です。周囲には5株ありました。

 休憩に陣場平へ。ヒメウラナミジャノメがピョンピョンはねて舞っています。コゲラのドラミングとサンコウチョウの囀り。貝母はまだ弾けた実はありません。

 別の林道へ。これはめずらしい。コシアキトンボの未成熟のオスです。見かけたことはあっても撮影したのは初めてかも知れません。

 林道の小さな木漏れ日の中で日向ぼっこするコミスジ。こちらもずいぶんと翅が傷んでいます。

 オカトラノオ(丘虎乃尾)サクラソウ科オカトラノオ属。花は穂の下の方から咲いていきます。群生地では、花穂(かすい)の波うつ様子がまるで波の文様の青海波(せいがいは)のように見えます。

 シモツケ(下野)バラ科シモツケ属。別名は、キシモツケ(木下野)。シモツケの葉は、卵形や披針形ですが、シモツケソウの葉は掌状に5~7に深裂します。シモツケソウは、バラ科シモツケソウ属。どちらも葉の縁に鋸歯があります。

 標高の低いところのクマノミズキの花が咲き始めました。昆虫たちがたくさん吸蜜に訪れます。

 妻女山展望台から東の松代方面の眺め。陣場平は涼しかったのですが、麓の最高気温は29度になりました。ただ湿度が低いので不快ではありません。

 北東の眺め。信越トレイルの手前は豪雪地帯の飯山。山脈の向こう側は新潟県です。典厩寺は、武田信玄の弟、信繁が八幡原で討死したことに因み、合戦から60年後、元和八年(1622)、松代藩主真田信之が信繁の官職「左馬助」の唐名「典厩(てんきゅう)」から寺号を典厩寺と改めて菩提を弔ったものです。閻魔堂には東洋一大きいといわれる閻魔大王像があります。またここの川中島合戦記念館は必見です。信繁の着用した鎧の下着や刀などが展示されています。
武田典厩信繁の墓と全国随一の大きさの閻魔大王像がある典厩寺探訪(妻女山里山通信)

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『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。地形図掲載は本書だけ。山の歴史や立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。10本のエッセイが好評。掲載の写真やこのブログの写真は、商用利用の場合、有料でお使いいただけます。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
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梅雨の森の宝石オオミドリシジミ。ウラゴマダラシジミ、ミズイロオナガシジミ。枯れ始めた貝母の実。熟れた実が匂うあんずの里(妻女山里山通信)

2023-06-17 | アウトドア・ネイチャーフォト
 待望の梅雨の晴れ間。きちんと晴れたのは2週間ぶりです。そろそろオオミドリシジミが出現する頃と登りました。かなりの雨が降ったので林道はひどい泥濘状態。何度も滑りながらやっと登りました。午前9時の気温は18度。地面や下草は湿っていますが、早朝から快晴で日が照ったので湿度は思ったよりも高くありません。期待だけが膨らみます。

 いましたオオミドリシジミ。雨上がりに羽化したばかりなのでしょうか。翅も傷んでいなくて綺麗です。まず後方から気配を殺してゆっくりと近づきます。マクロレンズのラバーフードの先からチョウまでは10センチほどまで近づきます。
 オオミドリシジミ(大緑小灰蝶:Favonius orientalis)は、チョウ目シジミチョウ科ミドリシジミ亜科に属するチョウ。オスの翅は、青緑に輝き非常に美しい蝶です。メスの翅は灰褐色。幼虫の食樹はブナ科のコナラ・クヌギ・ナラガシワ・カシワ・ミズナラなど。

 発生しているのはまだ数頭。数日で大群が出るのではと期待しています。オスが高速で追いかけごっこをしたり円を描いてクルクル回ったりしています。いわゆるテリトリーの占有行動で、縄張り争い。疲れると日当たりの良い葉の上に止まります。これはヒカゲイノコヅチの葉に止まったもの。美しい翅の表の色は鱗粉の色ではなく、オオムラサキと同様に構造色です。
「モルフォチョウ構造色の基本原理:規則性と不規則性の共存」東京理科大学 理工学部 物理学科 吉岡研究室:構造色の研究論文。非常に難解です。「構造色(こうぞうしょく、英語: structural color)は、光の波長あるいはそれ以下の微細構造による、分光に由来する発色現象を指す。」Wikipedia。それ自体は色を持たないか別の色です。コンパクトディスクやシャボン玉、孔雀の羽、アワビの貝殻など。構造色の印刷やディスプレイも。
構造色とは:その物質自体には色がないのに,光の波長程度の微細構造によって発色する現象を構造色といいます.本講座では,発色原理が異なる様々な構造色を取り上げて,その発色原理を説明し,発色例を紹介します. テクノ・シナジー

 ミドリシジミとつくものは他に、ミドリシジミ、メスアカミドリシジミ、ウラジロミドリシジミ、フジミドリシジミ、ミヤマカラスシジミ、ハヤシミドリシジミ、アイノミドリシジミなどがいますが、このエリアでは最後の二種も見られます。

 水曜日ぐらいまで晴れの日が続く予報なので、たくさんのオオミドリシジミが羽化してくれるといいのですが。

 やっと翅を広げ始めてくれました。

 構造色なので見る角度により色味が少し変わります。それもまた美しい。まるでエメラルドかアクアマリンの様。森の宝石です。テリトリーの占有行動は、晴れの日の朝から始まり午前10時半頃に終了します。雨や曇の日には行いません。太陽が大好きなゼフィルスです。

 シジミチョウの多くは、この時期に羽化して産卵するため、農薬散布をすると簡単に絶滅してしまうのです。同時期に林道脇などの除草もされますが、食草であるイボタノキやクヌギやヤマザクラ、カシワの幼木や若木が切られると、大量の卵が死んでしまいます。

 ウラゴマダラシジミ。シジミチョウ科 シジミチョウ亜科のシジミチョウで、幼虫の食草はイボタノキで、成虫もイボタノキやクリで吸蜜するので、その近くで見られることが多い蝶です。イボタノキの花が散ってしまったので今は栗の木の花で吸蜜していると思われます。

 ミズイロオナガシジミがいました。マクロレンズなのでかなり接近しますが、近づくとにじにじと回転してお尻を向けるのです。かといって飛び去るわけでもありません。理由はよく分かりません。恥ずかしがり屋なのかも。

 撮影に疲れたので陣場平へ。かなりの豪雨があったにもかかわらず、貝母はけっこう立っています。冷たいたんぽぽコーヒーを飲みながら一休み。サンコウチョウが鳴いています。エゾハルゼミやハルゼミは少なくなりました。

 貝母(ばいも:アミガサユリ)の実もずいぶんと枯れてきました。さく果なので、晴れの日が続くと弾けて種を飛ばします。

 キボシアシナガバチ(スズメバチ科)です。巣の出入り口の部分が黄色いので分かります。山歩きにはポイズンリムーバー(毒抜き用具)の持参を。刺されたときのために、抗ヒスタミン軟膏を。毒を絞り出してからぬります。前脚で顔を拭ったり、胴を曲げて何かをしています。

 昼近くに下山しましたが、森の中は過ごしやすい気温です。山菜を採りに来た夫婦に二組ほど出会いました。妻女山展望台からの北アルプス白馬三山の眺め。右奥に虫倉山。手前に茶臼山。

 左に戸隠連峰。三角の戸隠富士と呼ばれる高妻山。右に飯縄山。眼下の長芋畑は種芋の植え付けが終了しています。緑に見えるのは耕作放棄地です。この10年でずいぶん増えました。自公政権は食料安保には全く関心が無いようです。兵器があっても食料が無ければ国民は飢え死にます。

 汗をかいたので温泉に入ってからあんずの里へ。あんずの出荷が始まりました。直売所やJAスーパーの産直売り場、ネットでも買えます。近隣の和菓子屋や洋菓子屋では杏を使ったスイーツが並んでいます。

 これは生食用のハーコットでしょうか。まだ完熟していませんね。4-5センチもある大きな実です。7月に入ると熟れて落ちた実があちこちに。集落はあんずの甘酸っぱい匂いで満たされます。

「淡竹と自家製ベーコンのピラフ」淡竹もそろそろお終いです。鯖の水煮缶詰の味噌汁、和風と中華の炊き込みご飯、淡竹のおやきを作りましたが、最後はピラフです。材料は茹でた淡竹、自家製ベーコン、鶏胸肉。新玉葱。コンソメ顆粒、白トリュフの白出汁醤油、マジックソルト、白ワイン、バターで炊き込みます。すごく簡単ですが、これも絶品でした。淡竹と自家製ベーコンの風味が最高のマリアージュ。

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米子大瀑布への道が3年半ぶりに開通! 梅雨時、真夏、錦秋、初冬のトレッキングルポ。梅雨の滋味を喰らう(妻女山里山通信)

2023-06-09 | アウトドア・ネイチャーフォト
 2019年10月の台風19号で道路が崩壊し通行止めになっていた長野県須坂市の米子大瀑布(よなこだいばくふ)への道が3年半ぶりに開通しました。米子大瀑布は、根子岳、四阿山、浦倉山が形成する大カルデラの最北部の秘境にあります。権現滝(男滝:落差82m)と不動滝(女滝:落差89m)の二条の大瀑布が迎えてくれます。古くから不動信仰、山岳信仰の聖地として有名です。また、主に硫黄を産出する鉱山としても古くから知られていました。
 米子鉱山の起源は古く、江戸初期ともいわれています。日本三大不動尊の一つ米子不動尊(瀧澤山家原院如来寺→米子瀧山威徳院不動寺)は、奈良時代に行基により開山された古刹といわれています。また、奇妙滝のある奇妙山は仏教用語の「帰命」が転訛して奇妙となったもので、木食信仰遺跡があることからも、深山でありながら人の出入りはかなりあったと考えられます。8世紀の「続日本紀(しょくにほんぎ)」に、当時信濃国から朝廷へ石硫黄の献上があったことが記されているのですが、これは米子鉱山のことと推察されます。
 米子大瀑布へは、80年代に初めて訪れてから7、8回行っていますが、最近の3回のルポを紹介します。アンダーラインのある記事のタイトルをクリックしてください。観光地と勘違いして軽装で来る人がいますが、トレッキングシューズ、帽子、雨具、充分な飲み物、非常食が必須です。携帯は通じないと思ってください。早出早帰が基本。また、熊や猿などの生息地です。

信州最古の不動霊場・日本三大不動尊の米子不動尊からレンゲツツジ満開の米子大瀑布へ(妻女山里山通信):2019年6月の山行。梅雨の晴れ間の大瀑布。


日本のギアナ高地、米子大瀑布へ。薄雪を踏んで幻のソブ池へ(妻女山里山通信):2017年11月の山行。薄雪の大瀑布。


錦秋の米子大瀑布へ。瀑布の上にある幻のソブ池探索も。「続日本紀」に記述のある米子硫黄鉱山(妻女山里山通信):2015年10月の山行。錦秋の大瀑布。


【信州の山】四阿山カルデラ一周 Mt.Azumaya from The Yonako falls in Nagano
米子大瀑布-根子岳-四阿山-浦倉山-米子大瀑布【四阿山カルデラ周回コース】約23キロ10時間のロングコース。:2010年8月の山行。ハイビジョンです。ぜひフルスクリーンでご覧ください! 拙書でもこのコースは、写真と地図と文章で詳しく紹介しています。大瀑布から根子岳や浦倉山方面への登山道が登山可能かは未確認です。須坂市役所にお問い合わせください。


 前の記事の最後で紹介した淡竹(はちく)ですが、「砂肝と淡竹の中華炊き込みご飯」を作りました。材料は、砂肝、茹でた淡竹、長ネギ。調味料は、中華醤油、牡蠣油、中華出汁、味醂、鰹出汁、五香粉、胡椒。淡竹は信州新町道の駅やJAの産直コーナーで買えます。ボリュームあって安いのが魅力です。鯖の水煮缶詰との味噌汁が有名ですが、若竹煮、炊き込みご飯、天ぷらや肉詰めやエビや白身魚のすり身を詰めてフライも美味です。

「淡竹と新玉葱と牛豚合いびき肉のおやき」味付けは、手作り信州麹味噌、鰹出汁粉、牡蠣油、胡麻油。皮は、夢力と幻の小麦・伊賀筑後オレゴン。両面に胡麻油で焼き目をつけてから20分蒸してできあがり。ビジュアルは地味だけれど、餡も皮も想像以上の旨さ。手が止まらない。伊賀筑後オレゴンを食べたら小麦粉に対する考えが変わるかもしれません。

「浅間山とカブの煮物」新潟県十日町市の名産車麩の両端のはじ麩と甘いカブを鰹出汁、貝出汁、手作り塩麹、干し椎茸、昆布、薄口醤油、本味醂で煮ました。噴火口には卵。締めには汁でお茶漬けに。

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