大学2年の娘から、気になる男の子がいるのだけれど、普段はいい雰囲気の割に、なんだか逃げ腰のところもあって、仲が一向に進展せずもどかしい、と打ち明けられた。
今も昔も、そういう男の子っているのよね、と私は自分の短大時代の思い出を話した。
アルバイト先で知り合った大学生の男の子はとても親切で、他愛のない世間話にもしっかり耳を傾けてくれた。
そのうち買い物や映画に一緒に行くようになったものの、そこから全然進まないの。
ヘンな例えだけれど、風に舞っているたんぽぽの綿毛をつかもうとしても、指の間をすうっとすり抜けて行くじゃない、あんな感覚よ。
そんなことが続いて、私は思ったの、ああ、私じゃ無理なんだ、と。
それで、私はクラスメートで一番可愛いコに彼を紹介した。
ところが、二カ月くらいたってからだと思う、そのコからクレームが来てね、どうも進展しない、私に気がないようだって。
そこで私はクラスメートで一番頭のいいコを紹介した。
けれども結果は同じだった。
彼は柔らかい殻の中にいるみたいよ。
彼女はため息交じりに話してくれた。
そうこうしているうちに私は短大を卒業して、もう彼と会うこともなくなった。
「じゃあ、お母さんはそのひとが今どうしているのか、知らないの?」
知ってるわよ。ほら、そこのソファに座っているわ。
娘の目が大きくなった。
「でもどうやって―」
ホントは教えたくないんだけど、あなたも困っているから話すとね、3年ほどたったころ、その男の子のところへ押し掛けたの。
サラリーマンになっていた彼は、やっぱり一人のままだった。
私が突然現れたことで十分驚いてた彼に、私は大声で言ってやった、
「あなた、そろそろ目を見開かないと、本当に大切なものを取り逃がしちゃうわよ!」
思えば私が自分を一番高く売った瞬間だったかもしれない。
そして、あれが私たちのマジックタイムだったのよ。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。