ずいぶん前になるが、急ぎの書類の件で職員宅を訪ねた時のことだ。
夫君のみが在宅で、居間に通された。
その彼だが、なぜかラモーンズのあの丸いロゴ入りの白いTシャツを着ている。
気になって気になって、とうとう尋ねてしまった。
「ご主人、パンクスですか?」
へ?という顔をした彼にTシャツの出所を重ねて尋ねると、妻が古着屋で買って来たモノだと言う。
そうか、ウチの職員の方が、パンクスだったのか。
デビュー・シングル曲「電撃バップ」!
「組合長の井浦でございます。
本日は連休直前のお忙しいところ、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。
また、ご来賓のみなさまにおかれましてもお足元のお悪い中、ご臨席いただきましたこと、厚く御礼申し上げます。
さて、昨年度、当組合はさまざまな事業に取り組んでまいりました。
このあと議事の中で事務局より詳しい報告がありますことから、かいつまんでお話しさせていただきますと―
まず、県保健福祉事務所様と、介護人材確保協議会のメインイベントとして、合同入職式を執り行っております。
今年度も6月7日を予定しており、本日ご臨席のM所長様からはさまざまなアドバイスをいただいておりますので、組合員のみなさまにおかれましては、ぜひ一人でも多く、新入職員の参加を促していただけますよう、お願い申し上げます。
また、当協議会に隣町M町の事業者様をお迎えできたのも、所長様のご尽力によるもので、これからも加盟の声掛けを続けてまいりたいと思っております。
それから、K市様とは、防災研修会、福祉避難所設置訓練を共催という形で開催させていただきました。
市高齢介護課様、とりわけT課長様はふだんから、なされること一つ一つが丁寧で、ご満足いただける水準まで持って行けるのかどうか、内心、一抹の不安もありましたが、そこはかなえが浦会様を中心に担当職員様がたのご尽力によって、見事に結果を残すことができました。
今後も行政の皆様のお力をお借りしながら、互いに寄り添い、互いの課題を解決して、引き続き当組合は圏域の介護福祉の発展に貢献して行きたいと強く願っております。
組合員のみなさまにおかれましては、よろしくご協力のほどをお願い申し上げます。」
同期入社の男の子に昼食をごちそうになった私はなにかお礼にささやかな品物をプレゼントしたいと思ったのだが、改めて考えてみると、なにがいいのやら、見当もつかなかった。
亡くなった父がよく言っていたのは、女性には理解できないだろうけど、男はとにかくギアが好きなんだ、と。
腕時計やナイフや万年筆、地球儀、望遠鏡、バーベキューセット。
ホント、まるで理解できないわ。
デパート内を三周するほど迷った末、プラチナゴールド地にペイズリー柄が入ったポケットチーフを買った。
翌日、私はコーヒーショップに彼を呼び出してそれを渡した。
開けていい?
もちろん。
包装紙を丁寧に開いて薄い箱を開けた彼の顔は意外なくらい嬉しそうだった。
素敵な色だね。
でしょ?
彼はチーフを長く三つ折りにしたあと二つに畳んで、胸に差した。
その手際の良さに驚くとともに、自分が贈ったものを相手がその場で身に着けてくれることがこんなにも嬉しいのかと、初めて知った。
その年の誕生日に、私は彼から淡いピンクのメタルバンドの腕時計をプレゼントされた。プロポーズの言葉を添えて。
オイラ、N-BOXの車イス積載車。
名前はまだない。
社会福祉法人千香会さんにやってきて、これから先輩たちのようにガンガン活躍するつもりなので、みんな街で見かけたら、ぜひぜひ声援を送ってね!
「僕は相手の時間を無駄にしていると思われるのがとにかく嫌で、いつも早めに、あっさり退出してくる。長居することはない。じゃあまた、であったり、さようなら、と告げたあとは振り返ることもほとんどない。
『名残惜しい』はその対極で、別れ際の気持ちの切り替えがつかないほど思いが残っているという状態を言う。
日本語にはそのような表現が多くあり、『後ろ髪を引かれる』や『立ち去りがたい』など、趣きを感じさせる言葉ばかりだ。
『名残』の語源は、海や川の波を表わす『波残り』で、波が打ち寄せたあと岸辺に残った水や藻などを指すのだそう。
ある時、忙しい相手への気遣いから、ではそろそろ、と暗に促がしたところ、相手に立つ気配がない。いぶかしく感じながら、また少し話したあと、ではそろそろ、と再度促がしたが、やはり動く様子がない。
僕ははっとした。
相手は名残りを惜しんでいるのだ。
破たんなくきれいにもてなしていたつもりが、最後の場面でこのような心の琴線に触れる無言の所作と思いをいただいてしまい、僕はサヨナラ負けした敗戦投手のようだった。
でも、悪い気分でもなかった。」