「歩く暴力」という表現は、初期のリー・マーヴィンにぴったりだと個人的に思っている。
下の「恐怖の土曜日」(1955年)の冒頭でのチンピラぶりをテレビで初めて観た時は震え上がったものだ。
しかし、リー・マーヴィンを上回る「歩く暴力」、「暴力を体現した俳優」がいる。
アーネスト・ボーグナインだ。
マーヴィンが西の横綱なら、ボーグナインは東の正横綱だ。
下の「地上より永遠に」(1953年)のサディスティックな営倉係のナイフさばき!
他にも「飛べ!フェニックス」や「ポセイドン・アドベンチャー」での、極限時だというのにごちゃごちゃうるさいジャイアンぶりはうっとうしいことこの上ない。
「ウイラード」ではパワハラが過ぎて主人公の飼っているネズミに襲われる始末だ。
この二人はロバート・アルドリッチ監督の「北国の帝王」(1973年)で激突する。
大恐慌後の1930年代のアメリカ。
あふれかえった失業者の中に、列車への無賃乗車を繰り返して旅するホーボー(浮浪者)たちがいた。
そのホーボーを目の敵にし、虫けらのように車上から突き落としてでも無賃乗車を阻止しようという車掌がいた。
前者のエースがリー・マーヴィン、後者がアーネスト・ボーグナインである。
二人の対決(=無賃乗車の成功)は賭けの対象となり、男の意地が激突する―。
たかが無賃乗車になぜ命まで懸けて、と思うだろうが、 すでにアカデミー主演男優賞を受賞していた異形の名優二人を使ってアルドリッチ監督はこの馬鹿げた男の意地の張り合いを、手に汗握る一級の娯楽アクション映画に仕立てている。
散々な出来となった映画「レット・イット・ビー」撮影後に心機一転、収録された「アビイ・ロード」(1969年9月発売)は、実質的にはビートルズのラスト・アルバムで、そのB面を占めるメドレーの後半が下に訳出した3曲「ゴールデン・スランバー」~「キャリー・ザット・ウエイト」~「ジ・エンド」だ。
このあとメンバー4人が揃って演奏することはなく、曲のタイトルどおり、バンドは終焉を迎えている。
ジャケット写真がいい。歌詞がいい。「ゴールデン」のジョージのベースがいい。「ジ・エンド」の、リンゴのドラム・ソロとそれに続く3人のギター・ソロの競演も。
(Golden Slumbers)
かつてそこに道があった
故郷へと帰る道が
かつてそこに道があった
故郷へと帰る道が
おやすみ 愛しいひと 泣かないで
僕が子守唄を歌ってあげるから
黄金のまどろみがきみの瞳を満たす
ほほえみがきみを目覚めさせる
おやすみ 愛しいひと 泣かないで
僕が子守唄を歌ってあげるから
かつてそこに道があった
故郷へと帰る道が
かつてそこに道があった
故郷へと帰る道が
おやすみ 愛しいひと 泣かないで
僕が子守唄を歌ってあげるから
(Carry That Weight)
さあきみ、その重荷を背負って行け
その重荷を背負え ずっと
さあきみ、その重荷を背負って行け
その重荷を背負え このさきずっと
きみに僕の枕は渡さない
きみに送るのは招待状だけ
そして祝宴の真最中に
僕は泣き崩れる
さあきみ、その重荷を背負って行け
その重荷を背負え ずっと
さあきみ、その重荷を背負って行け
その重荷を背負え このさきずっと
(The End)
おお、イエイ、オールライト
今夜きみは僕の夢に登場するのかい?
愛してる 愛してる
そして最後に
きみが受け取る愛は
きみがもたらす愛と等しいのだ
ああ
ジャケット写真の撮影は1969年8月8日午前。
裏面も偶然写り込んだミニのワンピースの女性が時代を映していてとてもいい。
1994年4月。意外にも交通量が多く、迷惑気味で申し訳なかった。
(Golden Slumbers)
Once there was a way,
to get back homeward,
Once there was a way,
to get back home
Sleep pretty darling do not cry,
and I will sing a lullaby
Golden slumbers fill your eyes,
smiles awake you when you rise
Sleep pretty darling do not cry,
and I will sing a lullaby
Once there was a way,
to get back homeward,
Once there was a way,
to get back home
Sleep pretty darling do not cry,
and I will sing a lullaby
(Carry That Weight)
Boy you're gonna carry that weight,
carry that weight for a long time
Boy you're gonna carry that weight,
carry that weight for a long time
I never give you my pillow,
I only send you my invitations
And in the middle of the celebrations,
I break down
Boy you're gonna carry that weight,
carry that weight for a long time
Boy you're gonna carry that weight,
carry that weight for a long time
(The End)
Oh yeah, all right,
are you gonna be in my dreams tonight?
Love you, love you, love you,
love you, love you, love you..
.
And in the end,
the love you take,
is equal to the love you make,
Ah
娘がまだ小学生のころ、時々「あのひとはぽらんのひとのようだ」と口にした。
通っている小学校の保健室の先生だったり、たまたま寄った家具チェーンの店員さんだったり。
ぽらんのひとってどんなひと?と改めて何度か尋ねたけれど、もともと口数が少ない彼女ははにかんだ表情を浮かべるだけで答えなかった。
推察するに、髪は無造作にまとめたポニーテールかショートボブで、ひょろひょろとやせた、ブラックジーンズの若い女性というのが、そのぽらんのひとの容姿らしかった。
それが先日、大学進学のためアパートを探しに訪れた不動産屋で、担当の女性にひとしきり物件を案内された後、仮契約まで進んだのだが、娘が僕にそっと耳打ちした。
「ぽらんのひとみたいだね。」
スーツを着ているけれど、言われてみればそんな雰囲気がある。
申込書類に記入する前に僕が名刺を差し出すと、相手が言った、
「あら、ぽらんさんですか、私ももともとK市の出身で、以前はあちらの社会福祉法人夏草会の介護員だったんです(笑)」
ひょっとしてウチの娘は、、、。
今日午後は、ハローワーク主催のミニ企業説明会へ出席するNPO法人なごやか理事長にお供した。
三つ並んだブースの真ん中で、両脇は老健エーデルワイスさんと社会福祉法人インペリアルシティさん。
エーデルワイスさんからは菱川課長さんが出席されていて、理事長の顔を見ると駆け寄っていらした。
先日あちらの理事長さんが亡くなられ、なごやか理事長が葬儀で弔辞を読んだばかりだった。
菱川さんは理事長の両手を取ると、井浦さん、いい弔辞でした、ありがとうございました、I理事長もきっと喜ばれていると思います、ありがとうございました、と何度も繰り返し、理事長の両目もまた見る見るうちに真っ赤になった。
インペリアルシティさんからは、理事長を福法祖の組合長に推してくださった前副組合長の鹿谷施設長さん。
先日の新年会がとても楽しかった、と私までお褒めとお礼の声掛けをいただいた。
数少ない面談者が途切れると、なごやかのブースに集まって4人してのんびり世間話に花を咲かせ、ハローワークの担当者にあきれ顔をされたけれど、同業者間でこれだけ友好的な雰囲気が醸成されたことはかつてなく、これが理事長のやりたかったことなのかも、と私は彼の楽しそうな横顔を見ながら内心舌を巻いていた。
「女優志願」(1958年)を知っている、という方はなかなかの映画通だ。
観たことがある、という方はさらに2ランクほど上か。
日本ではDVDはおろかビデオすら発売されたことがなく、本国アメリカでもレア映画と称されている。
トラップ大佐こと、名優クリストファー・プラマーのデビュー作なのに。
キャサリン・ヘップバーン主演の「勝利の朝」のリメイクなのに。
また、シドニー・ルメット監督とヘンリー・フォンダがタッグを組んだ計三本の真ん中の作品で、一本目(「十二人の怒れる男」1957年)と三本目(「未知への飛行」64年)はともに映画史上に残る傑作との評価を受けているのに。
理由はある。
以前も書いたが、当時の日本ではアメリカのショービジネスの裏側を描いた作品や舞台劇が原作のものは敬遠され、劇場未公開となることが多かった。
この映画もブロードウエイでの成功を夢見る女優の卵がショービズ独特のシステムの中で幻滅を味わい、そこから再生して勝利をつかむというストーリーだ。
主演はスーザン・ストラスバーグ(「ピクニック」1955年の、キム・ノヴァクの妹役)。
小柄な彼女が観ていて気恥ずかしくなるほどまっすぐな女の子を全身全霊で演じきっていて、一度観たら決して忘れることができない、チャーミングな佳品である。
僕はテレビの吹替版で何度か観ており、最後の機会にビデオ録画した。三十年以上前だと思う。
弟も持っていると言っていたので、関東圏ではそのあとも放映されたのかもしれない。
そんなわけで、ソフト化してほしい作品ランキングのトップに、今も昔も置いている。
劇場用予告編