ジーナ・ローランズが亡くなった。94歳だという。
彼女について語る時、「存命中の最高の女優」というのが僕の常とう句で賛辞だったが、これからは、「過去も、また未来においても、最高の女優」と表現しようか。
夫であり、名優・名監督の故ジョン・カサヴェテスをよく支え、彼のほとんどの作品に主演した。
日本で最も有名な作品は「グロリア」(1980年)。
自身の企画ではなく雇われ監督として嫌々本作を撮っていたカサヴェテスにインスピレーションを与え続けたことで、奇跡的に傑作となっている。
衣裳はカサヴェテスが彼女のために選んだエマニュエル・ウンガロのもの。
テロンとした質感とビビッドな色使いがとても印象的だ。
若かりし夫妻
自宅のスタジオにて
カサヴェテスは自作の製作費の捻出のため、ローランズはその夫を支えるため、時にトンデモアクション映画や珍作テレビドラマなどにも出演した。
例えば「愛と栄光への日々/ライト・オブ・デイ」(1987年)ではあろうことかマイケル・J・フォックスとジョーン・ジェット姉弟の母親役を演じている。
カサヴェテスのバイト作品はたくさんあるが、やさぐれたSWAT隊長を好演した(左)「パニック・イン・スタジアム」(1976年)はパニック大作映画。ローランズも出演している。
最高の上の最高の映画「オープニング・ナイト」(1977年)。
日本での劇場公開は1990年で、終映後しばらくの間僕は膝が震えて席から立ち上がれなかった。
劇中劇のリハーサルシーン。共演俳優役は(監督でもある)カサヴェテス(左)だ。
中でも「脱獄(1962)」での彼女が強く印象に残っています。主役の男(カーク・ダグラス)が脱獄して、今は友人の妻になっているかつての恋人(ジーナ・ローランズ)の家にやって来ます。その時の彼女の嬉しさを抑えたような、そして遠くを見つめるような表情にキュンとしました。
他にも何本か彼女の出演作を見ていますが、訃報を聞いてすぐに思い出したのは「脱獄」での彼女でした。心よりご冥福をお祈りいたします。
いつもコメントありがとうございます。
「脱獄」は傑作でしたね。
ただ、ローランズがなぜこのダグラスの独立プロ作品にキャスティングされたのか、彼の自伝「くず屋の息子」も読みましたが、ほとんど触れておらず、謎のままです。
以前共演しているベティ・バコールやドロシー・マローンなら納得するのですが。
ダグラスのこと、まだ若い彼女のギャラが安かったからかもしれませんね。